文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

対川崎の秘策「2-1-1-2」は諸刃の剣に

チャンピオンシップセミファイナル、川崎ブレイブサンダースとアルバルク東京の第1戦。オン・ザ・コート数は互いに「2-1-1-2」を選択。これまでは主に「1-2-1-2」で戦ってきたA東京だが、「川崎は最初に乗せると厄介なチームなので合わせました」と伊藤拓摩ヘッドコーチが変更の理由を語っている。

その目論見が的中し、序盤はA東京のペースに。スティールから速攻を決め先制点挙げた正中岳城が、そこから7連続得点を挙げてリードを奪う。川崎もニック・ファジーカスが9得点を挙げ反撃するが、このクォーターだけで5ターンオーバーを犯し、19-22とビハインドを背負った。

ところがオン・ザ・コート数が互いに「1」になった第2クォーター、川崎のセカンドユニットが躍動する。長谷川技がフィジカルを生かしたディフェンスで田中大貴から2本連続のスティールに成功。それをジュフ磨々道、ライアン・スパングラーが得点につなぎ、川崎が開始1分で逆転した。

その後もベンチから登場した藤井祐眞や野本建吾が、スクリーンをものともしない執拗なディフェンスで得点源を封じる。残り3分10秒にディアンテ・ギャレットの3ポイントシュートが決まるまで、A東京の得点をフリースロー1本に抑え込んだ。

1ポゼッション差まで迫られても弾き返す川崎の安定感

43-37と6点リードでスタートしたオン・ザ・コート「1」の第3クォーター、川崎はこれまで以上にアグレッシブにゴールを狙う田中に7連続得点を許し、残り7分を切ったところで50-47まで詰め寄られる。だが、チャンピオンシップに入ってから絶好調の篠山竜青が、ジャンプシュートと3ポイントシュートで悪い流れを断ち切る。田中を上回る積極性を見せた篠山は、このクォーターだけで2本の3ポイントシュートを含む12得点の荒稼ぎ。再びA東京を突き放し、65-52と点差を2桁に広げ最終クォーターを迎えた。

それでもA東京はオン・ザ・コート「2」の利点を生かし逆襲に出る。ジェフ・エアーズがインサイドで起点を作ることで、ギャレットのぺネトレイトの威力が増す。そしてギャレットのドライブにより川崎がインサイドを固めざるを得なくなると、外のシュートを狙った。残り4分11秒、ギャレットの3点プレーとなるバスケット・カウントにより、73-68と5点差まで詰め寄られる。

それでも川崎の強さの象徴であるファジーカスが、直後にフリースローを2本沈め流れを止める。残り2分3秒、ここまで沈黙していた辻直人が田中からボールを奪って速攻を防ぎ、初の3ポイントシュートを沈め80-71と3ポゼッション差にした。

結果的にこのゴールが勝敗を分かち、ディフェンスの強度を保ったまま時計を進めていった川崎が84-76で勝利を収めた。

ベンチメンバーの得点はA東京の10に対し川崎は24

勝利した北卓也ヘッドコーチは「ターンオーバーが第1クォーターで5つか6つあったと思うんですけど、そこから走られレイアップを決められた。我慢して第2、第3クォーターで素晴らしいバスケットをしてくれた」と試合を振り返った。

「特に第2クォーターの終盤までは相手を4点に抑えて、最後3ポイントシュート決められましたけど、セカンドユニットが非常にいいつなぎをしてくれて有利に進められたと思います」とセカンドユニットの活躍を勝因に挙げた。

ゲームハイの23得点を挙げた篠山に対しては「特に3ポイントシュートが高確率で決まって、これだけ決まってくると、相手は今までやってきたディフェンスができなくなってくるので、非常にいい活躍をしてくれてます」と称えた。

A東京の伊藤コーチは「40分通して川崎さんのほうがやりたいバスケットをしていたのかなという印象です。オン2の時は我々も良かったんですけど、オン1で点が伸び悩んだ」と北ヘッドコーチと同様の見解を示した。

「このチームは点差を離してもカムバックしてる試合もありますし、川崎はオーバーヘルプしてくるチームなので、シュートが入ればカムバックできると思っていた」と第2クォーター終盤の連続3ポイントシュートなど、A東京が持つ外角のポテンシャルは発揮できたと分析する。

また「プレーオフでヒーローが生まれるというか、そこでステップアップする選手がいてそれが彼だったのかな」と篠山をヒーローに見立て、「明日はウチからこういう選手が出ることを期待します」と短期決戦に必要不可欠な『Xファクター』の台頭を願った。

川崎はベンチメンバーの得点が、A東京の10点に対し24点。セカンドユニットの活躍が勝利を引き寄せる要因となった。

このままでは終われないA東京がどのように昨日の反省点を修正してくるか。そしてどちらのチームがファイナルへ駒を進めるのか。泣いても笑っても数時間後にそのチームが決まる。