ブランドン・イングラム

新契約を勝ち取れないまま迎えた開幕戦でエースの働き

ペリカンズがホームにブルズを迎える開幕戦、エースのザイオン・ウイリアムソンは体調不良で欠場した。それでもペリカンズは後半のほとんどの時間帯でリードを保ち、123-111で勝利している。

試合を通じてペリカンズを牽引したのはブランドン・イングラムだった。第3クォーターまでに19得点とコンスタントにシュートを決めていた彼は、勝負の第4クォーターにギアを上げて14得点を荒稼ぎ。ザック・ラビーンとニコラ・ブーチェビッチ、新加入のジェイレン・スミスのトリオによるブルズの反撃を振り切った。

ザイオン不在のフロントコートではハーバート・ジョーンズとダニエル・タイスが先発し、ベンチから1巡目21位のルーキー、イブ・ミッシが23分の出場で12得点7リバウンドとNBAデビュー戦で貴重な働きを見せている。

だが、やはり勝利の立役者はイングラムだ。昨シーズン最後のプレーイン、初戦のレイカーズ戦でザイオンが40得点を挙げたもののチームは敗れ、ここでザイオンはハムストリングを痛めてシーズン終了に。続くキングス戦でイングラムは膝の痛みを押してコートに立ち、24得点を挙げてチームをプレーオフへと導いたのだが、プレーオフではサンダーに良いところなくスウィープ負け。チームを救ったはずのイングラムは、最終的には「イングラムでは勝てない」、「やっぱりザイオンがいなければ」と言われて評価を落とすこととなった。

それでもイングラムは黙々とプレーし、今回もチームを引っ張った。「コンディションは万全とは言えないが、開幕戦でテンションは高かった。オフェンスには良いリズムがあって、シュートタッチも良かったからアグレッシブに攻めようと考えていた。コンディションは試合を重ねる中で良くなっていくだろうし、プレーの効率ももっと良くなると思う」

フィールドゴール23本中13本成功と効率はかなり良かった。一緒にプレーするのが4年目となるCJ・マッカラムに、デビュー戦で10アシストを記録したデジャンテ・マレーが加わり、イングラムはプレーメークへの関与を減らして得点を奪うことに集中できる。「彼らは常に僕を視野に入れている。オープンスリー、リムまで攻めるチャンスがどんどん巡って来たから、リズムに乗りやすかった」とイングラムは言う。

イングラムは契約最終年を迎えているが、今オフに契約延長は決まらず、フロントとの関係は決して良好ではないはずだ。しかし、そういった感情をコートに持ち込まないのが彼の主義だ。「大事なのは素晴らしいスタートを切ったことだ。僕たちはチームとしてもっと成長したいし、僕個人としてももっと上のレベルを目指したい。そして何より、もっともっと勝ちたいんだ。そのために何が大事なのかを見極めつつ、ただただ前に進むつもりでいる」

そしてファンとは移り気なもので、プレーオフであっさり敗退した時には非難の声を上げても、シーズン開幕となれば在籍6年目となったイングラムを歓声でコートに迎え入れている。「正直に言えば、これから試合が始まるというタイミングだと集中していてファンの歓声はあまり耳に入ってこないんだ」とイングラムは語る。

「でも、ファンへの感謝の気持ちは間違いなく存在している。ファンから愛情とエネルギーをもらってプレーするのは本当に素晴らしいことなんだ。感謝しかないよ」

しかし、ペリカンズは開幕早々から厳しい状況に追い込まれている。体調不良のザイオンは欠場は何試合か続く可能性があり、さらにこの試合の終盤にはデジャンテ・マレーがファウルを受けて倒れた際に左手を骨折。CJ・マッカラムと息の合ったプレーを見せて10アシストを記録した期待の新戦力が、早くも戦線離脱となった。またもイングラムがしばらくチームを支えなければならない状況だ。