[CLOSE UP]山下泰弘(ライジングゼファーフクオカ)NBL優勝チームから3部の福岡へ、地元愛を貫いた『昇格物語』

2017/05/12
Bリーグ&国内
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文=古後登志夫 写真=古後登志夫、ライジングゼファーフクオカ、吉田武

「このチームのために、できるところまでやりたい」

11カ月前の昨年6月5日、山下泰弘は東芝ブレイブサンダースの一員としてNBL最後のシーズンを制した。Bリーグ開幕を控え、東芝から川崎とチーム名称が変わるこのタイミングで、山下泰弘は重大な決断を下す。明治大から入社して以来、7年間を過ごした東芝を離れ、生まれ育った福岡で第2のスタートを切るという決断を──。

ポイントガードのポジションでは2歳年下の篠山竜青、5歳下の藤井祐眞が台頭していたが、経験豊富な山下はシックスマンとして重宝される存在だった。一方、福岡は新体制に生まれ変わったものの、リーグのカテゴリー分けで3部に組み込まれ、旧bjリーグの強豪としては不本意なスタートを切ることに。それでも、優勝チームから3部で再出発するチームへの移籍を山下は躊躇しなかった。

そして5月10日、B2昇格記者会見に出席した山下に話を聞いた。まだ来シーズンの契約についてはこれから話し合うとのことだが、「来シーズンはもちろん、B2優勝を目指します」と宣言。「ここでプレーする覚悟を持って福岡に帰って来たので。今年31歳ですが、やれるだけやりたい。この福岡のチームのために、できるところまでやりたいんです」

東芝を離れたのは過去のこと。「今はゴタゴタしてますけど、もともと東芝はセカンドキャリアが充実していて、定年までそこで働けるというメリットがあったのですが、それでも福岡に戻りました。福岡には両親、家族、親戚がいっぱいいます。小学校、中学校、高校とバスケットやってきて、その関係者に成長した姿を見せたい、恩返しをしたいという気持ちがありました」

「ライジングの選手にはハングリーさが足りない」

1部から3部へ。環境の違いは決して少なくなかったが、やっているバスケットボール自体も同じものではなかったと山下は振り返る。「B1のトップチームは作戦を考えて、頭を使って狙いどころを考えるんですけど、B3はとにかくアグレッシブで『行けたら行く』みたいな。5アウトのチームが多くて、『インサイドが起点で中から外へ』というより5人のアウトサイドでガンガン攻めて、崩れたら打つ。思い切りの良いシュートは打てているんですが、今までと勝手が違ってやりづらい部分もありました」

B3では福岡の実力は一つ抜けていた。だが、来シーズンもそうは行かないことを山下は自覚している。「バスケットの質を上げることが第一です。そのためにはまずディフェンス。リバウンドとルーズボールが強いチームが最終的に優勝できると僕は思っています。去年はファイナルを経験したんですけど、実力が高いレベルで拮抗すると、リバウンド、ルーズボール、ターンオーバーの差になります」

これからB2を戦う上で、まず求められるのはボールへの執着心、ハングリーさ。「栃木の田臥(勇太)選手だって、あの年齢でボールに対する執着心はすごいですよ。福岡の選手にはそこが足りない。リバウンドを簡単に取られたり、ボールを追いかけるのをあきらめちゃったり」

また「今シーズンは今までと違って、相手チームのスカウティングを一切しなかったんです」と山下は明かす。それでもB3を勝ち切るだけの力があったということだが、B2では全く違ったアプローチが求められる。「頭を使って狙いどころを考えるバスケ」をやるようになれば、山下の経験はさらに貴重なものとなる。

「勝つことだけでなく、福岡を盛り上げたい」

今シーズンの山下は、NBLトップチームの主力だった実力を存分に発揮。司令塔としてチームを引っ張り、B2昇格を果たすとともに、個人としてはB3ベストポイントガードに選ばれてもいる。「個人的にはもうちょっとゲームメイクの部分を光らせていきたいですし、得点も取りつつゲームをコントロールしていくスタイルにしたい。ディフェンスもハードにやっていきたい」

彼自身はシックスマンからスタメンへと役割を変えた。来シーズンもそれは変わらないだろう。「体力面も強化しないといけないですね」とベテランは笑みを見せた。「東芝ではシックスマンで、プレータイムもだいたい決まっていたんで。今はゲームの状況次第で出たり出なかったりするので、そのコントロールが難しかったです」

「シーズンが長くなって試合数が増えるのでタイムシェアはある程度必要だと思います。個人で戦う部分も上のレベルまで来れば、B1でも数少ないぐらいの選手じゃないと研究されてチームで止められてしまうので。だから『個の力』には限界があります。そこでチームのバランスを出していかないと」

福岡はB2西地区に入ることになる。島根スサノオマジックと広島ドラゴンフライズがプレーオフの真っ最中だが、山下は来シーズンの戦いに思いを馳せる。「ライバル視するチームとなると、広島も佐古(賢一)さんの戦略に怖さを感じますが、一番はやはり同じ九州の熊本ヴォルターズです。プレシーズンもやっていて知っている選手が多いですから。古野(拓巳)とか良いガードもいて、対戦するのが楽しみです」

長いシーズンを終えて、ひとまずは心と身体を休める時間。それでも山下はB2での戦いが楽しみで仕方ないようだ。「来シーズンも優勝を目指して頑張りたい。とにかく福岡を盛り上げたいのが一番で、勝つこともそうですが、試合会場を常に満員にするのが目標です。一人でも多くのお客さんを呼んで、また来たいと思ってもらえるようなプレーをしていきたいですね」