前田健滋朗HC「ブザーが鳴るまでプレーすることができなかったことが1番悔やまれます」
B1第6節、滋賀レイクスはアウェーで群馬クレインサンダーズと対戦。第1戦は点差をつけられながらも終盤に追い上げ1点差での惜敗となったが、第2戦は後半に集中力が切れ65-102の大敗を喫した。
試合序盤、滋賀はしっかりとプレーメークしたところから江原信太朗が連続してコーナースリーを成功させて最高の滑り出しを見せるが、インサイドの脆さを露呈し逆転を許す。10本中6本の3ポイントシュートを成功させるも、ディフェンスでは翻弄される場面が多く24失点を許した。第2クォーターにはエースのブロック・モータムを中心に得点を重ねるものの、群馬の3ポイントシュート攻勢を抑えることが出きずに点差を広げられて前半を終えた。
9点ビハインドで後半を迎えるも、出だしから群馬に流れを持っていかれる苦しい展開に。そして攻守に渡り大きな盛り上がりを見せることができず、11-32のビッグクォーターを作られて敗れた。
これで滋賀は6連敗となり、1勝10敗に。試合後、前田健滋朗ヘッドコーチは結果以上に、戦う姿勢に大きな憤りを感じたと話した。「点差もですが、我々滋賀レイクスがどういったチームであるべきかというところで、ブザーが鳴るまで最後までプレーすることができなかったことが1番悔やまれます。勝ち負け以前にプロのクラブとしてどうあるべきか。個人、そしてチームとしてもう1回しっかりと考え直す必要があります。こういったゲームはあるべきでないですし、こういった姿勢は1秒たりともあってはならないです。まずは私が先頭に立って変化していきたいです」
バスケットボールを仕事にできることは幸福なことであり、当然なことではないと考える前田ヘッドコーチにとって、今回の試合は応援してくれている人に対して絶対に見せてはいけない姿勢だった。「滋賀から来てくださっている方が30点開いたとしても多くの声援を送ってくれている状況に対して、報えなかったことを本当に申し訳なく思っています」との言葉の通り、実際に滋賀から群馬まで駆けつけたブースターは何点離されてもチームを後押しすべく、最後まで声を枯らして応援していた。
滋賀はオフの間に数シーズンに渡り中心を務めた選手が退団。ヘッドコーチも交代して新しい歴史を作るべく再スタートを切った。日本人選手は複数年契約を結んでおり、中期的なビジョンを持って今シーズンに挑んでいるが、前田ヘッドコーチの言葉からも分かるように、文化作りにおいて戦う姿勢がなければ当然結果も伴ってこない。
「チャレンジする側なので自分たちからやらないといけなかった」
若い選手も多い中で奮闘しているのが、プロ3年目の常田耕平だ。大学時代に特別指定選手として三遠ネオフェニックスに加入してB1のコートに立ったことはあるが、出場機会は多くなかった。その後、青森ワッツで2シーズンに渡って活躍を見せ、今シーズン初めて主力としてB1の舞台に挑んでいる。
この試合でも流れが群馬に傾いていた第2クォーターに8得点を挙げて、食らいつく姿勢を見せていた。ディフェンスでも辻直人やトレイ・ジョーンズといったスコアラーにマッチアップして、一歩も引かない強気なプレーでもチームを支えた。
積極的なプレーは見せていたものの、大敗した結果を受けて常田は「前半から相手にエネルギッシュにやられてしまいました。五分五分のボールを取り切れなかったり、相手がフィジカルにやってくることに対して引いてしまいました。それが前半の点差から後半の流れに繋がってしまったので、もっと自分たちもアグレッシブにプレーできればよかったです」と言う。さらに「自分たちはチャレンジする側なので、自分たちからやらないといけなかったです」と続けた。
前田ヘッドコーチは奮闘する常田を評価し、今後のプレーヤー像についても言及した。「どんな状況でもファイトし続ける、ハートの素晴らしい選手です。このB1の中でも3&Dのスペシャルな選手になろうという話は彼ともしています。それを確立して、そこから武器を増やしていくというのを思い描いています」
もちろん、常田も自分の強みや役割を理解している。「ディフェンスの部分ではトーンセットだったり、相手のキーマンになる選手にマッチアップしてほしいとヘッドコーチから言われています。そこに関しては自分の中で責任感と自覚を持ってやっています。ただ自分1人では止め切れないシチュエーションもありますし、難しい場面も出てきてしまいますが、1試合1試合積み上げて経験できています」
「昨シーズンできていたハンドラーの役割は課題」
近年は予算を多く持ったB2クラブも増えてきていて、B1で主力を張っていた選手がB2クラブに移籍することもある。そして昨シーズンの経験から、常田はディフェンス面で手応えを感じていると言う。「昨シーズン、アルティーリ千葉や越谷アルファーズ、もちろん滋賀もですけどB1レベルの選手とマッチアップする機会は多かったので、ディフェンスの部分では今シーズンB1でもあまりギャップを感じていません」
ただし、オフェンスはもっと伸ばしていく必要があると感じているようだ。「オフェンスはB1で自分のやれることとやれないことが見えてきています。3ポイントシュートは自信を持って打てていますが、昨シーズンできていたハンドラーの役割は自分の中では課題です。ただ、試合を通じて少しずつできるシチュエーションも見えてきました。セカンドハンドラーは必要になるので、しっかりとできるレベルまで持っていきたいです」
苦しい戦いが続いているがシーズンは進んでいく。次節はホームに戻って、佐賀バルーナーズとの対戦が中2日で待っている。次節の意気込みを聞くと、少し恥ずかしそうに笑みを浮かべて答えてくれた。
「個人的に誕生日なので(笑)。勝ってお祝いの日にしたいなと。今日もそうですし、この間の横浜にもたくさんの滋賀のブースターさんが足を運んでくれて、本当にありがたいです。今日みたいなドアウェーと言ってもおかしくない中でも、一致団結して相手に負けない声を出してくれたブースターさんのためにも、勝ちたいです」
ひとしきりインタビューが終わったところで、ぼそっと発した「勝ちたいですね」の一言にすべてが詰まっていた。再スタートを切った滋賀において常田の熱いプレーはチームにとって大きな推進力となるだろう。勝ち星に恵まれず、もがくシーズン序盤となったが、この経験が成長の糧となって花開く時は必ず来るはずだ。
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