アイラ・ブラウン

琉球が終盤に見せた怒涛の反撃、鮮やかな逆転勝利

5月5日、琉球ゴールデンキングスがチャンピオンシップのセミファイナルGAME2でアルバルク東京と対戦。序盤から互いに譲らない守り合いとなる中、第4クォーターにA東京が見せたわずかな綻びを的確に突いた琉球が、62-56で競り勝った。

これでシリーズは1勝1敗。ファイナル進出を決める運命のGAME3は火曜日に行われる。

琉球の28-27と予想通りのロースコアで前半を終えた後、第3クォーターにA東京は田中大貴がフィールドゴール3本中3本成功とさすがのプレーを見せると、チーム全体でも13本中8本成功と高確率でシュートを決めて流れを引き寄せる。第4クォーター早々には、安藤誓哉がセカンドチャンスから技ありのレイアップを沈め48-40と突き放す。

残り6分半でA東京は7点をリードしていたが、アイラ・ブラウンの3ポイントシュートを機に琉球が反撃開始。インサイドアタックによる連続得点で追い上げ、残り2分半に橋本竜馬が激しい守備からスティールに成功、須田侑太郎が値千金の3ポイントシュートを沈める。さらに田代直希のペネイトレイトと怒涛の11連続得点で、残り2分で56-52と試合をひっくり返した。

ここからアレックス・カークのダンクを浴びて一度は追い付かれるも、ホームの大歓声に後押しされる琉球の勢いは止まらない。残り1分にケビン・ジョーンズがセカンドチャンスから得点し再びリード。残り20秒からA東京はファウルゲームを仕掛けるも、アンスポーツマンファウルを取られて万事休すとなった。

須田侑太郎

「自分たちの力というより、ホームの力を借りている」

琉球の佐々宜央ヘッドコーチは「昨日、僕らがファストブレイクでターンオーバー。ああいうミスを絶対にしてはいけないですが、今日はA東京さんにそれがありました」と、勝敗を分けたポイントを振り返る。

ただ、ターンオーバーの数自体は琉球の12に対し、A東京は9と自分たちの方が多く「僕らもミスをやりすぎています。これを続けてしまったらGAME3で負けます。ディフェンスで我慢をする僕ららしい戦いはできましたが、オフェンスで課題は山積みです」とオフェンスの遂行力にはいまだ満足していない。

「1勝してもファイナルには行けないです。まだ何も成し遂げていない」と気を引き締める佐々だが、「もう1試合、沖縄で戦える喜びはあります」と、今日も大きな支えとなったファンの声援を自分たちの武器にできることに絶大な自信を見せる。

「相手がオフェンスで安易なプレーをしてしまう。いつも入るようなシュートが入らなくなる。そういう場面を作り出せるのがホームの力。自分たちの力というより、ホームの力を借りて、ミスを誘えている感覚です」

試合前の紹介で最後に自分の名前が呼ばれた後、ベンチ登録から外れているスコット・モリソン、怪我でリハビリ中のジョシュ・スコットを含めたスタッフ全員で選手たちが待ち構える輪の中に行き、文字通りチーム全員で円陣を組んだ理由をこう語る。「チーム一体というよりファンの皆さんと一緒ですということ。もう一段階上の声援をいただくためにも、チームというより沖縄のファミリーを表現したかった。特に第4クォーターの声援は本当にすごかったです。GAME3も会場のボルデージを上げて一緒に戦いたい」

「優勝するのに必要なすべてのピースが揃っている」

昨シーズンから続いたチャンピオンシップの連勝が8で止まったA東京の指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチは「最後の最後までどっちに転ぶのか分からなかったが、勝負どころでオフェンスリバウンドを取られてしまった。我々は逆に良いオフェンスを構築することができなかった」と敗因を分析する。

「タフなゲームで、タフな負けだが、切り替えるしかない。GAME3にすべてを捧げるための準備をしていきたい」と、火曜日の大一番への心境を語っている。

ファイナル進出を目指す思いは両チームともに同じ。GAME3が再び激しいぶつかり合いとなることは間違いない。この試合、ディフェンスで奮闘し、第4クォーターには7得点を挙げたアイラ・ブラウンも、絶対に譲れない気持ちを持っている。

今シーズンが日本で8年目のブラウンはbjリーグ時代の富山グラウジーズ、NBLの日立サンロッカーズ東京と上位の成績を残しながら、あと一歩でファイナル進出に届かなかった。だからこそ、「ファイナルのコートに立つことをずっと夢を見てきた。そのためなら車にひかれようが、壁に叩きつけられようが、自分自身がやれることを一生懸命やるだけだ」と意気込みを語る。

「キングスの選手はブルドックのような闘志を持ち、負けず嫌いが集まったチーム。互いを信頼し、ハードに戦う。優勝するのに必要なすべてのピースがこのチームに揃っている。これまで何度も近い場所にいたが、今が最も近い場所にいる」と今の実力に確固たる自信を持っている。

中1日を挟んだ第3戦、フィジカルもメンタルも大きく消耗している中で、どこまで最後の力を振り絞れるのか。「悔いなく100%すべてをコートに置くこと。まずはそこからだ」とブラウンが語ったように、シンプルではあるが、どちらがより強い気持ちでプレーを続けられるのかが勝敗を分けるポイントになる。