緊張から解き放たれた熊本ヴォルターズ、群馬との第2戦を制し悲願のB1昇格へ王手

2019/04/29
Bリーグ&国内
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熊本ヴォルターズ

フィジカルなディフェンスの基本に返ってリベンジ

B2プレーオフは来シーズンのB1ライセンスを持つ熊本ヴォルターズと島根スサノオマジック、持たない信州ブレイブウォリアーズと群馬クレインサンダーズという4チームで争われ、優勝チームと昇格チームが一致しない歪な戦いになっている。

熊本vs群馬の第1戦は、ライセンスを持たずに『B2優勝』だけを純粋に目指す群馬が先勝した。昇格という最大の目標を前に緊張感に包まれたか、第1戦ではディフェンス、リバウンド、ターンオーバーといったハードワークを求められる部分で完敗した熊本だったが、負けられない第2戦で見事なカムバックを見せた。

立ち上がりから熊本のガード陣がハーフライン手前から激しくプレッシャーをかけて群馬のオフェンスを組み立ての段階から防ぎ、スティールからの速攻で先手を奪うと、群馬は早々にタイムアウトを請求することに。試合後の会見で保田尭之ヘッドコーチが「群馬に先にタイムアウトを取らせる展開にしたかった」と語ったように、フィジカルなディフェンスで先手を奪おうとした熊本のゲームプランが成功する。

第1戦ではB2得点王のトーマス・ケネディと佐藤文哉に計51得点を奪われていたが、「特定の選手を気にするのではなく、全員がそれぞれのマッチアップで戦うことを徹底する」ことを重視。ボール運びからプレッシャーをかけることでオフェンスを組み立てることすら許さず、さらにこのフィジカルなディフェンスに苛立った群馬の選手が熱くなってしまい、テクニカルファウルもコールされるなど第1クォーターは一方的な熊本ペースになり、26-12と大きなリードを得た。

古野拓巳

古野拓巳、3ポイントシュート連発で試合を決める

熊本もすべてが上手くいったわけではない。レイアップを何本もミスし、ターンオーバーも喫し、さらに群馬がディフェンスをゾーンに変更するとインサイドを防がれ、そして前半10本打った3ポイントシュートはわずか1本しか決まらなかった。またスティールやリバウンドで奮闘していた福田真生は2回のファウルでベンチに下がり、ポイントガードの古野拓巳は膝に手を当てて疲れた様子も見せるなど、試合開始から続けていたハードなディフェンスは熊本のスタミナを奪っていた。

結果的に第2クォーターの得点は熊本12点、群馬6点とどちらもオフェンスが構成できなかった。お互いのヘッドコーチがオフェンスの出来に目をつぶってでもエネルギーを持ってディフェンスに取り組むことを重視し、疲れの見えるスターターに代えてベンチメンバーを起用したため、お互いにフィールドゴール成功率が30%にも満たない、38-18と超ロースコアの前半となった。

群馬は20点のビハインドがあるとはいえ、熊本のシュートも決まっておらず、しかも激しいディフェンスでスタミナも消費しており、チャンスもあると思われたが、熊本の古野が一人で試合を決めてしまう。後半開始1分半、群馬のディフェンスに追い込まれショットクロックぎりぎりになると、ドライブでディフェンスのバランスを崩し、ステップバックして3ポイントラインの外に戻ってのタフなシュートを沈める。これでタッチをつかんだのか、パスよりも自ら打つことを選択し、第3クォーターだけで3ポイントシュート5本を決め、最大32点差まで広げた。

前半はお互いがディフェンスで勝負していた中で「チームとしてリバウンドを取れていたので、強引でも良いからシュートで終わろう」としたキャプテンの強気なシュートは、負ければ悲願のB1昇格の夢が遠のくところを踏み留まらせた。

小林慎太郎

熊本の象徴、小林慎太郎が土壇場で戦線復帰

この大量リードに盛り上がる熊本のファンには最後にもう一つのサプライズプレゼントがあった。2013年にチーム立ち上げから在籍し、ミスターヴォルターズと呼ばれる小林慎太郎が昨年10月に負った左膝十字靱帯断裂の大ケガからカムバックしたのである。試合が決定づけられた時間だったため、熊本の選手たちは小林にパスを回し続ける。残り15秒で小林は、この試合最後の得点となる3ポイントシュートを見事に決めた。

大量リードがもたらした出場機会と得点に対して、自らを「持っている男」と評した小林だが、まだケガから6カ月も経過しておらず、通常ならばまだジョギング程度しかできないはずだが、このプレーオフに間に合わせるために必死のリハビリを続けてきた。

ケガした直後のミーティングでチームメートに「B1に連れて行ってくれ。プレーオフまでには絶対に戻って来るから」と伝えたと語った小林は、同時に大黒柱である自分自身がチームから離れたことで「当初は困難な展開を乗り越えるのが難しかったが、少しずつチームが成長し、リーダーシップを取れ、困難に立ち向かえるチームになったのは大きな成長だった。結果的にB1に進むために、自分のケガはチームには必要だったのかもしれない」とも語り、チームの精神的な成長を強く感じていた。

B1昇格のプレッシャーからかすべてが上手くいかなかった第1戦。その翌日の試合で見事なカムバックとなった熊本。そして大ケガから宣言通りB2プレーオフに間に合わせた小林。すべては今日の第3戦に勝ち昇格を決めることで初めて意味を成す。果たして「来週(決勝)のことはどうでもいい」とまで言い切った小林と熊本の悲願は達成されるのか。