「県の対応がなければおそらく合格できていない」
12月26日、Bリーグは2026-27シーズンからスタートする新リーグ『Bプレミア』ライセンス交付クラブの最終発表を実施した。秋田ノーザンハピネッツと大阪エヴェッサにライセンスが交付され、これでBプレミア初年度は全26チームで開催されることが決まった。
今回、秋田が最後にライセンス交付を勝ち取ったのは約2カ月前の状況を考えれば大きな衝撃だ。秋田はもともと秋田県立体育館の建て替えに合わせ、2028年秋田市に設立予定の新アリーナについて、県と5年前から話し合いを重ねてきた。交渉は順調に進み、この新アリーナを秋田の新たな本拠地とすることで、Bプレミアのライセンス取得は問題ないはずだった。
しかし11月1日、県がこのアリーナの施設整備・運営事業の一般入札を取りやめたと発表。物価高や人件費の高騰によって、参加表明のあった4グループすべてが入札を辞退したのだ。こうして新アリーナが2028年秋に誕生する可能性は潰え、秋田の初年度からのBプレミア入りも不可能になったかと思われた。しかし、ここから県は迅速な対応を見せる。大幅に事業費を増額した改正案が12月に県議会で可決され、20日には異例の速さで再入札を公告した。
その結果、島田慎二チェアマンが「具体的には、110億円もの事業費の増額やその直後に再公告が行われ、応札者が少なくとも1社はいることが確認できました」と語る、リーグの求める『確からしさ』が担保できたことで、土壇場で初年度からのBプレミア参戦の切符を勝ち取った。
秋田の水野勇気社長は、「正直、ホッとしたのが一番です」と安堵する。「県の皆さまがリーグの求めに応じてしっかりと対応していただけました。アリーナ要件で、11月だけでなく過去にも何度か要件をクリアできるのか厳しい局面に立ったことがありますが、その中で一歩ずつ課題をクリアしていきました」
しかし、大きな壁を乗り越えたとは言え「厳密にいうと3月までに事業者が決まり、6月までに正式契約を結ばないといけないです」と気を引き締めている。そしてプレミア入りをサポートしてくれた行政への感謝を強調し、その期待に応える責務があると続ける。
「県の対応がなければおそらく合格できていないので感謝しています。また、2028年に完成するアリーナは様々な用途に応じた複合的な施設ですが、メインとして秋田ノーザンハピネッツが使っていきます。おそらく6000席以上の規模が予定されており、これは東北で一番大きな規模のアリーナになると思います。県民だけでなく、県外からもたくさんの人に訪れてもらい、常に満員にしていかなければいけないです」
今回、県の異例のスピード対応は、これまで秋田が地域密着を地道に続けていたことによる強固な信頼関係はあってこそだ。Bリーグ開幕前から存在するプロバスケチームで唯一の創業者社長で、「プロバスケット界で一番古い社長となりました」と語る水野社長は、「県民球団を当初から目指してやってきました。今回の議会の対応、県の対応を含めて、そこまで大きな反対に遭わずにこられたのは15年間の積み上げがあってこそです。秋田を活性化することが僕らのミッションと、ずっと今までやってきたその手段の一つとしてプロバスケットボールがある。秋田に根付いていくのは今までもこれからも続けていくことです」と続ける。
また、アリーナに関しても、今回のBプレミア入りの要件となる前から行政に働きかけてきた歴史があったからこそ難題をクリアできた。水野社長はこう語る。「僕らは立ち上げ当初からアリーナが悲願でした。Bプレミアの条件になるからと言い始めたことではなく、設立当初から『将来、秋田にアリーナを実現したい』と当時から明確なビジョンを持っています。ずっとやってきて、やはり今の状況は体育館です。体育館とアリーナは全く違って、アリーナこそスポーツエンターテイメントが体現できる場所で、見に来てくれた方々がもっと楽しめる、ワクワクすると思っています」
そして、アリーナへの想いを続ける。「bjリーグのオールスターゲームを2014年に秋田で開催した時は『10年後にアリーナを実現したい、アリーナのある未来を』と発信しました。そこからもう10年経ってしまいましたが、ようやく2028年に実現できるところまで来ています。アリーナの先駆けが沖縄アリーナで、僕も最初に沖縄アリーナができて木村達郎(前社長)さんに案内してもらった時、確かにこういったアリーナが全国にできたらBリーグの価値が上がると思いました。それが僕らの秋田で実現するまで、あと一歩のところに来ています。あと4年ありますが、その時にアリーナを生かせるクラブになっていけるように引き続き頑張っていきたいです」
Bリーグは地方創生をリーグの大きなミッションに掲げている。このことをリーグで最も体現している秋田が、紆余曲折があったにせよBプレミアに初年度から参加できる。これは秋田だけでなく、リーグ全体にとっても大きな意義のあることだ。