文・写真=古後登志夫

ピック&ロールの習得は「来シーズンもやっていきたい」

昨日、敵地での横浜ビー・コルセアーズ戦、『神奈川ダービー』との初戦を制したことで、川崎ブレイブサンダースの中地区優勝が決まった。横浜国際プールでの最後のホームゲーム開催、そしてB1残留のためにチーム一丸となった横浜に苦戦を強いられながらも、後半に鮮やかな逆転勝ち。『王者の強さ』を示した一戦となった。

NBL王者の川崎にとっては、余力を残しながらの地区優勝に見える。開幕戦で三遠ネオフェニックスに連敗を喫したものの、その後は順調に勝利を積み重ねて40勝8敗、2位の三遠に14ゲームという大差を付けての地区優勝となった。

それでも辻直人は、開幕から地区優勝までの歩みを「正直、苦しかったです」と振り返る。「開幕当初はBリーグのスタートということですごく盛り上がって、その中で自分の時間が取れず、タイムマネジメントができませんでした。自分の結果が出ないところで腰を痛めて、初めて長期間休むことになってしまって。復帰しても思うような動きができず、個人的には非常に苦しかったです」

リオ五輪の最終予選でラトビアとチェコに大敗。『世界との戦い』で通用しなかったことで辻はプレースタイルの変更に踏み切ったのだが、それも苦戦の一因となった。キャッチ&リリースからピック&ロールへ。世界を視野に入れた新たなスタイルは、まだ自分のものにできていない。

「新たな目標を掲げてやっていましたが、自分のスタッツがあまり出ず、そのうちに腰を痛めてしまいました。思っていたように行かなかったのですが、それは自分の目標として来シーズンまでかけてやっていきたい」と辻は言う。

大舞台で輝く辻「『お金が欲しい』キャラで行きます」

それでも歯車は噛み合いつつある。「ようやく自分の思うように動けるようになってきたのが前節ぐらいから。この流れで自分の良いプレーを思い出したいです。自分のプレーさえできれば結果は出ると思っているので」。そう語る口調に迷いはない。

横浜との第1戦、得点こそ6と伸びなかったが6アシストを記録。オフ・ザ・ボールの動きに鋭さが戻り、スタッツに表れない貢献も多く、「身体が動くようになってきた」という本人の言葉を裏付けている。

「今のコンディションは85%という感じです」と言う辻だが、いつまでもクスブるつもりはない。「少しだけ痛みが残っているのですが、それが取れれば100%です。あとは気持ちで120%に持っていきます」

中地区優勝を決めたセレモニーで、辻は優勝賞金1000万円のボードを手に満面の笑みを浮かべていた。「まずは1000万」という辻は「チャンピオンシップは絶対に勝ちたい。初代王者という名誉と(チャンピオンシップ優勝賞金の)5000万円を何としてでも取りに行きます」と語る。

「キャラクターでも爪跡を残さないといけないと思っているので『お金が欲しい』キャラで行きます。実際、今までの大会でも優勝した時には、だいたいお金のボードは僕が取りに行っているので(笑)」

辻は大舞台になればなるほど輝く選手。ここまで苦労した分に利子まで付けて、川崎にとって本当の勝負どころであるチャンピオンシップで本領を発揮し、5000万円の、さらにはもっと大きな金額のボードを掲げてもらいたいものだ。