堅守で川崎に快勝「相手を54点に抑えられたのが、自分たちのスタンダードです」

10月23日、サンロッカーズ渋谷はアウェーで川崎ブレイブサンダースと対戦。持ち味である堅実なディフェンスを40分間遂行することで川崎のオフェンスを停滞させ、69-54で快勝した。

第1クォーターでSR渋谷が7つ、川崎が5つのターンオーバーを喫するなど、序盤から両チームともミスが目立ちSR渋谷の14-12とロースコアの立ち上がりに。第2クォーターに入ると、SR渋谷はリード・トラビスが内外確率良くシュートを決め、このクォーターだけで9得点と勢いを与える。チーム全体でボールがよく動くセットオフェンスからオープンショットを決め切り、強度の高いディフェンスを継続してタフショットを打たせることで、リードを2桁に広げて前半を終えた。後半に入ってもSR渋谷は試合の主導権を渡さない。後半のターンオーバーはわずか2と手堅いゲームメークを披露し、川崎の得意とするトランジションオフェンスを封じる。そして、インテンシティの高いディフェンスを継続したことで付け入る隙を与えず、危なげない試合運びで勝利を収めた。

会心の勝利に、SR渋谷のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチも選手たちを称える。「まずはモチベーション、集中力ともに相手を上回ってゲーム運びができたと思います。39分間と、ほぼ1試合を通してリードできました。私たちは狙いどころを絞ったオフェンスができて、ディフェンスでも止めないといけないところを止め切れました」

各選手が役割を遂行したSR渋谷においても、要所での活躍が光ったのが田中大貴だった。ベンドラメ礼生が序盤に負傷退場しわずか5分のプレータイムに留まった中、フィールドゴール7本中5本成功の10得点5アシストと攻撃の起点になるなど、攻守でチームを支えた。

SR渋谷は前の試合で広島ドラゴンフライズに69-74で敗戦。特に第1クォーターで27失点と出だしのつまずきが大きな敗因となっていた。それを踏まえて田中は、このように試合を総括する。「広島との2試合目、相手がどうこうではなく、自分たちのやらないといけないレベルを落としてしまったところがありました。それを今日の試合で戻すことを心がけて、みんな集中して臨みました。試合を通して、ウチがペースを握って進めることができました。相手を54点に抑えられたのが、自分たちのスタンダードです」

「しっかりとしたコンディションを保つことができれば試合の中でインパクトを与えられる」

そして田中個人としても、「広島との2試合目はチームだけでなく自分も積極性を失って良いパフォーマンスができなかったです」と大きな反省があり、それを生かしたアグレッシブなプレーが光る一戦となった。

この試合に限らず、加入2年目となる今シーズンの田中は、昨シーズンと比べるとプレーの質が上がっている印象を受ける。その理由として「(前所属のアルバルク東京と)同じヘッドコーチの下でやっているのでチームが変わったとかは関係ないです」と語る一方、コンディションについて大きな違いがあると続ける。

「去年のシーズンに関しては、その前にほぼ1年間休んでいました。ある程度、長い時間プレーはできましたが、正直に言うと自分のコンディションに自信を持てずにやっていた難しいシーズンでした。それが夏の期間、しっかりワークアウトに取り組んで今はそういった不安もなく、もう一歩先のところを見てやれています。これからもっと得点を取らないといけないですし、もっとクリエイトして味方のチャンスを増やさないといけない。コンディショニングの次の部分に目を向けられているのは間違いなく良いことです。ただ、シーズンは長いので、これをいかに保ってやれるかは自分にとってチャレンジだと思います」

このように今の田中は、故障の不安から払拭され、よりプレーに集中できる状況になっている。そして満足することはなくても、現状に確かな手応えを得ている。「自分の中でしっかりとしたコンディションを保つことができれば試合の中でインパクトを与えられると思っています。そこの不安がないだけ、良い感じですし、状態は悪くないです」

この勝利でSR渋谷は4勝3敗と再び貯金を1とした。開幕直前の故障者もあって、2勝9敗と大きく出遅れたが昨年の失敗を回避することに成功している。そこにはフルメンバーで開幕を迎え、チームの成熟度も大きく違うなどいろいろな要素はあるが、田中のコンディションが良くなっていることが大きく寄与しているのは間違いない。