並里成

佐土原遼、アーロン・ヘンリーら主力が退団し、ヘッドコーチ未経験のルーベン・ボイキンスーパーバイザーコーチ(SVC)が指揮をとる。決して盤石とは言えないチーム状況にあっても、ファイティングイーグルス名古屋の並里成は泰然としていた。その理由は、このインタビュー後ほどないタイミングで行われた『AICHI CENTRARAL CUP 2025』での戦いぶりを見てよくわかった。ポジティブな新たな風を大きな嵐へと変えるには何が必要か。ベテラン、司令塔としてチームを牽引する並里に聞いた。

一新された練習方針「めちゃめちゃ好きです」

──並里選手がいらっしゃる前に広報さんからうかがったのですが、練習方式が昨シーズンから大きく変わったそうですね。

変わりました。朝からのセッションがあるのがまず大きく変わったところですね。

──4部練に近いとうかがいました。

そうですね。ガード、ウイング、ビッグの3グループに分かれて、それぞれビデオミーティング、ウエイトトレーニング、ワークアウトを行います。945分から最初のセッションが始まって、大体12時くらいにすべてが終わるという流れです。午後は午後でチーム練習とウエイト、ワークアウトを行います。

──並里選手はこれまでいろいろなチームに所属されてきていますが、今のような練習方法は新鮮ですか?

こういうところに時間を費やしてナンボだと思うので、こういう「バスケット尽くし」みたいな生活がめちゃくちゃ好きです。特に今年は若い選手が多いので、彼らが頭を整理するタイミングが必要だと思っていました。実際に彼らはそれをしたことで自信をつけてきていて、それがチームの自信にも繋がっている。良いことです。

──ボイキンSVCはメインで指揮をとるのが今シーズン初めて。メンバー大きく変わりましたし、若手も増えました。始動当初は少なからず「大丈夫かな」という気持ちもありましたか?

そうですね。メンバーが半分ぐらい変わりましたし、最初はどういうチームになっていくかが本当に分からなかったです。ただ、始まってみると若い選手たちのハートがすごく良くて、ハードワーカーで、良いエネルギーがあるなと感じています。

──ボイキンSVCはどのようなコーチですか?

まずは本当に人として素晴らしい。人格者です。バスケットのスタイルもクリエイティブで、自由を与えながらその中でも激しさや厳しさも要求してくれるので、チームとしてもすごく良い方向に進んでいると思います。

ファイティングイーグルス名古屋

若手たちに伝えたいこと「アグレッシブに行け」

──バスケットのスタイルはどのようなものになりそうですか?

フィジカルを使った激しいディフェンスから早い展開のオフェンスに持っていく。それを40分間続けようというスタイルですね。外国籍選手3人とアジア特別枠の選手がいて、僕と保岡(龍斗)とササ(笹山貴哉)というベテランがいて。今は須藤(タイレル拓)がスタートで使われているんですけど、すごく良い味を出していて面白いですよ。

──今年は特にガードに若い選手が多く、ポジションごとのセッションを含めて並里選手がリーダーシップをふるう場面も多いのではないかと想像します。若者たちをまとめるのは大変ですか?

大変ですけど楽しいです。昔の自分を見ているようで(笑)。若い選手が個人のパフォーマンスを上げたいと思うのは良いことなんですけど、チームでやるべきこととのバランスをしっかり取ることも勝利するためには大事なことなので、そこのバランスをうまく取れたら良いのかなとは思っていますけどね。1番大事なことは「みんなで一緒になってやる」ということ。そこは絶対に欠かせません。

──血気盛んな若者たちに、年長者としてどのような言葉がけをしていますか?

「とにかくアグレッシブに行け」と言っています。考えすぎずに自分の試したいことをやってほしいんです。考えながらプレーするには慣れが必要なので、それはシーズンを通してちょっとずつ学んでいけば良いなと。せっかく身体も動くんだからアグレッシブにやってほしいですね。

──若い選手と新しいコーチがいるこのチームで、在籍2年目、ベテラン、司令塔の並里選手はどのような役割を果たしたいですか?

若いエネルギーを勝利の方向へと導きたいですね。それぞれがバラバラの方向を向かないように。声がけであったり態度だったりはすごく気をつけてます。バスケットのところでは、考えてやらないといけない部分と、自由にやらないといけない部分について教えられるかなと思うので。若い選手は逆になってしまうんですよね。考えないといけないところを大雑把にやってしまって、自由にやるところをすごく考えすぎてしまうところがある。そこを一つひとつクリアにしてあげて、気持ちよくプレーさせるというところは大事にしています。

フランシス・ロペス

新戦力が予想以上のスピードでフィットしている理由

──先ほど須藤選手のお名前が出てきましたが、新加入選手で「面白い」と感じる選手は他にもいらっしゃいますか?

今年のアジア枠で来たフランシス・ロペスは1つカギを握る選手だと思っています。まだ22歳と若いですがすごく能力があって、面白いです。練習でショーン(オマラ)とマッチアップしてるんですけど、ショーンもなかなか簡単にシュートを決められていないです。

──本当ですか!オマラ選手は208cm、ロペス選手は193cmとかなり身長差がありますが……。

サイズは全然違うけれど、やり合って良い味を出しているんです。とにかくあきらめないし、ブロックもかなり跳ぶので、そういうプレーが1〜2回出ただけでも流れが変わると思います。僕らにない野生的な能力を持っているので、それを大事にしながらチームとしてうまくやりたいです。

──現時点でチームの仕上がり具合はいかがでしょう。想像通りなのか、そうではないのか。

思っていたよりは噛み合っていて良いと思っています。でもこのチームだったらまだまだ上に行けるな、とも思っています。

──「思っていたより」の詳細をぜひうかがいたいです。

こんなに多くの選手が入れ替わる経験をあまりしたことがないし、それぞれがどういう選手かも分からないところから、今、ルーベンSVCのバスケットの中にベテラン組の僕らがいてっていうところでうまく噛み合ってきています。「うまくいかないもんなのかな」っていうスタンスでいたら、逆に良かったと。でもこれからもっともっといろんなことを追求していけそうな気はしますね。特にディフェンスはめちゃめちゃ固くなると思います。ディフェンスマインドの選手がたくさんいるし、チームディフェンスの方針も明確なので。

──ポジションごとのセッションで意思疎通をはかる機会が増えていることも「思っていたより」に繋がっていますか。

繋がっていると思いますね。ルーベンSVCも「練習中にはあんまりあれこれと言いたくない。ミーティングで時間を取ってたくさん話したい」というふうに言っていましたし、みんなの頭がクリアになった状態でチーム練習に入れて、スムーズに練習ができているところはすごく良いと思っています。