文・写真=鈴木栄一

詰め寄られても突き放す、ファジーカスの得点で勝ち切る

4月8日、川崎ブレイブサンダースがホームで三遠ネオフェニックスと対戦。攻守ともに要所をしっかり締めるさすがの試合運びを見せた川崎が72-63と、前日に続き勝利した。

試合は第1クォーターでともにアウトサイドのシュートが入らず15-15と重い展開でのスタートとなるが、第2クォーターに入ると、川崎は本日29得点16リバウンド4ブロックと大暴れのニック・ファジーカス、そして辻直人の大黒柱2人を軸に、セカンドユニットのメンバーもバランス良く得点。35-27とリードを奪って前半を終える。

第3クォーター、川崎は最初のポゼッションで辻直人が3ポイントシュートを沈めて引き離しにかかる。しかし、三遠はここから太田敦也、岡田慎吾ら日本人選手の奮闘で追い上げると、残り約4分には鈴木達也の3ポイントシュートで1点差に迫った。だが、川崎はここからファジーカスが得点を重ね、7点リードでこのクォーターを終える。

第4クォーター、三遠も粘りを見せ、田渡修人とロバート・ドジャーの連続3ポイントシュートで、残り約6分で3点差に詰め寄る。それでも川崎は再びファジーカスが得点して嫌な流れを切るとさらに藤井祐眞の3ポイントシュートで突き放し、その後も安定の試合運びで逃げ切った。

ブレイクを出すスタイルながらターンオーバーわずか5

試合後にはすでに先週のアウェーゲームで決めていた中地区優勝のセレモニーをホームのファンの前であらためて実施した。同地区内では2位以下に圧倒的な大差を付けている川崎だが、三遠とは今節開始前の時点で1勝3敗と負け越していた。今回の2連戦がレギュラーシーズンで最後の対戦ということもあり、北卓也ヘッドコーチ、そして選手たちも揃って「連勝で直接対決の成績をタイにしたい」との強い思いを持って臨み、目標をしっかり達成した。

北ヘッドコーチは、「昨日、今日の収穫はターンオーバーが少なかったこと、そこに尽きると思います。昨日は相手のターンオーバーを誘うディフェンスをし、ウチはターンオーバーが少なかった。今日はお互いにちょっと前半、シュート確率が上がらないゲームになりましたが、ターンオーバーでこちらが5の相手が12。良いディフェンスから良いオフェンスにつなげられました」と振り返る。

川崎のターンオーバーは昨日が3、今日が5と極めて少ない。北ヘッドコーチは「ウチはブレイクを出していくスタイルで、ターンオーバーが増えてしまう面はあるため、10個くらいは容認しています。この2日間は、不用意なミスが通常なら1試合で2~3個、多い時は5~6個あるのが、とても少なかったです」と続けている。

指揮官はチャンピオンシップ決勝の「一発勝負」を見据える

この試合、第4クォーターに入っても永吉佑也、野本建吾とセカンドユニットのメンバーが出場し続け、堅実なプレーで勝利に貢献。チーム全体の底上げが着実に進んでいることを示した。

この2選手のパフォーマンスについて、指揮官はこう語る。「永吉はディフェンスでしっかり頑張ってくれますし、シュートが日に日に向上しています。本当に計算できるプレーヤーになってきました。野本はすこしポカもありますが、高さ(200cm)があってアグレッブにボールをプッシュできることで、流れを変えられる要素を持っています。彼らが入った時、オフェンスで点が取れない時はありますが、ディフェンスがしっかりしているので点を取られていない。そこで僕も我慢しながらプレータイムを与えています」と、チャンピオンシップを見据えたベンチメンバーの成長にも手応えを感じている。さらには欠場が続いているライアン・スパングラーについても「詳しいことは言えませんが、今月中には復帰できると思います」と明かした。

ただ、チャンピオンシップに向けては何よりもプレーの精度を高めることを求めていく。それは以下の理由からだ。

「全体のレベルアップに加え、精度の高いプレーを要求していきたい。なぜかと言うと一発勝負となるからです。一発勝負では一つのミスが命取りになります。今日も第3クォーターで不用意なミスが何本か続いている。ミスが増えると、負ける確率も少しずつ高くなっていきます」

一方、地区王者の川崎を相手に、シーズン序盤に続いてのアップセットを起こすことはできなかった三遠の藤田弘輝ヘッドコーチは、「あと一歩が足りなかった試合でした。ディフェンスは良かったですが、川崎さんは嫌な時間帯で良いパス回しからシュートを決めきる力がある。オフェンスの質が非常に高いと感じました」と総括。

また、約1カ月の離脱から先週に復帰したロバート・ドジャーについて「チームの柱なので、帰って来たことで精神的な安心感はあります。ただ、まだコンディションが戻ってきつつある中で、チームにフィットさせているところ。チルドレスが加入した当初と同じ印象です」と語る。ドジャーのコンディションが戻り、早く本来の連携を構築することが、地区2位のキープ、そしてチャンピオンシップ出場へのカギとなる。