今オフ、京都ハンナリーズから島根スサノオマジックに加入した岡田侑大は、リーグ屈指の日本人ガードとして地位を確立している選手だ。今回がキャリア4度目の移籍となる岡田に、移籍の際に大事にしていること、そしてチームの中心選手としてプレーすることに対するこだわりを聞いた。
「今の自分の歳で丸くなってしまうのは面白くない」
──岡田選手はこれまで、1試合平均2桁得点を安定して挙げてリーグ屈指の実績を残してきました。移籍先を選べる立場にあると思いますが、大切にしているポイントを教えてください。
自分がどこでプレーすれば成長できるのかを一番に考えています。もちろん、慣れ親しんだ環境で居心地良く、エースとしてプレーできるチームに留まるのも1つの選択だと思います。ただ、自分にとって現状維持は後退しているのと一緒。現役であるうちは成長を続けないといけないという考えです。京都はさらに地元という部分もありましたが、基本的には自分を成長させるために移籍している感じです。今のところ、これまでの移籍に後悔はないです。すべてうまく行ったと言えるかは分からないですが、それぞれのチームで成長できていると思います。
──実績十分な選手たちが揃う強豪に移籍し、2番手、3番手の存在になることもできたと思います。自分がエースとして引っ張っていく役割を求められるチームに移籍していることは何か意識をされてのことですか。
意識はしています。いろいろな考えがありますけど、今の自分の歳(27歳)で丸くなってしまうのは短いキャリアの中で面白くないですし、楽しくないです。これから歳を重ねて30代半ばになってきた時には、チームにおける役割の部分でアジャストしなければいけないと思いますが、今以上のパフォーマンスを目指して取り組んでいるうちは、チームのエースであることにこだわっていきたい。どこのチームでもエースを担える選手になることを目指すのが、今の自分のあるべき姿と思います。
──接戦の第4クォーターは自分が攻撃の起点としてオフェンスを始めたい、といった良い意味でのエゴ、譲れないプライドは持っていたい?
そうですね。そういう気持ちは自分の原動力ですし、チームメートに対しても負けたくないという思いはずっと持っています。ポイントガードとして、試合で当たっている選手にラストシュートを打ってもらいたい、打たせてあげないといけないという部分はもちろんありますが、自分がラストシュートを打つことになってもチームに認められる存在になりたいです。
──30代半ばになったらこだわりも変わってくるかもしれない、とのことですが、逆に言えば少なくともあと10年くらいはトップレベルでプレーすることを考えていますか。
通用しなくなったら「どうしようかな」とは考えると思いますが、高いレベルでパフォーマンスができている限りはずっと現役でいたいです。選手寿命は年々伸びてきていると思いますし、京都で古川孝敏さんと一緒にプレーしたことも自分にとっては大きいです。古川さんの年齢(37歳)であのレベルのプレーをできることがどれだけ難しいかは理解していますし、自分もそうなれるとは今はまだ考えられません。ただ、自分の納得するレベルでプレーできているうちは最後までやりきりたいです。
──古川選手は40代になっても現役を続けることを目指している鉄人で、そのために非常にストイックな生活を送っていると聞いています。彼からはどのようなことを学びましたか。
古川選手は身体の気の遣い方とかを含めて、本当にえぐいですね。あそこまで自分ができるかと言われたら分からないですが、食べるものであったり、練習前の準備のやり方などをアップデートしている姿を見ていて、あれだけバスケットのことを考えているからこそ、あの年齢でもトップレベルでプレーできるんだと思いました。「自分のやり方をしていけば良いよ」と言ってもらえたので、自分に合った取り組み方をもっと見つめていきたいと思いました。
「厳しい環境でのプレーを積み重ねていかないと、上のレベルの選手になれない」
──「チームの中心としてプレーしたい」というこだわりを持つようになったきっかけはありますか。
富山グラウジーズに在籍していた2020-21シーズンが今の考え方に影響しています。あの時、チームにはジュリアン・マブンガ選手とジョシュア・スミス選手、松脇圭志選手、前田悟さん、宇都直輝さんがいました。正直あのシーズンは、試合に臨むにあたって緊張もしないで「別に自分がダメでも他の誰かが当たるやろ」みたいなメンタルでした。自分の調子が悪くても何とでもなる層の厚いチームだったことが、チャンピオンシップに出られた大きな要因だったと思います。富山でのプレーは本当に楽しかったですし、自信を持たせてもらいました。ただ、当時のチームはマブンガ選手がメインハンドラーだったので、もっと自分がピック&ロールを使いたいという思いが強くなっていきました。
そして信州ブレイブウォリアーズ、京都で、チームの勝敗に影響を与える立場でプレーさせてもらうことの楽しさ、やりがいを感じました。ただ、島根は自分の調子が悪くても絶対に何とかなると思いますし、今は「調子が悪い時にやらないといけない仕事もある」というメンタルに変わってきている部分もあります。
エースの立場を担うことで、1つのターンオーバー、ファウルが試合に与える影響はより大きくなります。ただ、こういう厳しい環境でのプレーを積み重ねていかないと、もっと上のレベルの選手になれない。上位チームでこれを長いシーズン経験してきたのが、安藤誓哉さんや富樫勇樹さん、比江島慎さんといったBリーグを代表する選手だと思います。自分はこの選手たちに肩を並べ、さらに超えていけるような存在になりたい。だからこそ、中心選手としてチームを上位に導いていくことを目指す今シーズンは、自分にとっても大きな節目のシーズンになると思います。
──最後にファンへのメッセージをお願いします。
プレシーズンではケガ人などでなかなか人数が揃わず、心配されているファンの方も多いかもしれませんが、良いチームを作れる自信はあります。そして、しっかりした結果を残さないといけないシーズンだと思います。やっぱりチームに期待をしてほしいですし、自分のプレーを見て楽しんでもらえるのがうれしいです。今シーズンのホーム会場はこれまでの松江から出雲に変わりますが、それでも満員の会場でプレーしたい。皆さんに「試合を見に行きたい」と思っていただけるバスケットを披露していくつもりなので、引き続き応援よろしくお願いします。