「序盤でこういう試合を経験できたのは今後に繋がっていくと思います」
横浜ビー・コルセアーズは10月18日と19日にアウェーで川崎ブレイブサンダースとの『神奈川ダービー』を実施。第1戦には87-80で競り勝ったが、第2戦はオーバータイムの末に81-88で敗れた。
第2戦の立ち上がり、横浜BCは大庭岳輝が2本の3ポイントシュート成功を含む開始2分半で8得点と大暴れすると、14-3のランに成功して先制パンチを食らわせる。しかし、ここから川崎にトランジションを許すことで追い上げられ、第2クォーターにはこのクォーターだけで7ターンオーバーと自滅。相手に流れを引き渡し、11-25のビッグクォーターを作られ11点のビハインドで前半を終える。
後半に入ると、横浜BCはキーファー・ラベナを起点としてボールムーブが活発になり、効果的に得点を重ねることで反撃を開始。第3クォーター残り3分で同点に追いつくと、ここからは両チーム合計で68本のフリースロー試投数が示すように、ファウルが多く重たい展開に。そして、互いにフリースロー成功率が低く決め手を欠き、試合はオーバータイムへと突入したが、横浜BCはオーバータイムに入っても要所でのファウルが続いたことが響いて敗れた。
あと一歩で同一カード連勝を逃した横浜BCだが、森井健太、松崎裕樹を故障で欠く8人ローテーションの中、前半の劣勢からカムバックできたことはポシティブな材料だった。特にこの2試合で目立ったのが大庭で、松崎に代わって先発出場を果たすと初戦は8得点3アシスト、第2戦は冒頭で触れた立ち上がりの活躍によって10得点2リバウンドと結果を残した。
第2戦の終了後、大庭はこのように課題と収穫を振り返る。「昨日と同じく第2クォーターで川崎さんに走られてしまったのは自分たちのミスで、同じ課題が出てしまいました。そこは昨日からもっとステップアップしないといけなかったです。ただ、後半に追いついて延長まで持っていけたことはプラスになりますし、序盤でこういう試合を経験できたのは今後に繋がっていくと思います」
「少しでもチームにプラスになることをコートで表現できればと思って試合に入りました」
大庭は故障した松崎に代わって先発起用されたが、自身も昨年10月に右膝前十字靱帯損傷の重症を負って長期離脱を強いられただけに、次のような思いを持って試合に臨んだという。「松崎選手がケガをしてしまいました。彼自身、今シーズンにかける思いは強いと思います。その中でケガの苦しさは自分が一番分かります。代わりにスタートで出させてもらえることで、少しでもチームにプラスになることをコートで表現できればと思って試合に入りました」
その中で、自身のパフォーマンスをこのように総括する。「この2試合、自分の仕事というか、チームに勢いを与えることはできたと思っています。そこはしっかり続けていきたいです。ただ、(今日は)前半に10点取った後が続かなかったので、そこは次の自分への課題だと思います」
今回の試合に限ったことではないが、今シーズンの大庭のプレーには大きな変化がある。これまでも彼はピュアシューターとしてキャッチ&シュートが多かった。しかし、今は相手ディフェンスの隙を逃さず積極的にドライブを仕掛け、ドリブルでかわしてのプルアップシュートなど、明らかにバリエーションが増えている。
この変化は、大庭がさらなる進化のために取り組んでいる成果が徐々に出ていることを示す。「今年はラッシ(トゥオビ)ヘッドコーチのスタイルで、ボールを持っていてもいなくても、ペイントにタッチすることが一つの大きな目標です。自分もそこにチャレンジしています。相手がシューターの自分に3ポイントを打たせないディフェンスをしてきて、そのまま打つのも得意ですが、次のレベルに行くには1つ、2つドリブルをついて(守備をかわして)最後にパスをするのか、シュートを打ちに行くのかより良い状況判断をすることが必要です。このオフに少し取り組んでいたので、それが良い形で出ているのではないかと思います」
ドライブやプルアップを増やすことで「3ポイントだけよりも怖さが出ると思います」
大庭だけでなく、横浜BCの日本人選手たちは自ら積極的に仕掛けている姿が目立つ。トゥオビヘッドコーチが「昨シーズンの選手たちのパフォーマンスはビデオ等で見ましたが、今シーズンに関して全員がゼロからのスタートといった形です」と言うように、これまでの実績やプレーを良い意味で考慮しない方針が、選手たちの成長を促しているのだろう。
そして指揮官は、選手たちのチャレンジ精神を高く評価する。「選手みんなにはどういうプレーができるのか、どういうプレーをしたいのかを示してほしいと話しています。自信と不安の両方があると思いますが、同時に今はしっかり集中して成長してくれています。昨シーズン、最もアグレッシブだった選手が今、NBAの契約を勝ち取ろうと戦っている中、残った選手たちは昨年の苦しい経験を経てすごく高いモチベーションを持っています。各選手がそれぞれ必要としている役割をもっと見い出していく必要はあります。ただ、自分の力を証明したいと各選手たちが強く思っていることはすごく伝わりますし、それはとても誇らしいです」
言うまでもなく大庭も、高いモチベーションで取り組んでいる1人だ。そして、昨年の苦い経験を踏まえ、次のように目標を語った。「30分とか長くプレーしないので10分、15分と自分が出ている時、コートにいた印象をしっかり植え付けられるようにいろいろと考えながらやっているところです。3ポイントだけよりも怖さが出ると思いますし、もっと状況判断を良くして、しっかりこれを今シーズン続けていきたいです。ケガなく1年間、コートに立つことができれば自分の仕事をやり切れると思っています。ヘッドコーチからいつでも声をかけられるように、しっかり準備をしていきたいです」
横浜BCの新たなオフェンスの武器として、大庭はこれからさらに重要性を高めていく。その期待が大きく膨らむ今回の神奈川ダービーでの活躍ぶりだった。