開幕節では2試合続けて攻守に渡るハッスルプレーで勢いを与える
今オフ、トヨタ自動車アンテロープスは複数の選手が移籍。その結果、トヨタ自動車で主力としての経験があるのは山本麻衣、安間志織、平下愛佳の3名のみになった。岡本美優、田中平和、三浦舞華など、昨年12月に特別指定で加入した複数の大卒ルーキーたちが早速、主力として活躍している中、高卒2年目の横山智那美も大きな飛躍の時を迎えようとしている。
桜花学園高校時代、横山は世代を代表するスコアリングガードとして活躍。世代別代表でも中心を担うなど将来を嘱望されていた。しかし、昨シーズンはトヨタ自動車の厚い選手層の壁に苦しみWリーグで全く存在感を示せなかった
それが、今シーズンは世代交代を果たしたチームで、開幕ローテーション入りを勝ち取った。ENEOSサンフラワーズとの開幕節では初戦で19分37秒出場(2得点5リバウンド2アシスト1スティール)、2試合目も20分5秒出場(5得点4スティール1リバウンド1アシスト1ブロック)としっかりと爪痕を残した。
結果は2試合とも惜敗のため、当然のように横山に満足感はないだろう。それでも、出番は限定的で上位チーム相手にプレータイムがほとんどなかった昨シーズンを経て、開幕からコートに立ち、チームに貢献できることを示せたのは大きな一歩だ。
開幕戦の後、横山はこのように今シーズンへの決意を語る。「去年は本当に悔しかったです。今回、こうして出させてもらえるからには結果を出さないと、去年の思いも無駄になってしまうんじゃないか。そういう覚悟を持って試合に臨んだので、最初にチームを勢いづけることができたのは自信になりました」
「今シーズン、自分として様々な刺激を受けるシーズンになると思います」
横山は自身の役割をゲームチェンジャーと語り、次のようなプレーでチームに勢いを与え、悪い流れを変えられる存在になりたいと考えている。「得点を取ることだけがゲームチェンジャーではなく、ディフェンスでアグレッシブに行ったり、リバウンドに飛び込む。フィフティフィフティのルーズボールをマイボールにするなど、出たからには何か泥臭いところでもみんなの勢いになることを意識しています」
いくら高校時代に活躍していたとしても、Wリーグですぐに結果を残せる選手はほとんどいない。1年目にベンチを温め続ける経験は、多くの選手たちが通ってきた道だ。だが、エリート街道を通ってきた横山にとって、コートに十分な時間立てないことは大きな試練だった。それでも、自分のやるべきハードワークを続け、しっかりとした土台を作った。
「気持ちが折れてなかったといえば嘘だと思いますし、気持ちが上がらなかったことは確かにありました。でも人は気持ちのアップダウンはあるもので、ダウンした時にできるだけ下がらないようにどうするかを意識していました」
横山は「今シーズン、自分として様々な刺激を受けるシーズンになると思います」と意気込みを語る。チームの優勝に貢献することが第一として、個人として意識することをこう教えてくれた。「勝つことも負けることも、自分の調子が良い時も悪い時もあると思いますが、常に最終目標で何になりたいかを見失わないようにチームとしてしっかり成長できるようにしていきたいです」
そして、この最終目標とは具体的に「試合で活躍したり、良い流れをもたらすことで、私を見に来たいなと思って試合会場に来てくれる人が増えていくことです」と教えてくれた。
先日、トヨタ自動車は大黒柱である山本が開幕節で左足関節捻挫を負い全治4週間から5週間の離脱となったことを発表。この危機を乗り越えるには、横山のさらなるステップアップが必要となる。そして彼女は、心身ともにこの大役を担う準備ができている。