トレイ・マーフィー三世

「最愛の人を失うなんて、あってはならないことだ」

現地1月1日、ペリカンズはマイアミでのヒート戦に108-119で敗れた。これで連敗は球団史上2番目に長い11となり、通算成績は5勝29敗とリーグ最下位に沈んでいる。だが、この日に限ってはペリカンズの面々は試合どころではなかった。ホームタウンで痛ましい事件が起きたからだ。

1日未明、ニューオリンズの中心部の観光地であるバーボン・ストリートでは、新年を祝うイベントが行われていた。バリケードを突破したトラックがその通りに突っ込み、そこにいた人々を次々となぎ倒した。運転していた男は警官に発砲し、銃撃戦の末に死亡しているが、捜査当局は単独犯ではなく、組織的な犯行であることを発表している。

少なくとも15人が死亡し、約30人が負傷した痛ましい事件について、ペリカンズの指揮官ウィリー・グリーンは、父親からの朝のメールで知った。1行目は新年の挨拶。2行目には「ニューオリンズの人々のために祈りたい」と書かれていた。起きたばかりの彼はその数分後にニュースで事件のことを知り、「打ちのめされた気分になった」と語る。

「無意味な暴力行為だ。今はどこに行っても安全とは言えない時代かもしれないが、街に出て楽しい時間を安全に過ごせるのが当たり前であるべきだ。犠牲者の家族の心情や、この先に一生向かい合っていくことを想像すると暗澹たる気分になる」

「この国ではこういった事件が毎月のように起きている。今回はニューオリンズで起きたから、より身近のこととして感じているが、この国全体で、時には世界中で起きていることだ。こういう時にバスケに集中するのは難しい。だが我々には責任があり、そのおかげで精神のバランスを何とか保つことができる」

トレイ・マーフィー三世は「新しい年を新たな気分で祝おうという人たちを傷付けるなんて恥ずべき行為だし、なぜそんなことをする必要があったのか理解できない」と悲痛な表情で語った。「バーボン・ストリートは楽しい場所だよ。そこに出掛けることを心配しなければならない、ましてやそこで最愛の人を失うなんて、あってはならないことだ」

「僕の母とシェフが新年を祝うためにそこにいたんだ。だから僕は不安でたまらず、ただただ怖かった。無事だと連絡をもらってホッとしたけど、その連絡を受け取ることができなかった人たちがいるんだよね。本当に辛い気分だ」

この試合のティップオフ前には、もともと先日亡くなったジミー・カーター元大統領を追悼する予定だったが、それに加えて今回の犠牲者のための黙祷が捧げられた。