トレイ・ジョーンズ

「2人で群馬の根っこの部分を作ってきた」

群馬クレインサンダーズのマイケル・パーカーとトレイ・ジョーンズは2018-19シーズンに千葉ジェッツで初めてチームメートになると、その後2020-21シーズンから再び群馬で共闘し、合計で6年目のシーズンを迎えている。B2時代から大きく発展を遂げた群馬を支えてきた2人は、今の状況をどう感じているのか。そして、お互いのこと、チームのこと、日本バスケ界のことなどを話してもらった。

──最初のテーマは「マイケル・パーカー」でお願いします。

パーカー:難しいな(笑)。

ジョーンズ:マイクは、このリーグにおいてすごく存在感のある選手だよ。勝つことをリードできる選手でもある。チャンピオンになることに対する競争心は1番強いね。

パーカー:でも、もういい歳(12月5日で43歳)になってきた(笑)。まだまだプレーすることが楽しいと思えるレベルでやれているから続けられているよ。

ジョーンズ:本当にすごいね(笑)。きっと僕がマイクの年齢になったら、ベンチに座ってリーダーシップを取ればいいと思ってしまう。ただマイクは必要とされたら、今でも40分コートに立てるんだ。若い選手と同じようにプレーしているんだから、それはリスペクトだね。

パーカー:勝ちたい気持ちだけなんだ。常に強いチームでいたい気持ちでここまでやってきたから。

──続いて「トレイ・ジョーンズ」でお願いします。

ジョーンズ:さっきのマイクの話の続きみたいになっちゃうけど、自分としてはもう若くないと思っていて……。でもマイクの存在があるから、若いままのトレイ・ジョーンズでいられる。まだまだマイクができているから「自分は歳だから」と言い訳ができない状況にしてくれている。

パーカー:NBAやいろいろなキャリアがあるプレーヤーだけど、チームの基盤になれる選手だね。点を取るだけの選手はたくさんいるけど、トレイのように基盤になれる選手はそう多くない。

ジョーンズ:群馬に来た当初は、スコアでチームを引っ張る必要があった。でも、今はチーム状況も変わってチームメートがベストな状況でいられるために自分が何をしなければいけないかと考えるようになってきたんだ。

パーカー:試合中はみんな熱くなるんだけど、トレイは常に落ち着いている。その落ち着きが周りの選手に良い影響を与えてくれているね。

ジョーンズ:木は根っこがしっかりしていれば大きく高くなるもの。チームを木に例えると、根っこがしっかりしていないと良いチームにならず、ファンにも良いバスケを届けられない。僕とマイクでその根っこの部分を作ってきたと思っているよ。

──チームの成長という話が出ましたが、2人はB2時代、ホームタウンの移転、オプアリ開業とクラブの目まぐるしい発展を見てきました。次は「群馬クレインサンダーズの成長」でお願いします。

パーカー:初めて群馬に来た時は、毎日違う体育館で練習したり冷暖房がなかったり、そういう環境だった。その時のクラブを知っているからこそ、すさまじい成長だと思っているよ。

ジョーンズ:本当にそうだった。もちろん地域の人やファンの支え、クラブの頑張りがあって今の環境がある。今とは違った環境からスタートしてきたことを知っている所属選手は僕たち2人だけになったけど、それを経験できたのは今となっては良いことだったと思っている。当時、僕たちが想像していた以上に素晴らしい環境になっているよ。

トレイ・ジョーンズ

「スタイルが新しく変わったけど、今シーズンのバスケは戦いやすい」

──群馬に限らず日本バスケ全体の盛り上がりを感じているかと思いますが、次は「日本のバスケットボール界」でお願いします。

ジョーンズ:テレビやSNSはあまり見ないので、どれだけ取り上げられているかは分からないんだ。正直、僕が日本に来た時にはバスケットボール自体がそもそも知られていないという感じだったと思う。ただここ数年は町を歩いても「バスケットボール選手だ」と気がついてもらえることが多くなって、日本においてバスケットボールの存在が大きくなっているのを肌で感じているね。

パーカー:自分もよく声かけられるよ(笑)。Bリーグになる前からプレーしているけど、試合会場も練習する体育館も今とはまったく違っていた。だから、群馬に限らず、アリーナの成長はすごく感じているね。リーグやクラブなど多くの人がプロモーションしてくれて、ここまで成長したことは本当にうれしく思っているよ。

ジョーンズ:それはチームだけでなく、リーグの成長を感じることだよね。あとは代表チームが世界相手にしっかり戦えていて、「日本のバスケはすごい」と認識され始めたことも一つの要因かな。

──ここ数年で日本人は世界でも通用することを証明してきました。日本に来て「この選手はすごい」と思った日本人選手はいますか?

パーカー:富樫勇樹(千葉J)かな。一緒にプレーしていたけど、ものすごいスマートに物事が見える選手だと感じたよ。あと最近の選手だと河村勇輝。2人とも似たようなタイプの選手だと思っているんだ。河村はBリーグで実力を証明して、今NBAの契約をつかんだ。これはBリーグの成長とともに実現できたことだったと思う。もし富樫が若い時に今の盛り上がりが起きていたら、きっと彼も河村と同じようになっていたはずだね。

ジョーンズ:自分も1人だけ挙げるとすれば富樫かな。ただ代表選手は、NBAやユーロリーグの選手相手にも十分に戦えている。前は勝ち目がないと思えることもあったけど、今は対等に戦えているので素晴らしいことだね。世界から「日本人は手の抜けない相手」と思われるようになったのはすごいことだと思うよ。

──では最後に、ヘッドコーチも代わりスタイルも変わった「今シーズンの群馬クレインサンダーズ」についてお願いします。

ジョーンズ:選手も変わったので今は新しいシステムのバスケットボールをやっているところ。今シーズンは「オフェンスをしっかり作って、みんなでプレーしてほしい」とコーチから言われている。才能あふれる選手が多いけど、システムとして自分たちに落とし込んでくれているから、自然な感じでプレーできているね。

パーカー:そうだね。新しいコーチが来れば新しいバスケットボールになるのは当たり前のことだけど、今シーズンのバスケは自分も戦いやすいものだと感じている。今シーズンは「どうやっても勝てなかった」という負けはないんだ。もう少しここが良ければ勝てていたという敗戦しかないから、これから負けパターンの修正をしていけば、必ず勝てるはずさ。

ジョーンズ:確かに。ここまでスタッツの部分でも昨シーズンより成長を感じられているから、自分たちの行きたいゴールであるチャンピオンまで戦い抜けたらいいね。