選手の入れ替わっても強さを発揮「それぞれの特性をもっと生かせる」
島根スサノオマジックは2月27日現在、24勝13敗で西地区2位につけている。昨シーズンは終盤に失速してチャンピオンシップ(CS)進出を逃した。そのリベンジをかけた今シーズンは多少の浮き沈みがありながらも、CS進出と目標である年間チャンピオンを狙える状況で2月のバイウィークを迎えた。
絶対的な中心選手として島根を牽引している安藤誓哉は、ここまでの戦いぶりを次のように振り返る。
「率直に良いほうだと思っています。もちろんファンの皆さんは地区1位を期待してくださっていると思います。ただ、毎年積み上げている他チームが多い中で、自分たちは選手が入れ替わって噛み合うまで時間がかかると思っていました。今は戦えるチームになってきています」
安藤が加入してからの3シーズン、島根はマイナーアップデートでチームを作り上げ、継続性や一貫性を重視してきた。しかし、今シーズンは外国籍2選手と帰化選手を入れ替え、新たに3人の日本人選手を迎えて挑んでいる。
中心選手が入れ替わったからこそ、シーズンを通じた成長や練度の成熟は終盤戦での期待が大きい。安藤もその感触を得ている。「伸び代はまだまだあります。それぞれの特性をもっと生かせると感じていて、そのために日々の練習やミーティングもできています」
晴山ケビンはシーズン開幕前、昨シーズンの失速の1つの要因として、チームの良いところを共有しきれず、最後まで武器にできなかったことを挙げていた。安藤も同様に「(コミュニケーション不足は)チームとして続いてしまっていることかもしれないです」と話したが、今シーズンは違うと言う。
「それを払拭するためにミーティングはしています。CS に行くには順位が絶対で、勝ち星がある今の段階でそこに気付いて、チーム内で話せているのはポジティブなことです」
スタッツには頓着なし「ゲームを支配する感覚を大事に」
今シーズン、安藤のプレースタイルは変化が見られている。昨シーズンは3ポイントシュートの試投数が平均10.4本でリーグ1位だったが、今シーズンは6.7本と減っている。逆にアシスト数は平均2.8本から4.0本に増加。アグレッシブに得点を狙いにいく姿勢に変わりはないが、ドライブからプレーメークする場面が増えた。
「昨シーズンはハンドラーのボールシェア率の関係もあり、3ポイントの優先度が高かったです。今シーズンは簡単に3ポイントを打つよりもクリエイトしてペイントに侵入するプレーを増やしています」と話す通り、ともにハンドラーを担ったペリン・ビュフォードが退団したことで、プレーメークの意識が高まった。
3ポイントシュートに対するこだわりはない。「得点のバリエーションを増やしたい」と、どのような形でもスコアリングできる選手になる目指しているという安藤は、チーム内での役割が変わったとは言え、より理想的な形で得点できていることを実感している。「今シーズンは3ポイントのメーク(成功)が2~3本でも20点を超える試合もあるので、自分でも点の取り方が変わってきたかなと思います」
スペースを見つけて、ドライブを仕掛けフィニッシュまで持っていく。ディフェンスが寄ってくればパスをさばきアシストをメークする。巧みなハンドリングで相手を翻弄するプレーも今シーズンは多く見られている。
さらに言うと安藤は3ポイントシュートだけでなくスタッツ自体にもこだわっていない。「スタッツはボールのシェア率に左右されることがあるので、それよりもゲームをどう支配しているのかという感覚を大事にしています」と、安藤のプレースタイルを言い得る言葉が続いた。ゲームを支配すれば、スタッツも勝利もおのずと付いてくるという安藤らしい考え方だ。
「1年目のようなフレッシュさを出していこうと思ってやっています」
安藤のもう1つの変化はメンタルだ。これまでは鬼気迫る表情で熱い気持ちをプレーに乗せていた。表情がゆるむことは多くはなく、コート上では常に戦う姿勢を見せてチームを引っ張ってきた。
しかし今シーズンは、どんなに緊迫した展開でもどこか精神的な余裕があるように感じられる。自身やチームを鼓舞しながらも、バスケを楽しんでいるような印象だ。そう伝えると、安藤は種明かしをしてくれた。
「死に物狂いな姿を見せていたら、みんなが切羽詰まっちゃうんじゃないかなと(笑)。キャプテンとして、僕が楽しみながら勝ちに行く姿を見せることで、みんなに余裕を持ってもらえればと思っています。僕も本心はバスケを楽しみたいですし、今シーズンは楽しめているので。その上でもちろん勝利が欲しいですね」
並々ならぬ覚悟で島根に入団し、チームを優勝させるべく、ここまで一心不乱に戦ってきた。スタープレーヤーゆえに若い頃から常に責任を背負ってきた安藤はさらに高い視点と新しい気持ちを持って今シーズンに臨んでいる。
「島根での3シーズンを経験して、自分の中で慣れた感じが出てしまった。それを払拭したくて1年目のようなフレッシュさを出していこうと思ってやっています。心境の変化があるというより、心境の変化を起こすって感じですね(笑)」
37試合を消化し、シーズンは終盤戦へ向かう。この先チームに何が必要で、そのために何をしなければいけないのか安藤はしっかりと見据えている。
「みんなの強みが出るバスケをするために、もっと得意不得意を知っていかないといけません。それは簡単なことのように思われるかもしれませんが、コートでは瞬時の判断が求められてくるので難しいことです。お互いの良いところを引き出し合っていくために、僕がキーにならないと」
チームを勝利に導く選手として期待を一身に背負うプレッシャーは計り知れない。ただ、ここにきて新たな境地を切り開いている安藤であれば、その期待に応えてくれるはずだ。安藤と島根のさらなる躍進が待ち遠しい。