栃木のバスケットに順応、タイトル獲得に意欲
栃木ブレックスは前節、サンロッカーズ渋谷を相手に実力差を見せ付ける形で72-61、99-65と完勝を収めた。東地区優勝は千葉ジェッツに譲ったが、安齋竜三ヘッドコーチの下で激しいディフェンスと球際の強さを押し出したストロングスタイルが定着。試合を重ねながら修正を重ねて遂行能力を上げ、チャンピオンシップへの準備は着々と進んでいる。
シーズン途中に加入した比江島慎も、栃木のスタイルをモノにしつつある。自己犠牲を求められる栃木においては比江島も例外ではなく、自分の持ち味をキープしながらもチームプレーを優先している。アジャストにはそれなりに時間を要したが、こちらも仕上がりつつある。
「スペーシングだったり動き出しのタイミングだったり、細かいところですけどオフェンスの部分で課題がありました。前よりもボールはよく動いていたし、コートを広く使えていたので良かったと思います」と第1戦を終えた時点で比江島はそう手応えを語っている。
栃木で27試合に出場したうちスタメンは7回のみ。30分以上プレーするのが当たり前で、試合展開を考えながらペース配分をして、自分のリズムを作っていた三河での状況とは大きく異なり、ベンチから攻撃にアクセントを与えるのが比江島の役割となっている。
「今はベンチからの役割なので、セカンドユニットでもスタメン以上に良いプレーをすることを心掛けています。初めての経験だったので難しく、流れを変えられているかと言えばまだそうではないんですけど、勢いを与えられるプレーはできると思っています。最低限、スタメンを休ませるようには頑張っています」
「そんなに遠慮もなく自分のプレーを出していける」
その比江島は、14日の第2戦では遠藤祐亮に休養が与えられたことで久々となる先発を務めた。プレータイムは先発でもベンチスタートでも大差ないが、自分でペースを作る先発はやはりやりやすいのだろう。27分の出場で16得点5アシスト3スティール、さらには4つのファウルを引き出してSR渋谷を苦しめ、チームは今シーズンで2番目に多い99得点を奪った。
「今回はプレッシングもタイミング良く行けたし、前と比べたら余裕を持ってシュートを打てています」と比江島は語るが、良いパフォーマンスを見せれば、さらに上を求められるのがトップ選手のつらいところ。安齋ヘッドコーチは「もっと判断してアタックできるんじゃないかな、っていうのはある」とハードルを上げる。「ウチのディフェンスをやる分、疲れてオフェンスにパワーが残っていないというシチュエーションは正直あると思う」
もっとも、比江島は勝負どころを託されて結果を出し続けてきた。誰よりも彼自身が、勝負どころへの一本を決めることへ強いこだわりを持っている。それはライアン・ロシターを含めて、チームプレーに徹する栃木でずっとプレーする選手にはない部分だ。
「苦しい時間帯は自分の仕事になってくる。チャンピオンシップでは絶対にそういう時間帯は訪れるので、そういったところで点を決めていきたい。そんなに遠慮もなく自分のプレーを出していけると思うし、そこを要求されてもいるので、応えたいと思います」と比江島は言う。
勝負どころを託されるのはほとんどが外国籍選手、というBリーグにおいて、自らアタックして試合を決められる比江島の存在感は際立っている。三河を退団し、途中加入した栃木のバスケットへの順応に少なからず苦労したが、ゴー・トゥ・ガイとしての誇りは何ら失われてはいない。「あとはチャンピオンシップに向けて気持ちの面も上げていくだけ」と言う比江島。舞台が大きくなればなるほど本領を発揮する『日本のエース』への期待は高まるばかりだ。