谷口大智

「誰が出ても活躍できるポテンシャルを持っている」

930日、Bリーグ開幕戦を週末に控えた群馬クレインサンダーズは公開練習と記者会見を行った。オフには秋田ノーザンハピネッツやNBA Gリーグ選抜、サンロッカーズ渋谷とプレシーズンゲームを実施。ヘッドコーチのカイル・ミリングは確かな手応えを得たと話した。

指揮官は今シーズンの強みについても言及した。「ビッグマンもドリブルやシュート、パスがうまく、どこのポジションもこなせる選手が揃っています。それを生かして効率的なオフェンスをしたいです。ポジションレスバスケを志向しているので、最終的に仕上がれば最高のチームになります」

オフに補強した中村拓人とケリー・ブラックシアー・ジュニアは、広島ドラゴンフライズでミリングヘッドコーチと優勝を経験した。中村は藤井祐眞との同時起用で互いの得点力を高め合い、ブラックシアー・ジュニアはエージェー・エドゥと組めばストレッチビッグとして、トレイ・ジョーンズと組めばセンターとして柔軟に役割を担うことができる。チームはプレシーズンゲームからすでにポジションレスの片鱗を示していた。

そういったチームにおいてこのシーズンより新加入した、3ポイントシュートが打てる日本人ビッグマンの谷口大智にかかる期待は大きい。島根スサノオマジックに所属した昨シーズンは多くの出場機会には恵まれなかったが、限られたチャンスで仕事をこなし、ディフェンスでも大奮闘。さらに3ポイントシュートの成功率は52.6%を誇った。

谷口は自身の役割を理解した上で、次のように話す。「ガード陣にも負けないぐらいの3ポイントの確率やそれを打ち切るところ、そして自分がストレッチしたことでできたスペースの生かし方は、僕がここ数年間学んできたことなので、そこを見てもらいたいです」

そして、自身の武器がチームに貢献できると手応えを感じていると続けた。「僕のシュート力を生かしながら、他の選手が空いたスペースに飛び込むプレーは試合を重ねるごとに理解できてきて、かなりいい状態に仕上がっています」

谷口大智

「雪だるま式に大きくなるようなチームになれたら」

このオフ、『FIBAユーロバスケット2025』でドイツ代表の32年ぶりとなる優勝に貢献したヨハネス・ティーマンは、その活動のため合流が遅れた。所属2シーズン目とはいえ、コンディションや連携面が100%の状態で開幕を迎えられるわけではない。谷口もそれを理解した上で、意気込みを話す。

「僕自身がJT(ティーマン)の代わりになることはできないですが、コート上で僕の色をしっかりと出しながら、チームの勢いに繋がるプレーを見せたいですね。誰がコートに出ても戦力は落ちないんだぞ、というのをしっかりと証明できるように頑張っていきます」

コート内での活躍は当然期待されているが、どこのチームに行っても愛されるその明るいキャラクターも、谷口はチームに欠かせない存在となる。プレシーズンゲームでもすでに、試合中ベンチで観客の声援を促すなどチームを盛り上げる姿が多く見られた。

「正直な話、盛り上げようと思ってやってるわけではなく、みんなで一体になって戦う表現の仕方がああいう感じというだけです。ここ1本を絶対止めたい場面やフリースローを外させたい時には、ファンの皆さんに協力してもらう形で、『群馬一丸』でアタックしたいなと。全員で勝ちたいというだけです」

その姿勢は試合中だけでなく練習からポジティブな影響を与えているようだ。谷口はチームの雰囲気の良さを次のように話す。「辻(直人)さんや藤井選手がオンオフもしっかりと切り替えているし、コート上では時には厳しいことも言い合ってもオフコートでは全員で和気あいあいと涙を流すくらい爆笑しているので、練習以外でもチーム全体のケミストリーは高まっていると感じています」

キャプテンの辻は、谷口にとって洛南高の1学年上の先輩で、ウインターカップ制覇を共に経験した仲間だ。辻は高校以来にチームメートとなった後輩について「一緒にプレーするのが楽しいですし、何より僕のメンタル安定剤です。彼がいてくれて相当やりやすいです」と頬をゆるめる。

そのことを谷口に伝えると、満面の笑みで辻への思いを明かした。「いまだに学ぶことは多いですし『高校時代、辻さんのこういうところに憧れたんだよな』という姿を今でも見せてくれます。リスペクトを込めて、また辻さんと一緒にプレーできるうれしい気持ちを毎日噛み締めながらやっています」

チームが掲げた目標は優勝。強力な補強を敢行して挑む新シーズンは、4日のアウェー、シーホース三河戦から始まる。谷口は最後に意気込みを語った。

「チャンピオンシップに進出し優勝するという目標は共通で持っています。ただ『優勝する』と言うだけでなく、目の前の1勝を意識していかないと、目標には届きません。11勝を積み重ねて、チームで成長しながら、終盤に向けて雪だるま式に大きくなるようなチームになれたらなと」

昨シーズンは出場機会が減り、35歳でベテランと呼ばれるキャリアになってきたが、再び花を咲かせるため群馬にやってきた。そんな谷口の活躍が群馬が頂点へのラストピースとなる。