「この気持ちは僕のプレーを必ず良くしてくれる」

クリス・ポールがクリッパーズに戻って来た。かつての『ロブ・シティ』のリーダーにとっては、8年ぶりの古巣復帰となる。40歳になった彼は、今もNBA屈指のポイントガードではあるが、一度クリッパーズを離れた後にロケッツでコンビを組んだジェームズ・ハーデンに次ぐ2番手を務める。キャリア21年目を迎える彼はその役割を受け入れ、ずっと追い求めているNBA優勝を勝ち取るべく意欲を燃やしている。

その彼を動かすもう一つのモチベーションが家族だ。彼の自宅はずっとロサンゼルスにある。2017年に移籍したロケッツだけは家族も一緒だったが、2019年にサンダーに移籍し、サンズ、ウォリアーズで過ごした期間は『単身赴任』を余儀なくされた。

「これが何を意味するのか、多くの人には理解できないだろうね」と、シーズン始動会見でポールは言った。「このところ、週末はずっとどこかの体育館で子供たちのプレーを見てきた。息子はバスケをやっていて、娘の一人はバスケとバレーボールを、もう一人はチアリーディングをやっている。それを見に行けることに僕は幸せを感じている」

会見だけでなく、ルー・ウィリアムズがホストを務めるポッドキャストでも、ポールは家族のことをたくさん話した。「家族と過ごす時間はかけがえのないものだよ。子供たちがプレーする姿を見て、妻とドジャースの試合を見に行ったり、バスケだけじゃない『人生を楽しむ』時間を取れている」

「バスケはもちろん大事だけど、一日中やっているわけじゃない。練習が終わったら子供たちの様子を見たいけど、FaceTimeでは子供たちはまともにしゃべってくれないんだ(笑)。今は学校の送り迎えの10分間を一緒に過ごすだけで心が満たされるのが分かる。年齢を重ねると、ただケガなくバスケをするだけでは十分ではなく、精神的な健康が重要になる」

家族の話をしている時のポールは完全にリラックスして、バスケをしている時の笑顔とはまた別の表情がある。「前にクリッパーズにいた時は、子供たちはまだ幼なかったから試合があれば必ず会場に連れてきていた。でも今は『その日は予定がある』なんて言われるから参るよ(笑)。でも、そういう会話を楽しんでいる」

「僕はバレーボールやチアリーディングについては何も知らないから、娘たちを見て『こうすべきだ』みたいな目で見ることがない。上手いのかどうかもよく分からないまま、ただ父親として娘を応援している時が人生で一番楽しい瞬間かもしれない。息子もヒューストンではサッカーをやっていて、僕はサッカーのことが何も分からないから、クリス・ポールではなくただの父親でいられた。『ただの父親』って最高なんだ」

そして彼の妻は、「プレッシャーなんて何もない。ただ楽しんで」と繰り返し励ますそうだ。「とは言っても、僕は半端じゃない負けず嫌いだから競争心を持ち続けるんだけどね」とポールは笑い、こう続けた。「この気持ちは僕のバスケのプレーを必ず良くしてくれるはずだ」