文=丸山素行 写真=鈴木栄一

ディレイドオフェンスでポゼッションを減らす富山

川崎ブレイブサンダースと富山グラウジーズの金曜ナイトゲーム。城宝匡史とドリュー・ヴァイニーをケガで欠く富山だったが、デクスター・ピットマンがインサイドを支配し、サム・ウィラード、岡田優が攻守に力を見せ、リーグ首位の川崎から金星を挙げた。

「川崎さんは得点能力に優れたチーム、またトランジションに優れたチームということを踏まえた上でそのペースに付き合ってはいけないと思い、スローダウンをするゲームプランを選んだ」と富山のヘッドコーチ、ボブ・ナッシュは語った。

その富山は試合開始からわずか50秒でタイムアウトを取る。「ポイントガードが早いペースで試合をしたがっていたが、2つのオフェンスポゼッションで何も生まれなかったところで、ゲーム前の指示通りにポゼッションを減らす努力をしなければいけないということを再確認した」とその意図を説明。

ここまでして戦術を徹底させた意味はあった。アグレッシブなディフェンスが裏目となり第1クォーターだけで10本のフリースローを与えてしまうが、川崎を勢いに乗せることなく、岡田優の2本連続3ポイントシュートもあり食らい付く。

第2クォーターに入るとピットマンとウィラードがインサイドで力を見せる。ニック・ファジーカスから2つ目のファウルを誘いコートから追い出すと制空権を支配、ピットマンが7得点、ウィラードが6得点4オフェンスリバウンド3アシストを挙げ追い上げる。

それでも試合巧者ぶりを発揮しリードを守っていた川崎だが、残り3分を切ったところでアクシデントに見舞われる。辻直人がシュートチェックにいったところで左足首を痛めて試合続行不可能に。その後連続得点を許し37-35と川崎2点のリードで前半を終えた。

川崎は辻が足首を痛めてアウト、推進力を欠く一因に

第3クォーター、ここまで6得点と沈黙していたファジーカスに13得点を奪われるも、富山はズレができるまでボールを回すチームオフェンスの中から岡田が高確率でシュートを沈め10得点を挙げ、一歩も引かない。

その後はシーソーゲームになるも、オン・ザ・コート「2」になった第4クォーターに富山は再びピットマンとウィラードがインサイドで強みを発揮。残り7分を切ったところでピットマンの連続得点が決まり、65-64とついに逆転する。

その後は互いに得点を取り合うシーソーゲームとなったが、富山のパッシングゲームが徐々に川崎を上回る。パスをよく回しインサイドで起点を作り、落ち着いてチームオフェンスを遂行した。ここで違いを見せたのがウィラードで、ショットクロックが残り少なくなっても正確なパスを供給して、最終クォーターだけで6つのアシストを記録した。

残り2分13秒、ウィラードのブロックショットから岡田が得点につなげ、76-70とこの日最大のリードを奪った。川崎も猛追を見せるが、ピットマンがディフェンスに囲まれながらもねじ込んだシュートが決定打に。ファウルゲームを乗り切った富山が83-80でアップセットを果たした。

ウィラードがリーグ2人目のトリプル・ダブルを達成

ウィラードが17得点16リバウンド(8オフェンスリバウンド)10アシストと宇都直輝に続いて2人目のトリプル・ダブルを達成し、ピットマンは23得点12リバウンド(5オフェンスリバウンド)とインサイドを支配した。川崎の34を上回る46というペイントエリアでの得点が、インサイドでイニシアチブを取ったことを物語る。

シーズンハイの24得点を挙げた岡田は「すごく大きな勝利。城宝さんのスコア分をそのまま取る意識はなかったですが、チームに貢献することがスコアの部分だという意識は強く持って挑みました」と語った。

ナッシュヘッドコーチは「インサイドディフェンスを固めてくる中で岡田がショットを多く決めてくれた。スタッツに表れているようにウィラードもピットマンも素晴らしく、3人の選手が非常に素晴らしいパフォーマンスをした」と3人を称賛した。

敗れた北卓也ヘッドコーチは「83点取られてますし、第4クォーターに28点取られてますので、ウチとしてはディフェンスですね。やられてはいけないところで得点を取られている印象を受けました。ニックのファウルトラブルもあり、ピットマンをなかなか止められなかった」と敗因を語った。

「攻め急いでるというか、周りが見えていないというか、そういうところでのミスがあったと思います。ポジションを取らないでパスしてカットされたり、こんなはずじゃないという展開だったのでそれで焦ったのはあったと思います」とオフェンス面での問題点を指摘した。

「オフェンスが崩れたのは辻がいなくなったとのは関係ない」と語るも、結果を見れば辻離脱の影響は小さくなかったはずだ。

富山は秋田ノーザンハピネッツ、横浜ビー・コルセアーズとのゲーム差を0.5に縮め、残留プレーオフから抜け出せるチャンスを迎えた。一方の川崎は腰の怪我を治し、調子を上げていた辻が負傷し、リーグ首位でのチャンピオンシップに暗雲が立ち込めた。