ジェイデン・アイビー

アサー・トンプソンが血栓症から戦線復帰

ピストンズに大きな期待を寄せる者にとって、8勝11敗という成績は物足りないだろうが、それはあくまで少数派の意見だ。再建が思うように進まないここ数年のチームを見てきたファンは、ここまで8勝11敗という成績は若いチームが一つにまとまり、同じ方向を見て戦っている健闘の結果だと認識している。

終盤まで一進一退の攻防が続いた現地11月25日のピストンズvsラプターズは、100-100で迎えた最後の攻めでジェイデン・アイビーがブザービーターを沈めてピストンズが勝利した。ピストンズはケイド・カニングハムのチームで、彼がボールを手にするところからすべてのプレーが始まる。だが、彼がケガで欠場したこの試合の勝負どころでボールを託すのはアイビー以外になかった。

残り22秒でスコッティ・バーンズに同点のレイアップを決められると、J.B.ビッカースタッフはタイムアウトを取り、アイビーに「お前がやるんだ」と伝えた。アイビーはこの時をこう振り返る。「僕がシュートを打つことになって、プレーが再開される前に僕は祈った。『特別な力を授けてください』と願う僕に、神が最後のプレーをやり遂げる力を与えてくれた」

アイビーに迷いはなかった。マリーク・ビーズリーのスクリーンを使ってオチャイ・アバジとの1対1に持ち込むと、一瞬の加速で相手を振り切ってジャンプシュートを放つ。身体は流れていたが、彼の目はリングを正確に見据えていた。試合終了のブザーとともにボールがリングに吸い込まれると、ピストンズベンチの目の前にいた彼はすぐチームメートに揉みくちゃにされた。

「神のおかげで勝つことができた。最高にエキサイティングな気分だったよ」とアイビーは言う。カニングハム不在のチームを25得点8アシストで引っ張った彼の奮闘がなければ、バーンズが31得点14リバウンド7アシストと大暴れしたラプターズには勝てなかっただろう。

アイビーは言う。「今日は僕にボールが回ってくる機会が多かったけど、チームメートを生かすことを優先した。チームを上手く動かし、試合の流れをこちらに持ってこようとした。ケイドの不在はチームにとって痛手だけど、だからこそボールをシェアしてお互いを利用しなきゃいけない。みんなでボールを共有し、同じリズムでプレーできていると最高に楽しいよ」

ピストンズにはもう一つ良いニュースがあった。アサー・トンプソンの戦線復帰だ。昨年の1巡目5位指名でピストンズに加わったトンプソンは、ルーキーイヤーから主力として活躍していたものの、血栓症が判明して3月上旬から療養に入っていた。8カ月半ぶりにプレーが許可されたトンプソンは、ベンチからの出場で16分プレーして5得点3リバウンド4アシストを記録している。

「長いブランクが明けたばかりだから、奇妙な感じだった」とトンプソンは言う。「新しいコーチの下でプレーするのは初めてで戸惑ったけど、チームメートが『ただバスケをプレーすればいい』とアドバイスしてくれたおかげで楽になれたよ」

昨シーズンは14勝しか挙げられなかったが、今シーズンはすでに8勝目。勝利を積み重ねることで、若い選手たちは自信を増している。再建を始めてから3年。なかなかチームが上向かなかったピストンズだが、ビッカースタッフ新体制になった今シーズンは、少しずつ着実に進展を見せている。