劣勢を覆し、千葉に勝機を呼び込む殊勲の働き
チャンピオンシップのセミファイナル第1戦、千葉ジェッツは栃木ブレックスをホームに迎えた。レギュラーシーズンの戦績は3勝3敗、一つのミスが命取りになる実力伯仲の一戦は、出だしから栃木の勢いに圧倒されてビハインドを背負う展開に。何とか踏み留まって第1クォーターを15-18と3点ビハインドでまとめた。
2-9とされた開始3分半、早々に投入されてチームに勢いを与えたのが田口成浩だ。スタートの石井講祐よりフィジカルなディフェンスで栃木の勢いを食い止めると、第2クォーターに反撃に転じる。まずは3ポイントシュートを打つ際に飛び込んできた渡邉裕規のファウルを誘い、フリースロー3本を確実に決めて同点に追い付く。その後も思い切りの良いシュートを立て続けに決めて、千葉にリズムをもたらした。
レギュラーシーズン終盤に調子を上げている田口は、「本当に気負いなく、先週の良いリズムのまま思いっきりやるっていうマインドで入れたので、シュートのタッチは悪くなかったですし、足もそこまで重い感じじゃなかったです」と自身の好調ぶりを語る。
ただ、第1クォーターに栃木の流れを止めたのも、第2クォーターにチームに勢いをもたらしたのも、自分の仕事ではないと謙遜する。オフェンスについては「基本的に自分はスクリーンをかけてもらったり、味方の選手に助けられているので」と、またディフェンスは「たまたまシュートが外れている面がある。自分が止めたとか一切思ってないです」と語る。
ただ、Bリーグ3年目にして初めて経験するチャンピオンシップの戦いに、充実感を得ているのは間違いない。「栃木さんとやる時は、いつも疲れるというか気を張るじゃないですけど、身体のコンタクトが激しいのでより疲れを感じます。終わった後もそうですし、タイムアウトの時もすごく感じました」
実際、第2クォーターのオフィシャルタイムアウトの時点で田口はプレータイムは10分あまり。それでも肩で息する状態だった。その時のことを田口は「死ぬかと思いました。ヤバかったです本当に(笑)。倒れ込むような、それだけハードということです」と語る。
殊勲の働きにも驕らず「もう一回そこの原点に」
この試合での田口は、千葉でジョシュ・ダンカンに次ぐ13得点を記録。フィジカルなディフェンスに加えてオフェンスでも結果を出したことで、大野篤史ヘッドコーチからも「シゲには本当に助けてもらいました」と手放しで評価された。
「ただし」と大野ヘッドコーチは続ける。「後半15点開いたときに、自分たちの主導権を逃がさないようにしないといけないところを、ディフェンスからリラックスして逃がしてしまって、どっちに転ぶか分からないゲームをしてしまったので、そこはもうひと押しってところでシゲを出したんですけど、ディフェンスが甘かったので速攻で代えて、ちょっと言いました(笑)」
このことを田口に尋ねると、「終わったら近づいて来て、これは言われるヤツだと思って目線を合わせずにお腹を見ていたら『ベシ』(お腹を軽くチョップ)ってやられました(笑)」と苦笑い。それでもベンチから24分半のプレータイムを得たのは信頼されている何よりの証だ。
「今日最後に代わって出た時に自分のところでやられてしまったので、そこは反省点です。ああいうのがあればもう出れなくなるので、もう一回そこの原点に、自分が出るためには何が必要かを、明日しっかりマインドセットして取り組みます」と、田口はどこまでも謙虚に語る。
今日の第2戦も激戦必至。ディフェンスの強度が高い消耗戦となれば、セカンドユニットを含めた総合力が問われる。第1戦はダンカンと田口、西村文男に原修太と、ベンチから出た選手がもぎ取った勝利だった。誰がコートに出ても遜色のないパフォーマンスを見せ、プレーの強度と積極性を40分間保つ。田口成浩は、そんな千葉の武器を支える存在になった。