今週末からBリーグ王者を決めるチャンピオンシップがスタートする。それに先駆けたティップオフイベントに、新潟アルビレックスBBを代表して登場したのは五十嵐圭だ。チームの強みとして挙げたのは『一体感』だ。「自分の仕事がこれだ、という役割分担がチームでできています。それ以外にも一体感というのは、チームスタッフや関係者の皆さん、ブースターの皆さん。アオーレの会場は全員が自分たちと一緒に戦ってくれるので、その一体感が自分たちの強みです」
「地元の新潟のチームを強くするために帰ってきた」
新潟はBリーグ3年目で初のチャンピオンシップ進出。それでも経験豊富な五十嵐は「緊張感を持って楽しみながらやれれば良いと思います」と自然体を崩さない。
「過去2回はチャンピオンシップに出れなくて、今シーズンは勝負の年だと取り組んだ中で、チャンピオンシップに進出できたこと、さらに中地区優勝ができました。自分自身、リーグ戦から『追われる展開』が久しぶりだったので、良い緊張感を持ちながらプレーできました。このチャンピオンシップも緊張感のある試合になると思いますけど、楽しみながらやりたいです」
もちろん、チャンピオンシップ進出をゴールにするつもりは全くない。「これまでブースターの皆さんの気持ちに応えることができずに悔しかったですし、自分は地元の新潟のチームを強くするために帰ってきました。そういう意味ではチャンピオンシップ出場と中地区優勝で少しはブースターの皆さんに恩返しできたのかなと思いますが、これだけで終わるのではなく、最終目標であるリーグ優勝に向かって戦っていきます」
2016年6月30日、新潟はBリーグに向けたチーム作りの第一歩として、庄司和広ヘッドコーチの招聘、そして五十嵐の獲得を発表している。この時点で36歳。引退するために地元に戻って来たのかと思えば、それは全くの誤解だった。入団発表で語った「ポイントガードとしてチームを引っ張っていきたい。新潟のバスケットボールを皆さんと作っていきたい」という言葉を実践し続ける彼に、年齢に伴う衰えは全く感じられない。
「年齢的にはベテランと呼ばれる年齢ですし、レベルの高い選手と競争する中で今回みたいに結果を残すことができたのは自信になりました。まだまだ自分自身、うまくなりたいという気持ちを持ってやっています。自分が目標としていたスタッツに届いていないですし、そういった目標を立ててやっていきたい。自分たちにはエースであるダバンテ・ガードナーがいて、僕たちベテラン陣を生かしてもらえているのもあるので、今回は僕らが彼をサポートできるように戦っていきたいと思います」
ちなみに、入団発表で五十嵐が掲げたスタッツの目標は、10得点10アシスト。得点はクリアしているがアシストが今シーズンは5.2と届いていない。それでも「この数字にはこだわりを持ってやっていきたい」という言葉は、今も有言実行されている。
「自分たちのプレーをコートでしっかりと出す」
クォーターファイナルで対戦するのはアルバルク東京。レギュラーシーズンの成績では上回ったが、相手はチャンピオンシップでの勝ち方を知る前年王者であり、優勝候補でもある。ただし、苦手意識はない。今シーズンの対戦成績は1勝1敗、ここ3シーズンを通して見ても4勝4敗と互角の戦いを演じているからだ。ホームで戦えることを考えれば優位にあるとも言える。
五十嵐はA東京のイメージをこう語る。「昨シーズンのチャンピオンチームでもありますし、日本代表の選手も多く、若くて才能のある選手が多くてタレントのあるチームです。誰が出て来てもチーム力が落ちない、ディフェンスも徹底されている印象です」
ただ、「レギュラーシーズンとチャンピオンシップの戦い方は変わってくると思います」と言いながらも、「僕たちは自分を含めてチャンピオンシップ進出が初めてで、A東京さんの対策を練るのはもちろんですけど、今シーズンやってきた自分たちのプレーをコートでしっかりと出す。それができている時は良い結果が出ています。A東京さんに苦手意識はないので、まずは自分たちの強みであるガードナーのインサイドを中心に攻めていければと思います」
初めて経験する大舞台で自分たちのプレーを出す。言葉で言うのは簡単でも実際に遂行するのはそう簡単ではない。だからこそ、ポイントガードである自分がうまくチームをリードする必要があると五十嵐は考えている。「ポイントガードとしてチームをコントロールして、自分たちのペースで試合を運べるように。特に試合の入り方は気を付けてやりたいと思います」
会見を通して、気を引き締めてはいるがリラックスして、この場にいることを楽しんでいることが五十嵐の様子からは伝わってくる。「勝敗が一番大切ですが、その中でもバスケの楽しさを伝えたい」という五十嵐の姿勢は、チャンピオンシップでも変わらない。