安藤周人

チャンピオンシップに先駆けて行われたティップオフイベントに、名古屋ダイヤモンドドルフィンズを代表して参加したのは成長著しい安藤周人だった。チームの「ここだけは負けない」ポイントを書くよう依頼された彼が『足』。その言葉が意味することとは?

ディフェンスが成長、2年連続チャンピオンシップ進出

「足を動かして、60試合戦い抜いたチームなので」と、迷わず書いた安藤は、その意味をこう説明する。「僕がいつもオフェンスで先頭を走るんですけど、全員に走る意識がついてきた」

実際、名古屋Dの売りはオフェンスの破壊力であり、平均81.2得点はリーグ4位の数字。その一方で平均失点も80を超え、守備に課題を残している。それでも、リーグ有数のリムプロテクターであるヒルトン・アームストロングの獲得でディフェンス面のテコ入れが成された。安藤は「後半戦が進むにつれてディフェンスの足が動いてきた。シーズンを通して成長してきたディフェンスを見てほしい」と、守備での『足』もチャンピオンシップ進出に大きく貢献したと自信を持つ。

レギュラーシーズン最終節、ライジングゼファーフクオカとの第2戦は延長にもつれこむ接戦となったが、安藤のフリースローが決勝点となり、1点差で勝利した。「あそこで負けていたら、チャンピオンシップに向けてのモチベーションが変わっていたと思う。最後もディフェンスから得点に繋げて、ギリギリ勝てたので良かった」と、レギュラーシーズン最後を締めくくったのも『足』だった。

だが、「周りからは名古屋が勝つだろうと思われていたかもしれない」と安藤が言うように、すでに降格が決まっていた格下の福岡に苦戦したことも事実。「いろいろな事情がある中で、最後は勝とうという意識が強かった相手に、自分たちが呑まれたのはあります」

それでも「アウェーで琉球とやることを考えたら、あの雰囲気を経験できたのは良かったです」と、チャンピオンシップのような一種独特の雰囲気の中で勝ったことを収穫に挙げている。

安藤周人

「チームが僕を好きなようにやらせてくれている」

名古屋Dのクォーターファイナルの相手は西地区を制した琉球ゴールデンキングス。2年連続で同じ組み合わせとなったが、昨シーズンは先勝しながらも、第2戦に敗れ、続いて行われたGAME3も落としてシーズン終了となった。

大幅な補強を行った琉球と比べると、名古屋Dのロスターは変わり映えしない。昨シーズンとの一番の違いは、平均14.6得点と大幅にステップアップした安藤の存在だ。その急成長の理由を本人は「チームメートのおかげ」と説明する。「結果的に伸びてますけど、逆に言えばチームメートが僕を生かしてくれるシーンが増えました。チームのために結果を残さないといけないという気持ちも出てきてますけど、チームが僕を好きなようにやらせてくれているので、この結果が出たんじゃないかなと思います」

ただ、それもチームでの信頼があってのこと。いわゆる『エース』なのだが「以前、『エースとしての自覚はあるのか?』って聞かれた時に、はっきりと『ないです』と言いました」と、その自覚はない。「任せられたらやりますし、任せられなかったらチームメートにやってもらえばいいと思っているので」と、責任から逃げるのではなく、チームファーストを優先した結果だ。

安藤に初戦突破の自信を問うと、控えめに「50%です」とコメント。「実際、どう転ぶか分からないです。勝ちたい気持ちが強い方が勝つと思うので、それだけは負けません」

勝率50%は、決してポジティブではない。だが、強気なプレーとは裏腹にネガティブ思考を公言している安藤だけに、50%はそれ以上の価値がある。いずれにしても、スローテンポで守り合いに持ち込みたいであろう琉球に対して、得意の『足』を使って逆の展開に持ち込めるかどうかが試合のカギになる。先頭を走る安藤の働きが勝敗を大きく左右するのは言うまでもない。