レバンガ北海道

辛抱の展開が続く中、仲間の声がミュレンズを救う

B1残留プレーオフの横浜ビー・コルセアーズvsレバンガ北海道。昨日の第1戦では横浜が鮮やかな逆転劇で先勝していた。

今日の第2戦では、前夜の勢いを持ち込んだ横浜がスタートダッシュを決める。川村卓也とアーサー・スティーブンソンのピック&ロールを軸に、北海道に分があるはずのリバウンドでも上回って走る展開に持ち込む。川村の当たりが止まった第2クォーターには今度は田渡凌のシュートに当たりが出始める。川村からスティーブンソンへのアリウープも飛び出し、派手なプレーで2601人を集めた平塚総合体育館を沸かせた。

北海道は横浜の勢いに圧倒されながらも、バイロン・ミュレンズとデイビッド・ドプラスのインサイドを軸に食らい付いていたが、それでも41-47でスタートした第3クォーターに試練が訪れる。ビハインドの時間帯が続くことにフラストレーションを溜めていたミュレンズが、自分へのパスがカットされるターンオーバーに腹を立ててゴールの支柱を拳で叩き、テクニカルファウルをコールされたのだ。辛抱の展開が続く中で攻守の柱であるミュレンズが集中力を欠けば、横浜に一気に流れを持っていかれてもおかしくなかった。

「コンタクトがあるのにファウルがコールされず、思ったようなプレーができなかったこともあってフラストレーションを溜めていた」とミュレンズは振り返る。ただ、ここで映像でのジャッジ判定で試合が中断したことが北海道を救った。給水のためにベンチに戻ったミュレンズは、登録外でベンチ裏に控えるマーク・トラソリーニから「落ち着け」と声を掛けられ頭を冷やした。「マークだけじゃなく、牧(全)も松島(良豪)もベンチに戻るたびに声を掛けてくれたことが自分にとっては大きかった」とミュレンズは言う。感情に任せてプレーして良い結果が出ることはまずない。熱い気持ちを保ったまま、冷静にプレーを続けたミュレンズは、この試合と、続くGAME3でも勝利に決定的な働きを見せる。

川村卓也

苦しい時間帯を耐えた北海道、リズムを崩した横浜

北海道の我慢が報われたのは、その後の時間帯だった。ずっと決まらなかったアウトサイドシュートが急に決まり始めたのだ。きっかけとなったのは、関野剛平がファウルを受けながら3ポイントシュートを沈めた4点プレー。横浜ディフェンスがあえてチェックに行かなかった多嶋朝飛が3ポイントシュートを決め、折茂武彦もさすがの勝負強さで続き57-56と逆転に成功する。

その後も貴重な得点を重ねた関野は「今日のシュートタッチはあまり良くなかった。なぜ入ったのかよく分からない」と試合後に笑顔で振り返る。「神様が決めさせてくれたのかもしれない」とは言うものの、東海大出身の関野にとって、この平塚総合体育館は勝手知ったる場所。「体育館もここに来る道も全部知っているので、そういうのがプラスに働いたのかもしれません」と、また笑顔を見せた。

いずれにしても、大一番を勝つのに必要なラッキーボーイは北海道に現れた。そこから抜きつ抜かれつのシーソーゲームになるのだが、北海道が前半の苦しい時間帯を耐え抜いたのとは対照的に、横浜はビハインドを背負ってリズムを崩し、それまでにはなかったイージーなターンオーバーを連発した。

これを北海道は見逃さない。最終クォーターの勝負どころでミュレンズとドブラスだけでなく、ベテランの桜井良太や野口大介が奮起。残り30秒、関野がベースラインをドライブで割ってリバースレイアップを沈め、これが3点プレーに。橋本尚明がタフな3ポイントシュートをねじ込む横浜の反撃を辛うじて振り切り、北海道が91-89で勝利した。

レバンガ北海道

全員がチームを優先する姿勢が生んだ、2つの逆転劇

1勝1敗で、20分のインターバルを挟んで迎えたGAME3は、その前の40分間と非常によく似た展開となった。横浜は第2戦の終盤にファウルトラブルになったブランドン・コストナーが体力を残しており、ここを強調してリードを作る。それでも、この時間帯を北海道はしぶとく耐え、最少限の点差で食らい付いて風向きが変わるのを待った。

後半残り3分半、川村にタフショットをねじ込まれ7-14とされた北海道だが、ミュレンズにうまく合わせる得点が続き、ディフェンスリバウンドから走った関野が速攻を決めて13-14まで詰め寄った。ところがここで、ドブラスがファウルアウトになってしまう。GAME3では個人ファウル3つで退場。せっかくの追い上げムードが帳消しになる手痛いアクシデントだった。

ところが、ここから北海道と横浜で明暗が分かれる。北海道はディフェンスで粘ってスティーブンソンのシュートを落とさせ、リバウンドから桜井が走る。決められたら逆転の場面で止めた川村のプレーがアンスポーツマンライクファウルに。横浜ブースターによる地鳴りのブーイングの中、桜井がこれを確実に2本決めて15-14と逆転に成功した。

ここから横浜は落ち着いてプレーを遂行できず、オフェンスファウルとラインクロスで貴重なポゼッションを失ってしまう。一方で北海道は、ミュレンズが正面からノーマークの3ポイントシュートを沈め、さらには厳しいプレッシャーを受けつつターンアラウンドジャンプシュートをねじ込んで決着。北海道が22-14でGAME3を勝利し、B1残留を勝ち取った。

シーズン途中からチームの指揮を託された内海知秀ヘッドコーチは、難しい2試合をいずれも勝利したことを自分の手柄とはせず「選手たちがよく頑張ってくれた」と繰り返した。また第2戦では28得点、第3戦でも10得点と大活躍したミュレンズも、「今日一番良かったプレーは」と問われてこう答えている。「桜井の3ポイントシュート、関野の3ポイントシュートとエンドワンの4点プレー、そしてGAME3でドブラスがファウルアウトした後の野口のディフェンス。コストナーをよく守ってくれた」

誰も自分の手柄を語らずチームを優先する姿勢こそが、崖っぷちまで追い詰められた2試合を勝ちへと転じさせる原動力となった。震災に始まり、指揮官交代にケガ人続出とアクシデント続きだった北海道だが、何とかB1残留を果たしている。内海ヘッドコーチはそこでようやく「何連敗したかもう分からないけど、ホッとしました」と安堵の笑みを浮かべた。