文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

ディフェンスへの意識を高め『完全無欠』の選手へ

川崎ブレイブサンダースと三遠ネオフェニックスの金曜ナイトゲーム。1勝3敗と負け越している相手との対戦で頼もしい男が完全復活を遂げた。要所での3ポイントシュートでダメージを与え、ピック&ロールから完璧なノーマークを演出しチームを勝利に導いた辻直人だ。

腰を痛め復帰後も思うような結果がなかなか出せなかった辻だが「やっていて痛みを感じることは少なくなって、自分が思ったとおりに体も反応してくれるようになってきた」と全快宣言が飛び出した。

さらにただ回復しただけではなく、以前よりも成長して辻は帰ってきた。「今までディフェンスよりオフェンスでチームを引っ張ろうと思っていたので、ディフェンスでみんなに助けてもらいながらという場面が多かったです。今は意識を変えてディフェンスで手を抜かず、全力で頑張ろうとやってます」

激しいディフェンスからターンオーバーを誘発し、それを確実に得点につなげ勝利した昨日の試合。辻のディフェンスへの意識はシーズンハイの4スティールという数字にも表れた。

代表合宿を経て、苦労しながらもずっと取り組んできたピック&ロールにも手応えを感じている。「代表でもピック&ロールの重要性は高く、なおかつ求められるものが一つひとつ高いので、さらに磨きがかかってきました。ピックから3ポイントも打てるようになってきて、オフェンス面でも成長してると思います」

4本の3ポイントシュートを含む16得点を挙げ好調をアピールした辻だが、復調のきっかけとなったのは3月18日のシーホース三河戦だったと言う。「自分なりに思い切ったプレーができましたし、あそこまでシュートを打ったのも今シーズン初だと思うので、負けはしましたけど自信になりました」。この試合で放ったシュートは今シーズン最多の23本。辻らしい思い切りの良さを、ここで取り戻した。

優勝への覚悟の表れ「大事なキーマンじゃないですか」

川崎は西地区優勝を早々に果たし、チャンピオンシップ出場が決まっている。Bリーグ初代チャンピオンに向け辻は自らをキーマンに挙げる。「僕がシュートの調子が悪くてみんなの足を引っ張るということにもなりかねないですし、逆にチームを勢いづかせることもできます。ディフェンスでチームを引っ張ることも意識にあるので、全部を出せたら優勝に近付けると思います。大事なキーマンじゃないですか」

自分をキーマンに挙げることで、その責任に真っ向から向き合う覚悟だ。

チャンピオンシップでの戦いはブースターの後押しも必要になってくる。ただ会場の空気を盛り上げるにはそれ相応のプレーが求められる。そして辻は抜群の視野から生み出されるアシストで観客を魅了することができる数少ないプレーヤーだ。昨日の試合でも完璧なノーマークを作り出すパスを何本も供給し、そのパスに「おおっ」と観客は声を上げホームに一体感を作り出した。

辻の最大の魅力はそういったエンターテインメント性を兼ね備えているところではないだろうか。「ノッてる時」に見せるおどけたポーズのパフォーマンスに観客はテンションを上げ、ベンチも自然と盛り上がる。

今日の第2戦でも、「僕のプレー後に相手がタイムアウトをとった時が一番チャンスなので、その時はバシっと決まっているので楽しみにしてください」と意欲十分。「そこじゃないと僕がマークする選手はだいたい走ってるので」としっかり笑いを取った。

Bリーグのミッションにもあるように『エンターテイメント性』は、バスケットボールをもっとメジャーにしていくために重要な要素となる。そういった意味でもまずは辻のプレーに注目してみてはいかがだろうか。