ドンチッチ放出後39.3分出場とフル回転のエースが離脱
現地3月3日のマーベリックスvsキングスの第1クォーター残り2分半、カイリー・アービングはディフェンス2人の間をトップスピードで突破してシュートを狙った。2人の間をすり抜ける際の接触でバランスを崩し、次に踏み出した一歩で左膝に過度な負荷がかかり、そのままカイリーはコートに倒れた。
助け起こされても左膝に体重を掛けることができず、重傷なのは明らかだったが、肩を貸したアンソニー・デイビスにカイリーが求めた行き先はロッカールームではなくフリースローラインだった。
ダラスのファンがスタンディングオベーションを、そしてMVPコールを送る中、カイリーは2本のフリースローをスイッシュで決めてロッカールームに下がった。試合後、マブスのヘッドコーチを務めるジェイソン・キッドは「彼のケガが軽傷で済むことを願っている」と語ったが、その願いは叶わず。診断の結果は左膝前十字靭帯断裂の大ケガだった。
これで少なくともカイリーの今シーズンは終了となる。ここまで50試合に出場して24.7得点、4.8アシストを記録していた彼の離脱により、マブスの今シーズンもここで終わることになるだろう。『ESPN』によれば、ルカ・ドンチッチ放出後の10試合での平均出場時間は39.3分で、これは直近の1カ月でNBAで最も長いプレータイム。ケガが決して少なくない32歳のカイリーにとっては大きすぎる負担だったと言わざるを得ない。
今回のケガはカイリーにとってビジネス面でも非常に厳しいものとなる。マブスと3年1億2000万ドル(約180億円)の契約を結んでおり、今はその2年目。最終年はプレーヤーオプションで、これを破棄して新たな契約を結ぶ予定だった。
今の契約を結んだのはカイリーがマブスに加入した数カ月後の2023年7月。この時点ではカイリーの技術はともかくどれだけコンスタントにプレーできるか、リーダーシップを発揮できるかの点で懸念があったために3年契約となったが、それからの1年半でカイリーは課題に対し満点とも言うべき回答を示し、良い契約を得られるはずだった。
しかし、復帰までに約1年、完全なパフォーマンスを取り戻すにはもう1年を要すると言われる重傷を負ってしまったことで、契約延長には至るとしても、条件面でカイリー側が譲歩しなければならない可能性が高い。
それでもカイリーは気丈だ。SNSのライブ配信でファンに向けて「ACL断裂から48時間も経っていないけど、メンタルやスピリチュアル、感情の面での回復はもう始まっている。本当に辛いし痛いけど、僕は大丈夫だとみんなに伝えたい。信じられないほどたくさんの人から励ましのメッセージをもらっているんだ。感激しているし、支えになる」と語った。
また、数週間前までカイリーとコンビを組んでいたルカ・ドンチッチは2人の写真とともに「彼はもっと強くなって帰ってくる」とのメッセージをSNSに投稿している。