「僕らのゲームプランは『激しく戦うこと』だ」
ケビン・デュラント不在のサンズとパオロ・バンケロ不在のマジック。どちらもエースが欠場していても、4連勝中のマジックと3連敗中のサンズでは勢いに差があった。第2クォーターに抜け出したマジックは、後半のほとんどの時間帯で2桁のリードを保ち、109-99で勝利した。
マジックのディフェンスはバンケロに依存しない。多くの選手がコートに立つことで48分間インテンシティを高く保つ。むしろウェンデル・カーターJr.の欠場がゴール下の高さの点で影響が大きいものの、これもチーム力でカバーしている。
このバスケをマジックに植え付けたジャマール・モズリーは「シュートが決まるかどうかはコントロールできないが、ディフェンスは自分たちの姿勢、エネルギー、努力という点でコントロールできる」と語る。
選手たちはそのコンセプトを忠実に遂行し、ディフェンスから試合の主導権を握る。そこではジェイレン・サッグスやケンテイビアス・コールドウェル・ポープといったディフェンス巧者も主役ではなく、ベンチから出るアンソニー・ブラックやジョナサン・アイザック、モリッツ・バグナーも含めて、誰が出てもインテンシティを高く保てるのが強みだ。むしろ、ペース配分を無視して常に全力を出すセカンドユニットこそが、マジックのハードワークを象徴しているとも言える。
しかし、オフェンスとなるとチームワークには限界があり、やはり誰が突出した存在が必要だ。バンケロが戦線離脱した後にチームは4連敗を喫したが、そこで奮起したのがフランツ・バグナーだ。バンケロを中心とするハーフコートをなぞるのではなく、ランニングプレーで強みを出せるバグナーを生かすためにプレースピードを上げ、良いディフェンスからブレイクに繋ぐようにチームが意識を変えたことで、バグナーの得点能力と噛み合った。
サンズ戦のバグナーはフィールドゴール24本中12本成功の32得点を記録。この6連勝中はすべての試合でチーム最多の平均29.0得点と、文字通り得点でチームを引っ張っている。サンズ戦を終えた彼は「正直に言って、ここまでの僕たちのベストゲームだと思う」と胸を張ったが、その後にこう続けた。
「でも、このリーグで一つ勝つのがどれだけ難しいかは分かっているし、最高のプレーができた時だけ勝てばいいってわけでもない。僕らのゲームプランは『激しく戦うこと』だ。ブリッツからボールを奪ってトランジションに持ち込むシーンが何度かあったけど、その時に『このメンバー5人が見えない糸で繋がっているみたいだ』と感じたよ。素晴らしい感覚だった」
サンズ戦を前に、東カンファレンスの週間最優秀選手に選ばれたバグナーは「超クールだね」と言う。「もちろんうれしかったけど、僕というよりチーム全体がこの調子を続けていければいいなと思うよ」