ケビン・デュラント

「誰にも助けられない。それが何よりも辛い部分だ」

ウォリアーズの大逆転優勝のため、リスクを承知でラプターズとのNBAファイナル第5戦に強行出場した結果、ケビン・デュラントはアキレス腱を負傷した。

まだ詳しい検査結果は発表されていないが、アキレス腱の断裂となればキャリアへの大きな影響は避けられない。例えばコービー・ブライアントはアキレス腱の完全断裂という重傷を残り超えたが、やはりプレーへの影響は避けられなかった。それと同時に、プロアスリートのキャリアがケガと無縁であるのが難しいのも事実だ。今のデュラントの心境を理解し、寄り添うことができるのは、キャリアに影響を与えるような大ケガから復活したアスリートだけだ。

ひざや腰の手術を何度となく受けながらも、今年のマスターズ優勝により完全復活を周囲に印象づけたプロゴルファーのタイガー・ウッズは、長く辛いリハビリの日々を誰よりも知っている著名なアスリートの一人だ。今週、ペブルビーチで開催される全米オープン前の会見で、2008年の自分と今のデュラントを比較できるかとウッズは質問された。11年前のウッズは、ひざの痛みをこらえながらプレーを続けて全米オープンを制したが、その代償として何度も手術を受けることになった。

深刻なケガを負うリスクを承知で重要な試合に出場するアスリートの心境について聞かれた彼は、経験者にしか分からない苦悩を語った。

「彼のケガは残念だ。アスリートならば、身体が異常を感じた瞬間というものを経験している。何かが起きて動くこともできない、何もできない状態をね。彼の表情を見たら、それが分かる。彼もあの瞬間、異常があったことを分かっていたはずだ」

「僕はアキレス腱も腰も痛めた経験があるので、それがどういう感覚かは知っている。誰にも助けられない。それが何よりも辛い部分だ。これから彼がどういう処置を受けるのかは分からないが、これからの彼にはオフシーズンとリハビリが何よりも辛くなるだろう」

「もし断裂したなら、半年から9カ月はリハビリになる。長時間のリハビリは辛いものだ。周りはそれを理解してくれない。それでも、アスリートであれば向き合わなければならない。アスリートとしての自分たちの仕事は、決して人体に求められていなかったようなことができる肉体を作り、ライバルよりも優れた存在になること。時に、何かが食い違ってしまうことだってある。彼の身に起こったことのようにね」

11年ぶりにメジャー優勝を果たしたウッズの言葉は重みが違う。自己を鍛え、その技術を磨き続けるアスリートは、孤独な存在だ。デュラントはウッズと同様に、アスリートとして長く、辛いリハビリを乗り越え、復活を果たさなければならない。