文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

残留を決めてなお、第1戦の課題を修正してきた北海道

昨日、第3クォーターを終えて61-48の楽勝ペースをひっくり返され、延長戦の末に敗れた秋田ノーザンハピネッツは、熾烈なB1残留争いの真っ只中にいる。一方、痛快な逆転勝利を収めたレバンガ北海道は、昨日の時点で残留プレーオフ回避が確定した。

残留に向け、そして北海道へのリベンジに向け燃える秋田が力強くスタートした……はずだったが、北海道はまだ勝利に飢えており、第1戦の課題をしっかりアジャストしてこの試合に臨んでいた。スコット・モリソンのゴール下で流れを作られた反省から、ダニエル・ミラーがしっかり身体を寄せて自由を与えず、トランジションで秋田を上回る。

秋田は出だしから相手の勢いに飲まれてしまった。モリソンを止められ、速攻の機会も与えられず、セットオフェンスでボールを動かせずに停滞する。守備では野口大介を止められない。第1クォーターだけで3ポイントシュート2本を含む15得点と大爆発の野口が牽引する北海道オフェンスは、2点シュートを10本中9本と高確率で決め、第1クォーターで28得点を荒稼ぎした。

しかし、秋田はここから踏ん張る。ゾーンディフェンスで北海道オフェンスのリズムを狂わせると、この春に東海大を卒業したばかり、22歳の中山拓哉が停滞していたオフェンスに活力を注入する。第2クォーター、安藤誓哉に代わってコートに入った中山は、迷わず放った3ポイントシュートを沈め反撃開始。

レオ・ライオンズとイバン・ラベネルの外国籍選手のマークが厳しいと判断すると、ポイントガードでありながら鋭いカットでゴール下に飛び込み、北海道ディフェンスの裏を突いてオフェンスに流れを生み出した。ボールを持っていてもいなくても、常にアグレッシブに動き続ける中山の働きにより、チーム全体が次第に活気付き、37-41と追い上げて前半を終える。

後半に入ると北海道は異常なまでのシュート成功率を維持できなくなるが、ディフェンスで激しくプレッシャーをかけ、リバウンドもチーム全員で取りに行き、容易に秋田に流れを渡さない。それでも安藤がスティールから走ってレイアップを沈め、48-49と1点差まで詰め寄るが、反撃を演出してきた中山のファウルトラブルもあり逆転には至らない。

第4クォーター立ち上がり、停滞を打ち破った田口の働き

58-59と1点ビハインドで迎えた最終クォーター、エナジーを維持できずしばし停滞してしまう秋田だが、田口成浩が難しいミドルシュートを立て続けに決めてチームに喝を入れるとともに、タクミアリーナのボルテージを一段上げる。残り6分22秒、田口がこの試合4本目となる3ポイントシュートを決めた時点で63-64、北海道はたまらずタイムアウトを要求した。

ここで北海道は一つの賭けに出る。秋田に追い上げられた時間帯、多嶋朝飛に続く第2ポイントガードの松島良豪は試合をコントロールできず、秋田に付け入る隙を与えていた。ベンチで休ませていた多嶋を戻す際、そのまま松島と交代させるのではなく、多嶋と松島の2ガードを選択したのだ。司令塔として果敢なパスを狙うもターンオーバーの多かった松島は、組み立て役を多嶋に託して足を使ったディフェンスに奔走。2ガードにすることで秋田の得点源である田口と安藤を抑えにかかった。

この試みは当たったかに見えた。「当たりだしたら止まらない」田口を止め、逆に松島がチャンスを得点につなぎ、秋田に傾いた流れを呼び戻す。だが残り1分30秒、ライオンズに2ポゼッション連続で3ポイントシュートを決められ73-73に追い付かれると、リバウンド争いでライオンズに対し松島がファウル。これがアンスポーツマンライクファウルとコールされてしまう。

秋田はこのフリースローで、試合開始直後の数十秒を除けば初めてのリードを奪う。残り41秒で西川貴之が狙ったシュートは決まらず、これを拾ったライオンズが落ち着いて展開。右ウイングの位置でフリーでパスを受けた高橋憲一が、迷わず放った3ポイントシュートがネットに吸い込まれて79-75と突き放す。北海道は再びタイムアウトを取るも、タクミアリーナの2000人を超える観客とチームが一体となる時間を与える結果にしかならなかった。

2ポゼッション差では挽回は難しい。折茂武彦が強引に3ポイントシュートを狙うも決まらず、79-75で秋田が昨日のリベンジを果たすとともに、残留に向け執念で一歩前進した。

残留への道はいまだ険しいが、チーム力は確かにアップ

圧倒された立ち上がりの後、追い上げムードを作り上げた中山は、ファウルトラブルに陥り第4クォーターの勝負どころでプレーできなかったが、14得点を記録。初めて2桁得点を挙げた昨日に続き、自己最多得点をマークした。「がむしゃらにやった結果です。入りが悪かったですが、チーム一丸となって戦えた」と激闘を振り返る。

実際、追い詰められた秋田が気持ちで上回った試合だった。気持ちが入りすぎて立ち上がりは固くなったが、勢いに乗った後は試合終了のブザーまで全員がハッスルし、流れを明け渡さなかった。北海道の水野宏太ヘッドコーチは「絶対に負けたくないという秋田の気持ちと、ゾーンを長く使われたことによって本来の流れがつかめなかった」ことを敗因に挙げている。

秋田はこれで連敗を3で止めたが、残留プレーオフ回避への道はいまだ険しい。残留確定となる全体14位に位置する滋賀レイクスターズとは18勝39敗で並ぶが、滋賀には直接対決が1勝1敗のイーブン、直接対決での得失点で下回るため、滋賀を追い抜いて残留プレーオフを回避するには実質1ゲーム差をひっくり返す必要がある。そして秋田のレギュラーシーズン残り3試合は、5月3日の千葉ジェッツ、来週末のアルバルク東京との連戦と、リーグ屈指の強豪との対戦だ。

それでも、安藤と田口だけが得点源だったシーズン半ばまでと比べれば、チームは戦えるようになってきている。モリソンがインサイドで存在感を見せ、ライオンズとラべネルもチームにフィット。そして中山は今日見せたように試合を重ねるごとに本格化しつつある。もちろん安藤と田口も健在だ。長いレギュラーシーズンの最後に迎えた正念場、真の実力が問われる。

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