勝負どころの時間帯でゲームコントロールを長く任される
川崎ブレイブサンダースは第5節で群馬クレインサンダーズをホームに迎え、悔しい2連敗を喫した。62-89で敗れた第1戦は第3クォーター13-26、第4クォーター5-25というスコアで、2ポイントフィールドゴール成功率は32.1%という惨憺たる内容。記者会見に登壇したロネン・ギンズブルグヘッドコーチは、後半だけで18本も奪われたオフェンスリバウンドとディフェンスの遂行力の低さを敗因とした。
第2戦は第4クォーター終盤に辻直人と藤井祐眞、奇しくも元川崎に所属していた両選手に勝負強いシュートを沈められて68-75で敗れたが、第1戦とは異なり最後まで勝敗の行方が見えない戦いに持ち込むことはできた。ギンズブルグヘッドコーチは「昨日みたいな負けから一晩で立ち直れるチームはそう多くない。相手のオフェンスリバウンドをしっかり止めることができたし、ターンオーバーも抑えられた。チームの成長を感じたし、誇りに思う」と話した。
第2戦で見られた改善は他にもあるが、本稿で取り上げるのはポイントガードの柏倉哲平だ。滋賀レイクスから今シーズン加入した柏倉は開幕以来、いわゆるガベージタイムでしかプレータイムを得られていなかったが、第3クォーター残り2分46秒、41-48というスコアでコートインすると、同点に追いつく9-0のランのきっかけを作った。
おそらくこの柏倉の起用には、3つ目のファウルを犯しプレータイムが長くなっていた篠山竜青の、コンディション調整の意味合いが多分に含まれていたと思われる。しかしギンズブルグヘッドコーチは第4クォーターもそのまま柏倉を起用し、柏倉もその期待に応えるように的確に試合をコントロール。指揮官は篠山をコートを戻すタイミングにずいぶん頭を悩ませたことだろう。
シーズン前の取材で、篠山は柏倉について「60試合という長いシーズン中、テツの存在はじわじわ効いてくると思う」と話していた。コート上でその片鱗を見せた柏倉に試合後、単独インタビューを行った。
──今日はかなりまとまった時間プレータイムがありました。どのような意識を持ってコートに立たれましたか?
自分のポイントガードとしての一番の役割は、オフェンス面ではみんなを落ち着かせることと、どういうプレーを遂行するかという共通認識を持たせることだと思っています。ディフェンスではミスをなくすこと。自分が出ているときは遂行力高く守ることが求められているので。特に今日は勝負どころかつ我慢の時間帯でしたし、コートに入る時には「まずはディフェンスから自分たちの流れに持って来られるように」というマインドで臨みました。
──勝負どころで起用されたことに対して、気負いはありましたか?
いや、ないです。「このチームにどうやって貢献しよう」とずっと考えながら準備をしてきた自信がありました。特別なことをやるのでなく、一つひとつのディフェンスをミスなくやることであったり、オフェンスで…特にあの時間帯はチームとして何のオフェンスをしてるのかわからなくなっている時間帯だったので、みんなに「今はここで攻めるんだ」っていうことを理解させて、良いシュートで終わらせる。そういう明確な目的を持ってコートに入ったので気負いはないです。
試合映像は毎回見ていますし、自分たちがうまくいってるとき、うまくいってないときの違いは理解しているつもりです。ボールムーブがない時に苦しいシュートで終わってしまったり、ターンオーバーで相手に流れを持っていかれがちなのは明らかなので、練習時間はもちろん、試合中もずっとベンチで「自分が出たらこういうことをやろう」と考えています。
ひたむきに努力できるチャレンジがしたかった
──これまでの川崎は、3番手4番手のポイントガードがプレータイムを得るのが難しいチームでした。柏倉選手はなぜ川崎からのオファーを受けられたのでしょうか。
去年、滋賀で「チームをB1に昇格させる」という絶対的な目標を達成して、あと何年プロでいられるかわからない中で、どんなチャレンジをしたいだろうと考えていたときに、川崎からオファーをいただきました。学生の頃からずっと見ていた歴史と伝統のあるチームだし、川崎のバスケットが好きだったので、チームが新しく変わるタイミングで携われることに魅力を感じました。また1から、ではないですが、ひたむきに努力できるチャレンジがしたい。それが1番自分の心を動かした、移籍を決めた理由です。
おっしゃるように、簡単にプレータイムを勝ち取れるとは思っていません。そもそもプレータイムは競争を経て自分で勝ち取るものだと思っています。シーズン序盤になかなかプレータイムがないことも「どうしたら自分がチームに貢献できるか?」ということを考え、より自分と向き合う良い機会ととらえています。ただ、「出れなくてもいいや」なんてことは1ミリも思っていません。ガードの層の厚みを増すためにももっと竜青さんと幸也(小針幸也)を脅かす存在にならないといけない。常に向上心を持って取り組みたいです。
──新しい川崎を担う一員になって、今、どんなことを感じていますか?
やっぱりまだまだだと思うんですよね。トランジションバスケの遂行力が高くないというか、できているときとできていないときの波がある。そういう状態で一番求められているのが、選手それぞれの状況判断。ネノ(ギンズブルグヘッドコーチ)は「これをやれ」というより「しっかり自分で判断してプレーしなさい」という指示を出すので、選手自身が素早く正しい状況判断をしなければいけないと思います。正しく判断しながらプレーできるようになれば、どんな相手でも自分たちのバスケができる強いチームになれると思うので、すごくやり甲斐があります。
──チームに貢献するために、今はどんなところに重点を置かれていますか?
一番はディフェンスで存在感を出したいです。ボールマンへのプレッシャーにもそうですし、オフボールで誰について、相手がどういう選手でっていうことを理解することもそう。当たり前のことを当たり前にできる選手は貴重だと思うんで、波を作らず、常に高い基準でディフェンスしたいです。オフェンスに関しては、ペイントアタックが少ないときや1人が長くボール持っているときは流れが悪くなるので、自分もアグレッシブにペイントアタックした上で仲間を生かすゲームコントロールをすることを考えながらプレーしたいなと思ってます。