クーパー・フラッグ

マブスはドンチッチ放出を主導したハリソンGMを解雇

マーベリックスはホームでのバックス戦に敗れ、これで3勝8敗と低空飛行を続けている。ルカ・ドンチッチ放出という愚を犯したニコ・ハリソンGMは今もダラスのファンから「解雇しろ」のチャントを浴びている。ドンチッチとのトレードで加入したアンソニー・デイビスはケガで欠場しており、クレイ・トンプソンに続いてディアンジェロ・ラッセルも先発を外れるなど、ハリソンGMが連れてきたベテラン勢は勝利に貢献できていないのだから、ブーイングも当然だ。

それでも、このバックス戦は今シーズンのマブスが見せた最も見応えのあるエンタテインメントだった。ディアンジェロに代わり先発ポイントガードを務めたブランドン・ウィリアムズが小気味良いプレーメークを見せたし、マブスの希望の星となっているクーパー・フラッグは、この試合でもすさまじい才能を発揮した。

残り3分半にヤニス・アデトクンボがダンクを外した。ここからトランジションに転じたフラッグは左コーナーに走るマックス・クリスティがワイドオープンなのを見逃さず、コーナースリーをアシスト。このビッグプレーでマブスの反撃に火が付き、リードチェンジを繰り返す展開となった。

そして1点ビハインドの残り40秒、ボールプッシュしたフラッグはスピンムーブでマークをかわしてリムに向かう。ゴール下で待ち構えるのはアデトクンボで、パスを出す選択肢もあったがフラッグは逃げなかった。リムへと突き進み、アデトクンボと空中で激突しながらも身体をコントロールし、しぶとくゴール下のシュートを沈めた。

惜しむらくは、これがゲームウィナーにならなかったことだ。次のポゼッションを守り切れず、そして痛恨のターンオーバー。PJ・ワシントンがフラッグにパスを出した瞬間、カイル・クーズマが後ろからフラッグを押し倒したように見えたが、ファウルの判定はなかった。クーズマがそのままダンクに持ち込み、試合を決めた。「コールはなかった。だから接触はなかったと考えるべきだ。我々はそれを乗り越えてプレーしなければならない」とマブスのヘッドコーチ、ジェイソン・キッドはこのシーンを振り返った。

接戦を落とした悔しさはあるが、指揮官キッドはフラッグのパフォーマンスを「試合を通じて良かったが、特に後半は調子を上げた」と称え、アデトクンボが相手でも臆さず勝負に行く気持ちの強さを「勝つためにプレーしている。相手が誰であろうと挑み続ける選手だ」と評価した。

そしてフラッグは、初対戦となったアデトクンボとの1対1をこう振り返る。「最初は彼の上からダンクしようと思ったんだけど、それは止めた。あのサイズとフィジカルが相手では無理だよね。だけどリムで彼と勝負すべきだと思った。ああいう相手だからこそ、挑まなければならない。結果としてシュートが上手く決まってくれたよ」

最後の悔しいターンオーバーについては「接触はあった。そうじゃなければ倒れはしない」と、キッドとは真逆のことを言った。「だけど、僕はそこから学ぶ。接触があることを予期しておくべきだった。相手がフィジカルに来るのは当然だし、僕はそれに負けずにプレーしなければいけない。間違いなく良い教訓になったよ」

上位指名のルーキーであっても、NBAで苦労するのは避けられない。彼らが向き合うのは強力な相手とのマッチアップやシーズン82試合の過密日程だけではない。「負けること」にも慣れる必要がある。数日前にフラッグは「高校と大学を合わせたより多く負けている」とボヤいた。

バックス戦の試合後、フラッグはあらためて敗戦を受け入れる難しさを語った。「以前は調子が悪かったり、自分らしくないプレーをしても、チームが勝ったからと前に進むことができた。今は次から次へと試合をこなす中で、悪いプレーがあっても切り替えるしかない。開幕からここまで、自分に十分なプレーができているとは思わない。だけど僕にできるのはモチベーションを落とさずに練習に打ち込み、努力を信じ、自信を持ち続けることだ。ネガティブな気持ちを振り払い、次の試合を楽しみにしながらベストを尽くしていく」

ダラスのファンはドンチッチが去ったショックから立ち直れず、ネガティブな思考にとらわれていた。マブスの旗色が悪くなればスタンドから「ニコを解雇しろ」の声が上がり、選手たちが前向きな気持ちを持ち続けるのが難しい状況にあった。

それから一夜明けた現地11月11日、マブスはニコ・ハリソンの解任を発表した。これでファンの溜飲は下がるだろうが、それ以上の効果は望めない。チームが抱える問題は(愚かなトレードはこれ以上起きないだろうが)結局のところ、チーム自身が解決していくしかない。

バックス戦でのフラッグは26得点9リバウンド4アシスト2スティールを記録。超大物ルーキーの才能を見せてはいるが、それでもチームが勝てていない以上、彼にはさらなる成長が望まれる。