渡辺翔太

「ディフェンスで一番インテンシティを出していく」

仙台89ERSは1月4日、5日にアウェーに乗り込んだ川崎ブレイブサンダースとの対戦を、1勝1敗で終えた。4日は序盤から圧倒して82-61と快勝したが、5日は最大18点リードと優位に立ちながら後半に失速する痛恨の逆転負けとなった。

それでも司令塔の渡辺翔太はここまで28試合出場、7.0得点、2.9アシストと自己ベストの数字を記録している。また、同じ司令塔の青木保憲とのツーガード起用も増えるなど、今までと違う役割の中でタフなディフェンスなどスタッツに出ない部分での奮闘も光る。

4日の試合後に取材に応じた渡辺は、前からの激しいディフェンスでチーム全体の守備のトーンをセットすることを意識していると話す。

「昨シーズンまで藤田弘輝さんのバスケをやることで、かなりディフェンスを自分の強みにできるようになりました。今年もツーガードでやる中、ディフェンスで自分が一番インテンシティを出して、前からしっかりプレッシャーをかけたいと思っています」

オフェンス面で得点が伸びていることは、昨シーズンに14.6得点を挙げた阿部諒がサンロッカーズ渋谷へと移籍した影響があると続ける。「阿部選手の穴を埋めるところで自分もアグレッシブにやらないといけないです。打ち切るところは打ち切る、アタックするところはアタックするのが役割で、昨シーズンよりそれを担う回数が増えた部分でのスタッツの向上だと思います」

渡辺翔太

「カルチャーを体現できたら良いチームになれる」

7勝21敗の成績が示すように仙台にとってはタフな状況が続いているが、そういう時こそ、チームのやるべきことを継続できるかが、今シーズンだけでないチームの将来にも影響する大事な要素となる。

仙台は『GRIND』をチームカルチャーを示す言葉として大切にしている。これは「骨を折って何かに打ち込む」、「一生懸命に何かをする」という意味で、どんな時でもやるべきことを泥臭く継続することで苦境を乗り越えていくという、仙台の掲げるスタイルだ。

そして今、この『GRIND』をどれだけ発揮できるかが問われている。特別指定の2019-20シーズンから仙台一筋でB2時代も経験している生え抜きの渡辺は、「カルチャーを続けていく、伝えていくことは、結果が出ていないだけにすごく難しいと感じています。でもソルジャー(片岡大晴)、自分、一昨年からヤス(青木)が来てくれて、先頭に立って試合中に体現してくれる選手がいます」と語り、自分もこのカルチャーを体現する存在でありたいと続ける。

「今シーズンの勝てない時、自分がやりたいことなどがバラバラになってしまう時期もありました。B2からB1に上がってやりたいことができている時はチームが一つになって、今もそうですけど、より家族のような存在になれていました。それが体現できたら良いチームになれることは分かっています。そのために必要なことを伝えていくのは大切です」

仙台にとって我慢の時期はまだ続くかもしれないが、ここで付け焼き刃にスタイルを崩すことは、継続性の喪失をもたらす。そうならないためにも、チームカルチャーを熟知し、すべてが噛み合った時の理想の姿を知る渡辺にはコート内外でのリーダーシップが期待される。彼は、その責任を担う覚悟を持っている。