ジュリアス・ランドル

ニックス在籍5シーズン、再建に自己犠牲を惜しまず

昨年夏のトレーニングキャンプ開始直前にティンバーウルブズとニックスの間でまとまった、カール・アンソニー・タウンズ、ジュリアス・ランドルとドンテ・ディビンチェンゾのトレードは、どの選手にも心の傷を残すものとなった。

タウンズは『チームの顔』としてウルブズを引っ張るだけでなく、地元コミュニティとも深い繋がりを持ち、ウルブズ一筋のキャリアを過ごすつもりだった。一方でディビンチェンゾはビラノバ・トリオの一員として、これから上り調子で優勝を目指すニックスでのプレーに大きなモチベーションを抱いていた。

ランドルもまた同様だ。彼がニックスに加入した2019年、チームは17勝しか挙げておらず、ヤニス・アデトクンボのような『超大物』獲得のためにキャップスペースを空けていたが、勧誘に失敗。そんなチームにあまり期待されずにやって来たランドルは、チームリーダーを買って出て先の見えない再建を主導した。

在籍5年目の昨シーズン、ニックスがプレーオフに進出するだけでなくプレーオフで勝てるチームになったところで、彼はそのチームから弾き出されることになった。歯車が狂い始めたのはトレードより前、1月末に起きた。途中加入のOG・アヌノビーと組んだランドルは絶好調だったが、試合中に相手選手との衝突で肩を脱臼。チームの出来に手応えを感じていただけに手術を回避してプレーオフでの復帰を目指すも、それはかなわなかった。そしてオフに、ニックスはフロントコートの強化のためにタウンズに目を付ける。そしてランドルが放出されることになった。

現地1月17日のニックスvsウルブズで、ランドルは移籍後初めてマディソン・スクエア・ガーデンでの試合に出場した。得点は8と少なかったが7リバウンド6アシストを記録。個人のスタッツは目立つものではなくても、インサイドで身体を張り、巧みな動きで味方のためのスペースを作り、スムーズにボールを動かすことで、116-99のチームの快勝を演出した。

ディビンチェンゾが突然のトレードへの憤りを全身で表現する一方で、タウンズはその影響が大きすぎて沈黙し続けている。ランドルは試合後のメディア対応で冗談混じりでこう語った。「僕はビジター用のロッカールームを使ったことがなかった。勝手知ったる側につい行きそうになったよ。こっちのシャワールームは水がお湯になるまでに時間がかかるし、水圧も弱い。マディソン・スクエア・ガーデンで長くプレーしたけど、これは知らなかったな(笑)」

それでも『NY POST』との独占インタビューでは、より明確に胸の内を明かしている。肩の脱臼からトレードに至る流れをランドルは「最悪の出来事」と表現した。「毎年少しずつ積み上げて、昨シーズンは僕たちのベストチームだった。ケガがなければ優勝を狙えたはずで、それが実際にどうなるのか見届けられないのは残念だ」

ただ、彼はプロフェッショナルとして今起きている現実を受け入れ、ニックスで過ごした5年間を「僕の誇りだ」と気持ちの整理を済ませている。「僕たちが築いたもの、それがニューヨークにとって意味するものに誇りを持っている」

ランドルは2022年から始まる4年1億1700万ドル(約180億円)の契約の3年目を迎えており、最終年はプレーヤーオプションのため、今夏にはこれを破棄してフリーエージェントとなることが濃厚だ。ランドル自身は親交の深いクリス・フィンチの下で長くプレーすることを期待しているようだが、ウルブズのサラリーキャップにその余裕はなさそうだ。

ただ、自分自身が契約問題を抱えていても、彼は所属チームのために自己犠牲を厭わず、愚直に努力することをやめないだろう。ランドルはそうやってキャリアを築いてきたのだから。