マーカス・フォスター

「オファーが来た時は迷うことがなかったです」

9月20日、アルバルク東京は長崎ヴェルカとプレシーズンゲームを実施。長崎がベンチ入り7名のみの事情を鑑みて、1クォーター8分と短縮された試合を59-55で制した。

A東京は試合の立ち上がりから長崎のテンポの速いバスケットボールに主導権を握られてしまった。それでも、悪い流れの中で踏ん張り、後半に逆転できたのは新戦力のマーカス・フォスターの存在が大きかった。序盤から確率良くシュートを沈めると、ディフェンスでも平面での激しいプレッシャーを披露。3ポイントシュート4本成功を含む19得点に5リバウンド3スティールと攻守にわたって躍動した。

これまでヨーロッパを主戦場にしていたフォスターは、昨シーズンにイスラエルの強豪ハポエル・テル・アビブに在籍。ユーロカップでは全24試合出場で平均13.6得点、3ポイントシュート成功率42.6%の活躍で、チームの優勝に大きく貢献した。欧州で確固たる実績を残している191cmのウイングはA東京の課題となっていた爆発力不足、流れの悪い時に個で打開できる力を持ったスコアラーとして大きな期待を寄せられている。フォスターも「昨年のチャンピオンシップの試合も見て、どこか問題点が理解しています。オフェンスをペースアップして、自分の強みを出していきたいです」と意気込みを語る。

30歳のフォスターにとって今回が初めての日本でのプレーとなるが、元々Bリーグに興味があったと明かす。「前からBリーグのことは年々成長しているリーグとして知っていました。ザック・オーガスト、ベン・ベンティル、アーロン・ホワイトなど多くの友人たちがプレーしており、彼らが楽しんでいるのを聞いていました。数年前からBリーグで自分もプレーできたらと思っていて、だからアルバルクからのオファーが来た時は迷うことがなかったです」

Bリーグとヨーロッパでは、コート内外で大きな違いがあり、すぐに適応するのは簡単ではない。「2019年から大半をヨーロッパでプレーしてきました。日本と欧州とは生活環境も違いますし、大きなアジャストは必要です」とフォスターも語るが、一方でここまでは順調に来ていると感じている。

「一番恐れているのは変化に対して自分を見失ってしまうことです。ただ、このクラブは素晴らしい組織で、フィットするのが簡単だと思います。今のところスムーズにアジャストできています」

マーカス・フォスター

「ビッグマンに対抗できるフィジカルの強さはあります」

見事なプレーだった長崎戦についてフォスターは、「良い試合でした。開幕からケガ人がいる中でのスタートになりますが、その中でいろいろと自分たちのプレーを試せたのは良かったです。苦しい状況を乗り切るための手応えをつかめたと思います」と振り返る。

フォスターが言及したように今、A東京はシーズン開幕を前に大黒柱である帰化枠のライアン・ロシター、欧州最高峰ユーロリーグでの実績十分な新戦力ブランドン・デイヴィスと、中心選手のビッグマン2人が揃って故障し、インジュアリーリスト入りの非常事態に陥っている。代役として昨シーズン後半に在籍したスティーブ・ザック、大ベテランのアイラ・ブラウンを緊急補強しているが、戦力ダウンは否めない。

現実としてビッグマンの層が薄いままシーズン開幕となる。この苦境を打破するため、これまでのA東京にはなかったスモールラインアップの導入もありえるとデイニアス・アドマイティスヘッドコーチは明かす。「今のチーム状況にアジャストしないといけないです。練習、プレシーズンで菊地祥平選手、ザック・バランスキー選手が4番でプレーする。時にはシューターの安藤周人選手の4番起用を試したこともあります。いつもと違うことをどんどんトライしています。シュート力、状況判断が良い選手たちが揃っているので、現状で手応えをつかんでいるとまではいきませんが、スモールラインアップも入れて乗り切りたいです」

また、フォスターは191cmとサイズはないが、自身も4番ポジションを担えると語る。「昨シーズン、相手によってはスーパースモールラインアップで戦うことがあり、その時は4番でプレーしていました。身長はないですけど、ビッグマンに対抗できるフィジカルの強さはあります。大きなアジャストは必要ないです。自分にできることはあると思います」

満身創痍の中、A東京は開幕節で宇都宮ブレックス、第2節で琉球ゴールデンキングスと昨シーズンのファイナル進出の2強と激突する。この苦境を乗り越えるためには、フォスターの攻守にわたるハイパフォーマンスが不可欠だ。