ビクター・ウェンバニャマ

攻守に完璧なパフォーマンス、会場からはMVPコールも

スパーズとペイサーズがフランスに遠征して公式戦2試合を行うNBAパリゲームの主役は、言うまでもなくビクター・ウェンバニャマだ。

フランスに到着してからのウェンバニャマは、バスケ選手としての成長の足跡を追うようにこれまでプレーしたコートを訪れ、懐かしい恩師や仲間と再会した。彼が幼少期を過ごしたパリ郊外のル・シェネでは、かつて自分が練習した体育館に隣接する屋外バスケコートを新たに作り直しており、その完成式典に出席した。

ウェンバニャマはそれらの活動にスパーズのチームメートを連れてきた。今回の遠征を楽しんでもらうとともに、自分のルーツを知ってもらいたかったからだ。到着初日のウェルカムディナーはウェンバニャマがチーム全員を招待した。ここには来ていないグレッグ・ポポビッチに思いを馳せ、「ポップなら何をするだろうか」と考えた結果、チーム全員で豪華なフランス料理を堪能して英気を養うことにした。

こうして現地1月23日に迎えたNBAパリゲームの第1戦、ウェンバニャマはいつも通り落ち着いた様子で試合に臨んだが、やはり気合いはいつも以上に入っており、それは良い方向に働いた。彼を止めようと奮闘するマイルズ・ターナーを終始翻弄して、30得点11リバウンド6アシスト1スティール5ブロックを記録。特に45-23と圧倒して試合の趨勢を決めた第3クォーターには9得点6リバウンド3アシスト4ブロックと大活躍。遠征のホスト役はあくまでオマケで、コートに立てばスパーズに勝利をもたらす絶対的存在であることを見せ付けた。

クリス・ポールとのピック&ロールはいつも以上に冴え渡り、身長と長いリーチを生かしてゴール下を支配するだけでなく、3ポイントシュートを4本決め、ディフェンスでも素晴らしいプレーを披露。極め付けは第4クォーター序盤のセルフ・アリウープだ。ドライブを仕掛けたウェンバニャマはタイリース・ハリバートンをユーロステップでかわすが、ハリバートンも粘ってリムへのコースから彼を遠ざける。それでもウェンバニャマは半身の状態で浮かせたボールをボードに当て、その跳ね返りをボースハンドダンクで沈めた。

会場はパリオリンピックの決勝が行われたベルシー・アレナ。オリンピックではウェンバニャマには過剰すぎるほどの期待とプレッシャーが圧し掛かっていたが、この日は違った。彼はパリの観客からの声援を浴びながらNBAの試合をすることをただ楽しみ、高い期待をさらに上回るプレーを見せた。会場からMVPコールが起きたのも納得のパフォーマンスだ。

クリス・ポールは「試合が終わってすぐ彼にも伝えたんだが、彼にとってここ最近でのベストパフォーマンスで、最も完成度の高いゲームとなった。攻撃でも守備でも素晴らしいプレーをしたよ」とウェンバニャマのプレーを称えた。

スパーズとペイサーズが対戦するNBAパリゲームは、中1日の休養を挟名で現地1月25日にも行われる。