文=鈴木健一郎 写真=古後登志夫

この2カ月で1勝13敗、ついに残留プレーオフ圏へ突入

横浜ビー・コルセアーズが泥沼から抜け出せずもがいている。2月5日、ホームでの千葉ジェッツ戦から8連敗、間に1勝を挟んだものの、そこからさらに5連敗。この2カ月で1勝13敗と大ブレーキ、ついに残留プレーオフ圏内に入ってしまった。

2月5日はジェイソン・ウォッシュバーンが左足首をケガした日。軸となるセンターの外国籍選手が抜けては勝つのは難しい。さらには青木勇人ヘッドコーチが契約解除となり、Bリーグで初めての指揮官交代を経験した。

頼みのウォッシュバーンは前々節の富山グラウジーズ戦で復帰したものの、満足に走れない状態。前節の川崎ブレイブサンダース戦ではだいぶ調子を戻し、両日とも2桁得点を記録したものの、王者川崎に対抗するにはまだ足りなかった。

4月2日、川崎との第1戦は68-85と大敗したが、久々に内容に手応えの感じられるゲームではあった。前半を終えた時点で43-38とリード。特に第2クォーターにはリバウンドの奮闘とチーム一丸の激しいディフェンスで、ニック・ファジーカスを無得点に抑えるなど素晴らしいパフォーマンスを見せた。それでも後半に巻き返され、川崎の中地区優勝決定を許してしまった。翌日の第2戦、横浜国際プールでの最終戦には過去最多の4216人を集めたが、ここでも敗戦。力の差を見せ付けられる形となった。

王者から得た教訓「チームとしてどうやっていくか」

キャプテンを務める山田謙治は、川崎と横浜との力の差について「プレーの質ですね」と語る。「もちろん頼りにするのはファジーカスですが、その前に他の4人でかき回して、最後はシューターだったりニックだったり、大事な時にちゃんと点が取れるチームです」

善戦した第1戦の前半についても、山田は過大評価しようとしない。「リードもできたし、良いゲームができたとは思いますが、川崎のシュートタッチがあまり良くなかったのも正直あります。後半はディフェンスから崩れて、オフェンスも個で何とかしようと思って単発のシュートが増えてしまった。その点、後半の川崎はチームとして戦っていました。ニックが32得点、長谷川(技)選手に12得点で、あとは1桁なのに85点を取っている。シンプルだけどチームバスケが徹底できている印象です」

負けを単なる負けで片付けない、という気持ちが山田からは伝わってくる。「川崎も外国籍選手を欠く状況で、日本人選手がすごく頑張っていて、見習うべき点がたくさんあります。僕たちもチームとしてどうやっていくか。相手どうこうよりも自分たち次第。それで上位チームにも勝てると思っています」

「プレーオフに回ったとしてもウチには『核』がある」

レギュラーシーズン残り11試合。現在15勝34敗で並ぶ秋田とは直接対決で2戦2敗と負け越しており、このままだと横浜が15位で残留プレーオフに回る。「順位も気にしなきゃいけないんですけど、勝つしかない。自分たちより上のチームとの対戦しかないので、自分たちがどういう気持ちで立ち向かうかだけです」

交流戦が終わったシーズン終盤、戦い方も変わってくる。「何クールもやってる中地区のチームなので、誰が点を取って、誰がどういうプレーをしてくるのか分かっています。その中でオフェンスもディフェンスもできていない原因は何かを追求してやっていく。それが勝ちにつながっていくと思います」

低迷のきっかけがウォッシュバーンの故障欠場だったことは明らか。彼が復帰した今、チームは浮上傾向にあると見ていいだろう。あとはその流れをしっかりと引き寄せ、勝利という形に変えていくこと。山田は言う。「ジェイソンもできる限りのパフォーマンスを見せてくれています。今までは全然できない状態でしたが、走ることもターンシュートの踏ん張りも利くようになっています」

一つの勝ち負けの重みが増してくる時期だが、山田は慌ててはいない。「残留できたとしても、プレーオフに回ったとしても、ウチには『核』があると思うので、それを起点にしてパフォーマンスは上げられると思います」

「自信は失っていないですね」。最後に山田はサラリとそう言った。結果が出ないからと慌てても、それで事態が好転するわけではない。あらためてチームとして一つとなり、残留を勝ち取るための戦いに取り組む。レギュラーシーズンのラスト1カ月、その戦いの中心には、リーダーとしての山田がいる。