文=小永吉陽子 写真=Getty Images、野口岳彦、WJBL

リオ五輪ではシックスマンとして、ミドルシュートにドライブにとフル回転した髙田真希。自チームでは、バスケ人生初となるキャプテンを務め、転機を迎えたシーズンだった。長年チームの主力として活躍し、日本代表の仲間でもあった藤原有沙、大庭久美子が引退し、司令塔の伊藤恭子が負傷したことで、エースの肩は大きな責任がのしかかったのだ。

そんな中でも平均21.95点、11.9リバウンドと奮闘して、得点とリバウンドの2冠に輝き、ベスト5を受賞したのは、さすが五輪経験者というべき貫禄だった。最終的にはケガ人が復帰してセミファイナルに進出したことに、小嶋ヘッドコーチも「戦力を考えればベスト4は満足」とチームの成長を評価した。

だが、髙田自身は満足していなかった。「意識も技術もまったく足りない」と若返ったチームを斬る。チームを成長させるため、そして自身もさらなるバージョンアップを図るため、チーム改革を決意したシーズン。バスケ人生初のキャプテンとなった髙田真希の1年に、5つのキーワードで迫る。

KEYWORD[1]Wリーグ4強進出
渡嘉敷に対抗し、JX-ENEOS戦を楽しめるのは自分だけ

「セミファイナルではJX(JX-ENEOS)に2連敗。全く及ばず、内容的にも納得いかない試合でした。JXは5人ともすごい選手なので的が絞れなかったです」

「それでも、自分はJX戦を一番の楽しみにしています。JXとウチでは明らかに実力差があるし、対等に戦えなくてもどかしい気持ちはありますが、JXとやることは『vs海外』だと考えているので、ここでやり合えたら国際試合でもやれる手応えになるんです」

「自分のことで言えば、タク(渡嘉敷)を守りながらもそれ以外の役割を引き受けるのはとても大変なこと。でもそういう駆け引きこそがバスケットの醍醐味だし、『次はどうやって攻めよう』とアジャストする面白さを感じながらJXと戦っているのは、タクに1対1でマッチアップできる自分しかいないと思っています。これからもJX戦を純粋に楽しみながら、攻略法を見つけていきたいです」

KEYWORD[2]人生初のキャプテン
キャプテンとしてチーム改革を決意「このままでは勝てない」

「今シーズン(2016-17)は、経験ある選手が抜けたこともあり、周囲からは『大変だね』と言われることが多かったですが、いない選手のことを言っても仕方ありません。そんな中で、これまでバスケをやってきて初のキャプテンをやらせてもらいました。若い選手を引っ張っていくことは初めての経験でしたが、大変だったというよりは自分自身が成長できたと感じたシーズンでした」

「ウチの若い選手たちが『JXとやるのは楽しい』と思えるのはまだ無理かもしれません。でも、私たちはこれまで何度もセミファイナルに出ているし、ファイナルだって一度出ているチームです。それなのに、今シーズンは下位にとりこぼしもあったし、セミファイナルの内容はすごく悪かった。だから若い選手たちにはセミファイナルに来たことだけで満足してほしくない。ここで満足してしまったら上には行けない」

「今、ウチのチームに一番足りないのは技術です。意識改革も必要だけれど、それ以前に技術が圧倒的に足りません。このチームで国際大会の経験をしているのは自分だけ。『このままでは勝てない』ということを、オリンピックを経験した私が伝えていかなければ変われないと思うので、来シーズンは自分の経験を伝えられるキャプテンになることが目標です。来シーズンは一人ひとりの技術をレベルアップさせるところから、練習をやり込みます」

KEYWORD[3]オリンピックでの手応え
今まで以上に速かった日本に相手はついてこられなかった

「オリンピックは、今までに出たどの大会とも比べることができないほど規模が大きく、素晴らしい舞台でした。本当に楽しかったです」

「全体を通してはミドルシュートとドライブインで貢献できました。今まで世界選手権に出ても上位に行くことはできませんでしたが、リオではアメリカ以外なら勝てるんじゃないか、という自信もつきました」

「課題はいっぱいあるんですが、ベスト8に入ることができた要因で言えば、主力は4年前のOQT(オリンピック世界最終予選)で負けた悔しい経験がありますし、アジア選手権からやってきた走るバスケットがフィットして、走りを徹底できたのが勝因だと思います。また、自分たちでスペースを作っていくフリーランスな動きもできるようになりました。走るテンポが今までより速くなったので自分たちもキツかったですが、相手は日本の速攻についてこられなかったので、相当キツそうにやっていましたね。走り勝ちです」

KEYWORD[4]スキルアップへの挑戦
3ポイントをマスターし、『なりたい自分』になる

「オリンピックはこれまでの集大成と考えていたので、終わったら燃え尽きてしまうのかな? と思ったんですけど、そこまでの燃え尽きはなかったです。それよりも、選手としてまだまだ成長できる、もっとうまくなりたい、シュート確率を良くしたい、という新たな目標ができました。そのためには技術的に進歩しないといけないので、今シーズンは3ポイントに重点を置いて練習してきました。リーグの後半あたりから一試合に1本くらいは決められるようになったので、練習の成果は現れてきています」

「ここ数年、ハイポストあたりのオフェンスに攻めづらさを感じていたんですが、そこで3ポイントが打てればプレーの選択肢は増えていきます。3ポイントラインにディフェンスが前に出てくることによって、ハイポストよりも長い距離がある分、スピードで振り切ってドライブもできます。それこそ、タクに3ポイントラインでディフェンスされたらどうやって攻めようかと考えるのはとても楽しい。『なりたい自分』になっている姿を想像しながら練習することが、今の自分のモチベーションですね」

KEYWORD[5]東京オリンピック
1年1年の積み重ねの先に東京がある

「正直、デンソーのチーム状況を考えると、開幕までの準備がとても重要で、その時期に私がチームにいて練習したほうが自信を持ってリーグに臨めるのでは、という思いがすごくあります」

「それでも代表に呼ばれれば行きますし、私が成長できているのは代表あってのことなので、代表で学んでいることをチームに還元したいという思いでやっています。代表選手がいるチームが強くなると思うので、私は代表に居続けなければならないという責任もあります」

「リオの後はモチベーションが上がったので、最終的な目標を東京オリンピックに置いています。でも3年後を見ると長いので、今は先を見ずに、今年のアジアカップを勝つことだけを考えています。そして1年1年の積み重ねが東京に続くようにしたい。今年は新しいヘッドコーチのもとで新しいことを取り入れているので、私自身もしっかり対応しないと選んでもらえない。新たな競争のもとで自分も成長していきたいです」