「残りの試合でどのような姿を見せるかが重要」

滋賀レイクスは、ここまで3勝33敗と苦しいシーズンを送っている。昨シーズンにB2で優勝したが、複数の中心選手が退団することになり、ヘッドコーチも交代。中長期的なビジョンを掲げてB1の舞台に再び挑んだものの、結果が出ないまま2月のバイウィークを迎えた。

滋賀の新しい歴史を作るべくキャプテンに抜擢されたのは、所属がチーム最長となる26歳のポイントガード、野本大智だ。野本は今シーズンここまでの戦いぶりをこう振り返る。

「悔しさが一番にあります。多くのブースターさんに会場へ来てもらい声援をいただく中で、期待に応えられていません。自分たちが目指しているところではないので、残りの試合でどのような姿を見せるかが重要です」

開幕から4連敗した後の琉球ゴールデンキングス戦でシーズン初白星を挙げたものの、そこから18連敗を喫し、リーグ最下位に沈んでいる。「簡単なシーズンになるとは思っていませんでした。他のチームはタレントが揃っていますし、僕らは若手が多くて周りからの下馬票が高くないチームでした。だからこそ、覆したい気持ちがありました」と野本は言う。

筑波大4年時に特別指定選手として加入してから滋賀一筋でプレーしている野本は、ルーキーシーズンに18得点を挙げるなどポテンシャルの高さを見せるも、シーズンを通じて安定的なプレータイムを勝ち取れずにキャリアを進めてきた。

5年目の今シーズンはチーム状況が一変した。「チャンスの年で、生かすも殺すも自分次第」と野本が話す通り、中心選手としての活躍が求められている状況であり、チームからも「レイクスの未来を託すエースガード」と期待されてのキャプテン就任であった。

中学生以来のキャプテンに「チームを見よう!」の意識

聞けば、キャプテンを務めるのは中学以来だと言う。「最初は『キャプテンだから何かしなきゃ』と考えていました。もともと上手にできるタイプではないので、探り探りでした」と戸惑いもあったが、「チームの見え方が変わったと言うよりは『チームを見よう!』という意識が芽生えたシーズンです」と、彼の内面に変化が起きている。

「これまではチームにリーダーがたくさんいて、付いていくだけで良かったので、思えば自分の調子にしかフォーカスしていませんでした。今はそうではなく、自分の調子が良くてもチームが良くなければダメだという評価です」

バイウィーク前には、野本が特別指定選手時代に滋賀のキャプテンを務めた狩俣昌也(長崎ヴェルカ)、翌節には昨シーズンまでキャプテンだった柏倉哲平(川崎ブレイブサンダース)と、野本が肌で知る歴代キャプテンとの対戦が続いた。

「マサさんの気持ちを表現する力や勝負に対する強い思いを感じました。テツさんとは話す機会もあって、キャプテンシーについて学ばせてもらいました。今の自分の立場をあらためて考えるきっかけになりました」と、この機会を振り返る。

キャプテンに挑戦することで新たな違う視点を持つことができ、それはプレー面にも良い影響をもたらしている。長崎戦と川崎戦では2試合続けてキャリアハイの得点を更新し、直近の5試合連続で2桁得点を記録している。

しかし、この好調ぶりを野本は冷静にとらえている。「準備してきたことなので驚きはありません。これを続けていくことが重要で、シュートを決め続けることもそうですが、ディフェンスや戦う姿勢をどれだけ示していけるかが大事です」

「強豪チームに勝ってこそ力を示せる」

過去に試合に出られない悔しさやもどかしさを経験したからこそ、今のパフォーマンスがあると野本は明かす。12月に入ってから1月のオールスターまではプレータイムが10分に満たない試合も多かった。負け続けているチームで試合に出られないキャプテンという立場は精神的に辛いものだ。

「試合に出ていない自分がチームにもたらしているものを客観的に見た時に思いつくことがなく、『なぜ自分がキャプテンをやっているのか?』と考えました。戦う姿勢を見せることは練習でもできますが、試合に出れない期間に『本当に変わらなければいけない』と深く感じました。キャプテンを任せてもらったからこそ、あの期間が今に繋がっています」

今シーズンは残り23試合。強豪チームとの対戦も多く残している。「どこのチームも負けられない試合が続きます。特に相手は『滋賀には絶対に負けられない』と意気込んで、シーズンの前半とは違う緊張感を持っているので、それを自分たちが覆す楽しみはあります。強豪チームに勝ってこそ、力を示せると思います」

対戦相手がどこであれ自分たちのバスケにフォーカスしたいと野本は言う。「まずはオフェンスで100%以上の力を発揮すること、それにディフェンスやリバウンドを徹底して、走って自分たちの良さが出る展開に持っていけるかが重要になります」

「ブースターの熱量はリーグで一番だと思うので、だからこそ応えたい気持ちが強いです。僕は滋賀レイクスを勝たせる選手になりたいですし、ブースターと一緒に喜びを共有できるような残りのシーズンにしたいです」

ファンへの恩返しが彼の原動力になっている。このままでは終われない滋賀の逆襲は、キャプテン野本のリベンジへの思いから始まる。