桜花学園は過去2年間で全国優勝から遠ざかっており、今の3年生は全国制覇を経験していない。その3年生たちは『常勝』の桜花学園を背負う重みを感じながらチームを引っ張り、高校バスケ最後の挑戦となるウインターカップに臨もうとしている。オールラウンダーの阿部心愛とインサイドの要となる白石弥桜。優勝だけを見据える3年生コンビに、その思いを聞いた。

「自分がやるべきところはしっかり役割を果たす」

──阿部選手は『バスケット・カウント』初登場になります。まずは白石選手から阿部選手を紹介してもらえますか？

白石　初対面の人はクールでちょっと怖いかもって思うみたいですけど、実際そうでもないです。頭は良いんですけど……変な人？

阿部　お茶目？

白石　お茶目ではない。お茶目って言うか、変な人です（笑）。

阿部　ちょっと！（笑）

白石　変な人だけど頼れる部分も大きくて、しゃべる言葉に説得力があると言うか、すごくみんなに響くんです。コート上でもセンターじゃないのに力強いプレーができて、体幹もすごく強くて、いつもプレーでチームを引っ張ってくれる信頼感があります。

──阿部選手は双子の妹、阿部友愛選手が聖和学園でプレーしています。そもそもバスケは一緒に始めたんですか？

阿部　それが違うんです。小学校3年の時に私が友達に誘われてバスケを始めたんですけど、妹の友愛は「私はテニスやりたい」とか言って入らなかったんですよ。でも、小学校低学年のちびっこ戦みたいなのに助っ人で来たらバスケが楽しかったみたいで、それから入って来ました。

──双子の姉妹で連絡はよく取っていますか？

阿部　家で一緒に住んでいた時はケンカも結構したんですけど、今は仲が良いですね。バスケの情報交換はしないんですけど、「髪切ったよ」みたいなどうでもいい連絡が来ます（笑）。ライバル関係ではありませんが、妹の友愛が良いプレーをしていたり、ちょっと取り上げられたりすると「あ」とは思います（笑）。プライドと言ったらなんかネガティブなイメージですけど、負けず嫌いなんです。

──白石選手は去年、福王伶奈選手と一緒に取材させてもらいました。福王選手が卒業してペイントエリアを任されるようになって、どんな成長がありましたか？

白石　福王さんは私より身長のあるセンターで、去年は頼りっぱなしでした。でも今年は私が一番背が高いし、自分がリムを守らなきゃいけないので、周囲に頼るべきところはちゃんと頼りながら、自分がやるべきところはしっかり役割を果たせるように。やっぱり桜花学園は代々、インサイドの強さが特長なので、オフェンスではシールのところで強さを見せて、ディフェンスでは最後の砦にならないといけないと思っています。

「苦しい時に自分たち3年生がブレちゃいけない」

──U18日清食品トップリーグでもウインターカップ予選の決勝でも、去年に比べて頼もしくなり、堂々とプレーしているという印象がすごく大きかったです。

白石　それはうれしいです！ 私は自己肯定感が低めと言うか、あまり自信がないので。頼りないと言われることもあるし、だからそうやって言ってもらえるとうれしいです。

阿部　照れてる（笑）。

白石　「頼りない」と面と向かって言われるわけじゃないんですけど、自分でそう思ってるというか。阿部さんはなんかドーンとした存在感、インパクトがあるじゃないですか。

阿部　ないよ！（笑）

白石　プレーも含めた存在感みたいなものが私にはないと自分で思ってるので……。でもこれからは自分がやるべき場面でちゃんと存在感を見せられるよう頑張ります。

阿部　試合中は自信がないようには見えないよ、本当に。

白石　最近は負けず嫌いが出ているかも。それこそ大会が近くなって気持ちが入って来ているのかもしれません。負けるのはそもそも悔しいし、練習の一つひとつでも負けたくない。アシスタントコーチの白慶花さんに負けるのも悔しいんですよね。

阿部　練習に慶花さんが入ってくれるんですけど、そのマッチアップで燃えてます（笑）。

白石　この前、練習でブロックされた時に慶花さんが「よォォォし!!」って。それを悔しがってたらどんどん煽ってくるようになったので、それが悔しくて次の日に3回ブロック決めてやりました（笑）。

阿部　決めた時の喜びようはすごかったですよ（笑）。

白石　やっぱりWリーグの経験があるのでパワーもものすごく強いし、全力でぶつかってすごく良い練習をさせてもらってます（笑）。

──去年のウインターカップでは岐阜女子に大逆転負けを喫しました。あそこからどんな気持ちで1年を過ごしましたか？

阿部　去年負けた原因は3ポイントシュートを何本も決められたことだったので、ディフェンス力を全体的に上げることを個人の目標としてやってきました。脚力をつけること、手の使い方、自分のマークマンがボールを持っていない時のディフェンスの位置を工夫するとか、そういうことを1年間意識してきました。

──チームリーダーの自覚は、どのようにして生まれましたか？

阿部　私は去年から試合に出ていましたが、頼もしい先輩がたくさんいて、ありがたいことに気負わずにプレーできていました。でも3年生になって、最近はパワーフォワードをやるようにもなって、4番の重みと最上級生の重みを感じながら、自分が引っ張っていく自覚は結構持てていると思います。大事なのは、こちらの流れじゃない苦しい時に自分たち3年生がブレちゃいけないことです。去年は正直そこまで「自分で行こう」と思う気持ちがなかったんですけど、今は「自分が行かなきゃ」と思っています。

白石　私も去年は福王さんがいて、先輩の話を聞いてそのプレーに合わせることを意識していました。今年は3年生になって、インサイドで一緒に組むのが下級生になることも多くて、自分から伝えていかなきゃいけないとすごく思っています。共通認識を持って動かないといけないし、それは自分の考えを分かりやすく伝えるところから始まると思っていて、そこは今年になって大きく変わった部分です。私はこれまでの経験で留学生とマッチアップしてきた回数も多いし、自分の役割はそこだと思っているので、頑張ります。

「点差はともかく、終始リードして終わりたい」

──ウインターカップに向けて、桜花学園が勝つためのカギは何だと思いますか？

阿部　たくさんありすぎるんですけど、まずはディフェンスからのブレイクが桜花学園の代名詞というか、皆さんのイメージだと思うので、全員で守った後に全員で走るバスケを徹底すること。あとは金澤杏の3ポイントシュートだったり三國ソフィアエブスや竹内みやのスピードという武器があって、私も中と外の両方やるスタンスなので、相手の弱みを突いたバランスの良い攻めができるかがカギになると思います。

白石　私は個人的に留学生とのマッチアップだと思っています。岐阜女子にしても京都精華学園にしても、そこで点を取られたりリバウンドを取られたりしているので、そこで自分が抑えればチームも勝てるという気持ちで、自分が責任を持って守ります。

──では最後に、ウインターカップへ向けた意気込みをそれぞれお願いします。

阿部　チームとして日本一を目指すのはもちろんなんですが、一戦一戦を大事にしていかないといけないので、やるべきことの共通認識を全員で持ちながら戦っていきたいです。個人的には、最後だから悔いのないよう自分のすべてを出し切りたいです。

白石　個人的には阿部さんと一緒で、後から見返した時に後悔しないようなプレーを毎試合やっていきたいです。チームとしてはやっぱり最後なので、3年生は特にですけど、チームの中でいっぱいしゃべってコミュニケーションを取って、明るく楽しくやりたいです。

阿部　最後はどんな形であれ優勝して終わりたいです。でも、去年のウインターカップの岐阜女子戦も今年のインターハイの京都精華学園戦も、負ける時は全部リードしている展開から逆転されているんですよね。だから点差はともかく、終始リードして終わりたいです！