西田優大

ペイントアタックの引き出しが増加

121日、男子日本代表は『FIBAワールドカップ2027アジア地区予選』Window1のゲーム2で、チャイニーズ・タイペイとのアウェーゲームを実施。地元ファンの熱い声援を受けた相手にスタートダッシュを許したものの立て直し、五分五分で迎えた第4クォーターに富樫勇樹の連続得点で抜け出すと、粘り強いディフェンスを軸にここ一番での遂行力で上回り80-73で制した。これで日本は、ホーム開催のゲーム1に続きチャイニーズ・タイペイに価値ある連勝を達成した。

90-64で圧勝したゲーム1は、立ち上がりから激しいプレッシャーディフェンスで相手のミスを誘発。相手より多くのシュートを放つ「ポゼッションゲーム」で上回り、第1クォーターから23-10と先手を取ったことが大きな勝因となった。しかし、ゲーム2は出だしからチャイニーズ・タイペイの強度の高いプレーに苦しむ真逆の展開。オフェンスリバウンドを多く取られるなど後手に回りタフショットを決められ、ティップオフから9-0のランを許す最悪のスタートになる。

だが、ここで日本はあわてることなく、Window1のテーマ「ペイントアタック」「激しいプレッシャーディフェンス」をやり続けることで盛り返し、第1クォーターを5点のビハインドで終えたことが大きかった。

この悪い流れを断ち切る立役者となったのは西田優大だ。西田はこの試合で3ポイントシュート6本中3本成功を含むチーム最多18得点に加え、6リバウンド1スティール1ブロックを記録。替えの効かないジョシュ・ホーキンソン、渡邊雄太のインサイド陣を除くと最多の2819秒のプレータイムは、この勝利において西田がいかに重要な役割を果たしたかの現れだ。

ただ、この活躍にも西田は「3ポイントシュートさえ入れば点数は伸びてきます。これまで入っていなかったので、今回入ってよかったです」と冷静だった。そこには「今日もターンオーバーはありましたし、満足するゲームではなかったです」という思いがある。

西田優大

「チームの課題に僕の役割がうまくはまった」

厳しい自己評価の西田だが、一方でペイントアタックについては確かな手応えを得ている。「ブライアン(フィンリー)コーチに今までとは違う動きを教えてもらって、引き出しが増えています。それを今日の試合でもうまく使うことでファウルをもらえました。相手が僕のアタックを嫌がってアンダーで守ってきたこともあって、自然と3ポイントシュートも打ちやすくなりました」

西田のペイントアタックの魅力は、コンタクトの強さと滑らかなステップ。「馬場(雄大)さんみたいにドライブしてダンクするのが一番良いですけど、僕にはそれができません。だからスキルを磨いていてそれがうまく出せました」と西田は言い、「三河での経験をうまく生かせていると思います」と、所属するシーホース三河でのハードワークの賜物でもあると続けた。今回の代表戦のブレイク前に取材した際にも、「ペイントに入った時のフィニッシュ力は、去年の後半あたりから手応えを感じていて、正直、ペイントに入ってしまえば結構余裕を持ってプレーできています」と語っている。

若手が多くメンバー入りした今夏の『FIBAアジアカップ2025』で、屈指の代表経験を誇る西田は中心的な存在として期待されていた。しかし、大会前の強化試合からシュートタッチが悪く、大会に入っても立て直すことができず。ベスト8決定戦敗退と厳しい結果に終わった中、彼自身も4試合すべてで15分以下のプレータイム、格下のグアム戦では16得点を挙げたが、それ以外の3試合は3得点以下と不完全燃焼だった。それだけに今回の大暴れは、今夏のリベンジを果たしたという点でも価値あるモノと言える。

だが、西田本人はこれだけのハイパフォーマンスにも「特別なことをできたという思いはないです。本当に淡々といった感じです」と語るのみ。このように落ち着いた態度でいられるのは、これまでの経験をしっかりと自分の糧にできていると確信があるからこそだ。「準備してきたものを積み上げることができている感覚はあります。それによって淡々とプレーしているところがあります」

西田はこのWindow1を「自分の役割を果たし、うまくチームに貢献できたのはよかったです」と総括し「次のWindowはもっとタフになってくるので、シーズン中にしっかり準備をしたいです」と抱負を語る。

ペイントアタックと激しいディフェンス。今回の日本が重視した2つのテーマは、図らずも西田の特徴そのものだ。「チームの課題に僕の役割がうまくはまった感じはあります」と本人は語るが、この2つの要素はこれから過酷なアジア予選を勝ち抜くためにはずっと必要なもの。そして日本代表における西田の存在の大きさを示すものだ。