「チーム全体で危機感を持たないといけない」
4月13日、14日と川崎ブレイブサンダースは新潟アルビレックスBBを相手にレギュラーシーズンホーム最終節を戦った。中地区首位の新潟相手にここで連勝すれば、地区優勝への望みを繋ぐことができたが、結果は最悪のものとなった。まずは13日の初戦に競り負け、ホームで新潟が地区優勝の歓喜に沸く姿を見る羽目に。さらに翌日の第2戦、主力選手を何人か休ませた新潟に対して74-84と連敗を喫した。
今シーズンの川崎は、地区再編により難敵揃いの東地区に比べると競争力は落ちる中地区へ移動。さらにニック・ファジーカスの存在により、帰化選手におけるルール変更の恩恵を最も受けるチームであることから、独走での地区優勝を期待されていた。
ところが、実際はファジーカスが故障によって出遅れ、さらにはファジーカス、篠山竜青と辻直人が代表活動でチーム練習にほとんど参加できず、思うように勝ち星を伸ばせない。こうして地区優勝を逃し、さらには昨シーズン(41勝19敗)よりも勝率を落とすことも確定した。
この現状について「危機感はあるのか」と問うと、ファジーカスは語気を強めてこう語る。「チーム全体で危機感を持たないといけない。それに何よりも、とても恥ずべきことだ。2年前はレギュラーシーズン最高勝率でファイナルに進出したチームが、そこから成績を落とし、今年は地区優勝を逃してしまった」
普段は穏やかな彼がここまで語るのは、負けた苛立ちもあるだろう。だが、それ以上に今シーズン、飛躍的に観客動員数を伸ばすなど大きく発展しているクラブの進歩と反比例するように、コートで結果を残せていないことへの申し訳なさがある。
この2日間ともに観客動員は4000人を超え、会場は川崎を応援する大歓声で包まれた。こういった光景はもはや珍しくない。しかし、東芝時代から所属し、今年で7シーズン目となるファジーカスは、観客が数百人しか入らない閑散とした会場でプレーした日々を知っており、今の盛り上がり、ファンの熱いサポートが当たり前でないことを身をもって知っている。
だからこそ「フロントが素晴らしい仕事をしてファンを増やし、素晴らしい環境を作ってくれた。それなのに地区優勝を逃してしまった。この成績を謝りたい」と感情的になるのだ。
「話すだけでなく行動に移さないといけない」
それでも、日本代表で世界の強豪相手にも勝てないことはないと豪語してきたファジーカスから、自信は失われていない。「今、僕たちはアンダードックだ。誰も優勝できるとは思っていないだろうね」と自虐的に語ると同時に、チャンピオンシップでの下克上を狙っている。
クォーターファイナルの対戦相手である栃木ブレックスは、レギュラーシーズンで4戦全敗と明らかに分が悪い。ただ、「4戦全敗は気にしていない。2試合は接戦で自分たちにも勝つチャンスがあった。チームの成長具合はまだまだ足りないけど、過去の対戦からチームは大きく変わっている」と言う。
大黒柱としてチームを牽引する覚悟を持ちつつも、「僕一人だけで何かができるわけではない。みんなでもっとやらないといけない」と、チームメートにも発破をかける。
味方を生かす献身的な動き、スタッツに出ないプレーの大切さは十分に理解しているが、それでも「栃木に勝つにはどうしたらいいのか、話すだけでなく行動に移さないといけない。20分とか25分もプレーして1点とか2点、1リバウンドとか2リバウンドではダメなんだ」と、コートに立った選手は自分がチームを背負う覚悟を持って積極的にボールに絡んでいくべきと続ける。
チャンピオンシップまであと2週間しかない。それでもどんな状況、どんな強敵が相手でも勝利をあきらめないファジーカスは、川崎の底力を信じているからこそ自分たちの不甲斐なさへの怒りを隠さない。