田臥勇太

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「出てない時にどう準備するか」

栃木ブレックスは秋田ノーザンハピネッツ戦に連勝し、一足早くレギュラーシーズンを終えた。昨日の第2戦、田臥勇太は復帰9試合目で初の2桁得点を挙げた。テクニカルファウルやアンスポーツマンライクファウルで得たフリースローを確実に沈めるなど、荒れ模様の試合においても抜群の集中力を見せてチームを引き締めた。

昨日の試合では9分間プレーした田臥だが、プレータイムは試合によって変動している。「ミニッツを増やせたり、増やせなかったり。練習でもそうなんですけど、動きを試す作業を繰り返しています。試合の強度によって、身体の反応も変わってくるので、ここから1分でも2分でも増やせるようにしたい」と田臥は語る。

安齋竜三ヘッドコーチも田臥の起用法については「本人と相談しながら決めている」と以前から語っているが、実際に田臥が自らヘッドコーチに申し出ているようだ。「SR渋谷戦で9分ずつ出て、今週1週間の中でアップダウンがあったので、昨日は抑え気味でやらしてほしいと伝えて7分で抑えました。今日は9分くらい行けるかな、という感じでアジャストしてます」

コンディションはまだ100%に戻ってはおらず、身体と相談しながらのプレーが続いているが、「後退はしていないので」と、前向きに捉えている。

田臥がコートにいる時間帯はチームが締まり、落ち着きが生まれる。わずかなプレータイムでも、チームに好影響を与えている田臥は「出てない時にどう準備するか」が大事と説き、それは過去の経験で得た教訓だと明かした。

「20代のころからやってきてますし、アメリカ時代は試合に出れない時期もありました。出る準備の大切さは経験から学んできています。試合の展開を把握しながら、やるべきこと、やれることを常に考えながらやるようにして、1分だろうが2分だろうが、集中してやっています」

田臥勇太

田臥の新境地「できない部分も楽しみながら」

60試合の長いレギュラーシーズンを終えた栃木だが、一息つく暇もなく、来週にはすぐさまチャンピオンシップが待ち受ける。田臥も、「今は振り返るタイミングじゃないというのが正直なところ。なんなら、ここからだな、いよいよチャンピオンシップだなっていうマインド」と、レギュラーシーズンを終えた感慨は全くない。

レギュラーシーズンを49勝11敗の好成績で終えたことで、栃木はチャンピオンシップ初戦をホームのブレックスアリーナで開催する権利を得た。昨シーズンは敵地でシーホース三河に敗れたことを考えても、ホーム開催は大きなアドバンテージとなる。田臥も「あらためてチャンピオンシップをホームででできる強みを感じています。1点でも勝てばいい世界、今日以上に厳しい戦いになるのは間違いないので、ファンと一緒に勝利をつかみとりたい」と、ファンとの共闘を心待ちにしているようだ。

プレータイムに制限はあっても、チャンピオンシップに合わせるように田臥が復調していることは栃木にとって心強いプラスとなる。コンディションが戻るにつれ、「これできたな、あれできたなって、『楽しい』が増えてきている」という田臥。「できない部分も楽しみながら、できる部分を増やしていければ」と、バスケを純粋に楽しみつつ、来るべき決戦に臨む。