ダイソン・ダニエルズの値千金のボール奪取で勝負アリ
グリズリーズvsホークスは第3クォーターまで接戦が続くも、第4クォーターにザック・イディーとジェイレン・ウェルズのルーキーコンビによる連続得点で、グリズリーズがこの試合で初めて2桁のリードを奪った。デズモンド・ベインが第3クォーターまでに35得点と絶好調で、そのベインがベンチで休んでいた時間帯にルーキーコンビの活躍があり、122-113とリードした残り7分でベインがコートに戻って来た時点で、グリズリーズの勝ちは固いと思われた。
しかし、若いタレントを組み合わせる多彩な戦い方ができるグリズリーズにも弱点がないわけではない。スコッティ・ピッペンJr.が調子を崩している状況で、ジャ・モラントも河村勇輝もケガで不在で、プレーメーカーはルーク・ケナードが担っていた。本職のポイントガードではないケナードをベインがサポートすることで2人とも負荷が大きかった。
あきらめずに食らい付くホークスに対し、グリズリーズはケナードとベインにオフェンスが偏る状況に。ボールシェアができなくなれば、守る側は的を絞りやすい。ホークスのエースキラー、ダイソン・ダニエルズは、第3クォーターまでベインを止められなかった分を取り戻すべく、疲れを見せ始めたベインを決死の形相で追い込んだ。
ベインは第4クォーターのラスト7分の出場でフィールドゴール4本を放ってすべて外し無得点。一方のホークスはトレイ・ヤングが第4クォーターは無得点に終わったが、これは今シーズンの彼の方法論でもある。自分にマークを引き付けてパスをさばき、チームメートを波に乗せる。こうしてホークスは崖っぷちから押し返し、残り1分半で同点に追い付いた。
残り30秒、トレイ・ヤングが相手守備の密集地帯にドライブで飛び込み、強引にシュートに行くと見せかけて空中で向きを変えて外で待つキャリス・ルバートにキックアウトのパスを送る。だが、ルバートはこの3ポイントシュートを決められず、ポゼッションはグリズリーズへ。
メンフィスのファンがゲームウィナーを期待して立ち上がる中、ボールを託されたのはベインだったが、アタックに行こうと加速する際にボールをダニエルズに突かれて痛恨のターンオーバーに。ダニエルズはすぐさま前線のルバートにパスを出す。若いウェルズが全速力で守備に戻っていたが、ルバートはこれを冷静にユーロステップでかわし、試合終了のブザーと同時にゴール下のシュートを沈めた。
当たっていないベインに最後まで頼ってしまったグリズリーズと、ボールをシェアしたホークス。それでもゲームウィナーを決めたルバートは、コート上のインタビューで「僕はその前にトレイからのアシストを無駄にしていた。あれは絶対に決めなきゃいけないシュートだった」と反省しきりだったが、その背後から大喜びのトレイがペットボトルの水をぶちまける。
ルバートは笑顔でこう続けた。「もう一回チャンスがあって良かった。今度はダイソンが僕にパスをくれた。僕たちは勝利を必要としていた。その勝利をみんなでもぎ取ることができて良かった」
直近の6試合で5敗と失速していたホークスにとって、プレーオフ戦線で踏ん張るための士気を盛り立てる1勝となった。