
我慢の展開から群馬が最終クォーターで大量リードを築く
10月4日に群馬クレインサンダーズは敵地で、シーホース三河と今シーズン最初の公式戦を戦った。最終クォーターまで競った展開となったものの、最終的に75-58で群馬が勝利した。
群馬は試合の入りで連携ミスもあり、三河に7点の先行を許す。しかし、その後は三河のミスを突き速い展開に持ち込むことに成功。ハーフコートバスケではファウルを受けてフリースローを獲得するなど着実に点差を縮め、第1クォーターの終了間際に辻直人がジャンプシュートを成功させ19-18と逆転して終えた。
第2クォーターに入ると互いにフィールドゴールが決まらない我慢の展開となったが、三河のビッグマンにファウルトラブルが発生。トレイ・ジョーンズやコー・フリッピンのドライブからの得点も決まり、群馬が36-28とリードして前半を折り返す。
後半に入ると、三河のオフェンスリバウンドやゾーンディフェンスに苦しめられた群馬は徐々にリードを溶かすと、ダバンテ・ガードナーに3ポイントシュートを許し1点差に詰められたところでタイムアウトを要請。その後同点に追いつかれたシーンもあったが、高確率で3ポイントシュートを沈めたことで2点をリードして最終クォーターを迎える。
そしてディフェンス強度を上げた群馬は、オフェンスでもボールムーブが良くなり徐々にリードを広げ始める。オフェンスリバウンドからのセカンドチャンスポイントを量産し、オフィシャルタイムアウトを挟んだ8-0のランで一気に突き放すと、最後まで高い集中力を保ちこのクォーターを24-9と圧倒した。
群馬のカイル・ミリングヘッドコーチは「開幕戦はお互いにとって難しいゲームだったと思います。その中で、ディフェンスやリバウンドをしっかりと遂行できたのが、今回の勝利に繋がりました」と勝因を語った。

「このオフ、最初に会った時から『ハルク』って呼ばれています(笑)」
この試合のプラスマイナス(個人がコートに立っている時間帯の得失点差)でチーム最多の12を記録したのが細川一輝だった。三河の帰化選手であるトーマス・ケネディや、得点源である須田侑太郎とマッチアップする時間帯が長かったが、彼らの得点を封じてみせた。
ミリングヘッドコーチは、細川の貢献を高く評価する。「彼には『ハルク(アメリカンコミックの超人キャラクター)』とニックネームを付けました。ハルクのように強いディフェンスをしてくれたと思います。彼の仕事は3ポイントシュートを決めることですが、今日のようなディフェンスをしてくれるのも心強いです」
その愛称について細川に尋ねると「このオフ、最初に会った時から『ハルク』って呼ばれてますね(笑)。自分の身体から、ハードにやるイメージみたいです」と笑顔で答える。
そして、自身のディフェンスについて次のように評価をする。「ケネディ選手はインサイドも攻めてきますが、自分も身体が強い方だと思っているので、先に身体を当てることを意識し、やりたいプレーをやらせないようにしました。須田選手は何度もマッチアップしているので、得意なプレーがわかっていて、それをやらせないようにできたのかなと思います」
昨シーズンまでは、2番ポジションをメインに担っていたが、この試合では3番ポジションでプレーをしていたジョーンズがベンチに下がるタイミングでコートに立ち、相手の3番ポジションの選手とマッチアップした。サイズでは劣勢となる相手に対して、フィジカルで十分に渡り合えたことは、今シーズンの群馬のラインナップに幅を持たせることに繋がる。
さらに求められることも増えてきたと話す。「シューターとして出場していますが、今年はドライブからのキックアウトや得点をヘッドコーチに求められています。ブレずに3ポイントファーストですが、その中で他のプレーでもアピールしてプレータイムを伸ばしていきたいですね」

「高確率で決めれば、チームに良いスペースを与えられる」
この試合では藤井祐眞と並び、日本人選手トップタイの8得点を記録したが、武器である3ポイントシュートは8本中2本成功と本来の成功率からは程遠い数字だった。しかし、2本とも印象的な場面での成功となった。1本目は追い上げる展開から同点にする成功で、三河にタイムアウトを取得させた。2本目は最終クォーター開始直後の成功で、リードを広げる狼煙となった。
そして、2本目の3ポイントシュートの場面を次のように振り返る。「どんなシチュエーションでも打ち切るのは決めていることです。その中で、良いパスがきましたし、自分のタイミングでステップを踏めたので、打った瞬間に『入ったな』という感覚がありました」
さらに成功率を上げることでチームにも良い影響があると続ける。「打てるタイミングがあったら打つ意識を持っていますが、今日はもっと決めなきゃいけなかったです。決めればディフェンスも離せなくなるので、チームに良いスペースを与えられると思います」
結果だけを見れば大勝ではあるが、終始緊張感のある展開で、決して簡単な勝利ではなかった。細川もミリングヘッドコーチ同様に、ディフェンスとリバウンドがカギだったと話す。
「オフェンスの調子ではなく、ディフェンスで我慢できて勝てたのは良かったです。相手にタフショットを打たせることができましたし、リバウンドもしっかり取れました。我慢しながらもシュートを打ち続けることができたので、良い流れに繋がったと思います」
それはチーム全体を評価する言葉ではあるが、細川が体現したプレーそのものである。ロスターや役割が変わっても、チームが目指すプレーを遂行することが勝利に直結することは変わらない。チームをより強固なモノにするため、細川のさらなる進化に期待したい。