文=杉浦大介 写真=Getty Images、安田健示

目標となるNCAAトーナメント出場を逃したジョージ・ワシントン大だが、渡邊雄太個人に収穫がなかったわけではない。3年生となりチームを引っ張る立場となった今シーズン、ジョージ・ワシントン大の『顔』としてプレーし、攻守に存在感を発揮。特に相手のエースと常にマッチアップして抑え続けたディフェンスでは、カンファレンスの『オール・ディフェンシブ・チーム』に選ばれる快挙を成し遂げている。
今シーズンの戦いで彼が得たもの、そしてこれから進むべき道について、渡邊に語ってもらった。

まだまだすべての部分で成長しないとNBAには到達できない

──それでは今シーズンを振り返りたいのですが、渡邊選手個人としてできたこと、手応えを感じた部分はどこですか?

シーズン終盤にはピック&ロールからのジャンプシュートが自分の中で一つの武器になり、得点を重ねられるようになりました。得点する手段、テクニックを一つ増やせたのは大きな収穫ですね。

あとはディフェンス面で目標にしていたA10カンファレンスのオール・ディフェンシブ・チームに入ることができました。今季を通じてずっと相手のエースとマッチアップして、その中で積み重ねた努力が実ったという感じです。

──屈指のペリメーター・ディフェンダーとして、ディフェンス面ではもうカンファレンス内で名前を知られる存在になりましたね。逆に自身で物足りなかった点は?

2月中盤から3月頭くらいまではなかなか点が取れず、1桁得点が続いた時期がありました。その時期には消極的になってしまってい、そこは直さなければいけないと思います。

──今よりさらに上のレベル、NBAを目指す選手として、現在の立ち位置を自身でどう認識していますか?

まだNBAのレベルには達していません。まだまだすべての部分で成長しないと、その目標には到達できないというのが正直な気持ちです。カレッジでの期間はあと1年残っています。気持ちを切り替えて、このCBIトーナメントは今のチームで戦い切って、その後のオフシーズンでは足りないところを努力していきたいです。

4年生の年は後悔だけは残したくないですからね。1年の時から目標にしてきたNCAAトーナメント進出のチャンスもあと1年しか残っていないので、やれるだけのことは全部やろうと思っています。4年生のシーズンで良い結果を残し、NBAに繋げられたらという気持ちです。

──NBAのスカウトに注目されるには、何か一つ特筆すべき長所が必要になると思います。そういった意味で、今年1年の間でディフェンスの評価を確立できたことは大きいと思います。

そうですね。ディフェンスでは高い評価をもらっていると思います。ガードの選手に対するディフェンスはだいぶうまくできるようになったので、今後は目標にしているポストディフェンスも向上させなければいけません。あと、オフェンスはまだ毎試合で波があります。良い時は良いのですが、悪い時はダメ。その波をなくし、どんな時でも点が取れるようになれば、NBAも見えてくるのではないかと思います。

アメリカ挑戦するのなら、英語の勉強はやっておくべき

──ところで、今年の春から夏にかけて、日本代表の活動に参加する予定はありますか?

先日、日本代表の関係者の方に何人か来ていただいて話をしましたが、授業の関係でここに残らなければいけない可能性があるんです。卒業に向けて、単位がギリギリなんですよ。夏に取れば間違いなく卒業できるんですけど、この夏に代表を優先してしまうと、秋から春に多めに授業を取らないと卒業できなくなってしまいます。

最後のシーズンを迎えるにあたり、なるべく授業に時間を取られたくないという気持ちもあります。だから上手くタイミングが合えばという感じですね。

──渡邊選手に刺激されたことで、今は「アメリカの大学に行ってNCAAに出場する」ことを目標にする中高生プレーヤーがたくさんいます。彼らにメッセージをお願いします。

アメリカに挑戦する気持ちがあるのなら、まず英語の勉強だけはしっかりしておくべきです。その部分でアメリカに来た人は苦労しています。時間があるうちに、日本でも勉強できることはたくさんあると思うので。

あとは、NCAAの映像を見れるのであれば、大学のバスケットがどういうものかを見ておくだけでも、だいぶ変わってくると思います。見る機会があるなら、できるだけ多くの試合を見ておいたほうがいい。僕も来る前と来た後では大学バスケットの印象が全く違ったんですよ。もちろん入ってみないと細かいところまでは分からない。ただ、見て学んでおくというのは大事なので、その2つは意識しておいてほしいと思います。