ザック・ラビーン

チームプレーが機能「全員でゲームの流れを読むんだ」

ザック・ラビーンはブルズの『ビッグ3』の機能不全の象徴だった。デマー・デローザンは勝負強さを発揮し、ニコラ・ブーチェビッチも身体を張ってゴール下を支配したが、ラビーンはケガ続き。昨シーズンは右足のケガで手術が必要になり、25試合にしか出場できず。昨夏にデローザンが新天地キングスと契約したことで『ビッグ3』は解体に。そして先月、ラビーンはそのキングスへとトレードされた。

今シーズン前半戦のラビーンはコンスタントにプレーできるコンディションを取り戻したが、全盛期のパフォーマンスを発揮していたわけではない。ところがキングスに移籍して数週間でキャリア初の週間最優秀選手に選ばれるのだから、バスケは分からない。

キングスに来て最初の1カ月、9試合に出場して平均36.2分の出場で22.9得点、3.8リバウンド、4.2アシスト。現地2月24日のホーネッツ戦ではシーズンハイの42得点を挙げた。サクラメントのファンの前で鮮烈なパフォーマンスを見せたラビーンは「対戦相手として来ていた時から、このアリーナの熱気は気に入っていたんだ。この雰囲気が僕の背中を押してくれた」とコメントし、キングスのファンを喜ばせた。

週間最優秀選手の受賞が決まった翌日となる現地3月3日には敵地でのマーベリックス戦で22得点を挙げ、122-98の快勝に貢献した。22得点は突出した数字ではないが、フィールドゴール12本中8本成功、3ポイントシュートは5本中4本成功と効率良く得点を重ねた。

試合後の会見で「これだけ楽に勝てたのはカイリーのケガが影響していると思う。彼のケガが軽傷で済むことを願うよ」と、左膝を痛めて交代したカイリー・アービングを気遣った。カイリーは自分で立ち上がることができなかったが、仲間に支えられてフリースローを放ち、マブスファンのMVPコールを浴びながらコートを去っている。

「だけどケガも試合の一部だ。こういう時は残された選手が奮起するものだから、僕らは全力でプレーし続けた」と、自らも何度もケガに見舞われてきたラビーンは言う。

キングスもドマンタス・サボニスをケガで欠いているが、チーム全体が効率の良いプレーを心掛けて司令塔不在となったマブスを圧倒した。そのオフェンスを引っ張ったのがラビーンで、前述の通り的確なプレー選択で効率良く得点を奪っていった。

「ボールシェアが上手くいっている。それはオフェンスより前にまずディフェンスで連携が取れていることが大きい。お互いに声を掛け合って良い守備をして、そこから攻撃に転じる。守備で協力できているから攻撃でもボールをシェアできる」とラビーンは語る。

加入当初は噛み合わない部分が大きかったが、もともとキングスのオフェンスを仕切っていたディアロン・フォックスが抜けたのだから、それは仕方ないこと。「最初から上手くいけば一番良いけど、そうはいかない。映像を見て研究もするけど、やっぱりリアルな試合を重ねることが理解を深めるには一番の方法だ。何試合かこなすうちにコート上で経験したことが僕にとっては役に立った」

「ボールを動かしてオープンになっている選手を見つける。必要に応じてタフショットを決めたりアイソレーションを仕掛けるけど、その前の段階では全員でゲームの流れを読むことが必要だし、ここ数試合はそれが上手く機能している」

ラビーンはケガの連鎖からようやく抜け出し、新たなチームでまだ連携は不十分だが、それだけにチームプレーの意識を高めることでオフェンスが上手く噛み合っている。そうやって手にした週間最優秀選手の感想を問われてラビーンはこう答えた。

「僕にとっては大きな意味がある。認められるのはいつだって良いことだからね。そしてシステムに慣れるのを助けてくれたチームとコーチに感謝したい。僕たちは協力して勝利を手にした。それには本当に大きな意味があると思っているよ」