「今日こそは結果を出さないといけないと思っていた」
4月5日、川崎ブレイブサンダースは富山グラウジーズとの熱戦を86-79で制した。ここ一番で川崎を牽引したのが辻直人だ。第3クォーター終了時点ではフィールドゴール6本中成功わずか1本の3得点と沈黙していたが、第4クォーターだけで12得点をマークした。
この第4クォーターは、まさに『辻劇場』と呼ぶに相応しい活躍だった。まずは残り5分半に川崎が抜け出す3ポイントシュートを沈める。そこから富山の粘りにあって4点差を詰められた後、残り3分からフリースロー、3ポイントシュートによる連続5得点。残り36秒に7点リードとするレイアップと、辻が要所で得点を重ねることで川崎は主導権を握り続けることができた。
「ディフェンスのギアを上げて流れが来て、そこから着実に点数を取れたのが良かったです」
このように試合を総括する辻は、自身のパフォーマンスについて「個人として前半は全然ダメでしたけど、後半は良いところ、おいしいところで決められたのは良かった」と語る。
この試合の前、辻は6試合連続で10得点以下、3ポイントシュートの確率も悪く、「この数試合は、もぬけの殻という感じになっていて、このままではダメだと頭では分かっていました」と本人も危機感を感じていた。だからこそ「チームはここ数試合、僕がそういう状況でも勝ってくれていました。今日こそは結果を出さないといけないと思っていて、勝負どころでシュートが入ってくれたのはうれしかったです」と安堵を感じる面もあった。
「決してこの連勝に満足するべきではない」
シュートが不調でもアシストなどでチームに貢献することはできる。それでも、自身の代名詞である3ポイントシュートを決めることへの強いプライドを持っている。
「強引にシュートを打つのではなく、状況に応じて決めるべき選手が決めるべき。それでチームが勢いに乗ります。そういうところで、自分が場面、場面で3ポイントシュートを決めないといけない。他の選手が決めるのと自分が決める3ポイントシュートでは、相手にとって嫌なのは自分が決めることだと思います」
これで川崎は、代表での中断明けとなる3月以降の過密日程において13勝1敗と見事な成績を残している。しかし、それは優勝候補との対戦がないものであり、「先週の千葉と栃木の試合を見ると、本当にディフェンスがすごく激しいです。決してこの連勝に満足するべきではない。ここでさらに気を引き締めていかないとチャンピオンシップの短期決戦では痛い目に遭います」と、辻も連勝への手応えより、危機感を強調する。
辻の3ポイントシュートこそが川崎の起爆剤であり、だからこそ対戦相手は潰しにくる。プレーオフのような大一番となれば、その傾向は一段と強くなる。しかし、だからこそ、まずは新潟との地区首位決戦に向けて辻がどれだけシュートタッチを取り戻せるかは、川崎にとっては大きな意味を持ってくる。