ジャ・モラント

起点となるドライブのスペースを消されると手詰まりに

東カンファレンス1位のキャバリアーズと西カンファレンス2位のグリズリーズ。東西トップ同士であり、得点でリーグ1位と2位の直接対決でもあった注目の一戦は、エースのドノバン・ミッチェルを欠きながらも常に先手を取ったキャブズが、最大25点差をつけて圧勝しました。

両チームのヘッドコーチ、キャブズのケニー・アトキンソンとグリズリーズのタイラー・ジェンキンスは、2013年から3シーズンをホークスのアシスタントコーチとしてともに過ごし、東カンファレンスの首位になっています。似たようなチーム哲学を持っており、多くの選手を起用してインテンシティを保ちながらハードワークを欠かさず、個人能力で押すよりもチーム全体でバランスよくアタックすることを好みます。また、試合展開に応じた柔軟な選手起用をしてくる部分も共通しています。

この試合ではグリズリーズがトランジションで7点、セカンドチャンスで2点、スティールで2つ上回りました。しかし、ハーフコートオフェンスの質には大きな違いがあり、キャブズが華麗なコンビプレーから的確にスペースを活用し次々にイージーショットを作り7人が2桁得点を奪ったのに対し、グリズリーズはキャブズのゾーンに苦しみ、さらにドライブからのキックアウト先を読まれてターンオーバーが増えるなど連携が封じられ、ジャ・モラントの個人突破しか打開する手段がありませんでした。

グリズリーズはドライブの回数がリーグで最も多いチームですが、シュートやファウルドローで得点に繋げる成功率は高くありません。実は2シーズン前はドライブの回数は少なくても成功率はリーグトップでした。当時はチームで形を作ってモラントやデズモンド・ベインに効果的にフィニッシュさせるオフェンスでしたが、今はドライブを起点にして展開していくオフェンスへとシフトしています。そのためゾーンでドライブに行くスペースを消されると形を作れなくなります。

弱点をキャブズに突かれての敗戦となりましたが、ここにプレーオフに向けたグリズリーズの課題があります。本来はオフェンスの多彩さがグリズリーズの強みですが、分析と対策が進むプレーオフでは起点を徹底的に潰されてしまう可能性が高く、そうなるとモラントが個人技で点を取る以外の選択肢が欲しいところ。この試合はモラントが44得点の大活躍を見せながら、チームとしては攻め手を欠いての敗戦となりました。

開幕からプレータイムシェアをしてきたグリズリーズですが、2月以降は10勝9敗と苦しんでいることもあり、モラントとベインのプレータイムが長くなってきました。それはオフェンス面の課題が改善できず個人技に頼る部分が次第に大きくなってきたことでもあります。残り15試合で『対策へのアジャスト』というプレーオフで求められる準備を進めなければいけません。